異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第3章 王都への道⑮『切り札』

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 翌朝、空はまだ薄暗い中、シモンは大喜びで、天に向かって腕を振り上げた。
 カイトの力で増幅された隊長の結界を破ったのだ。
 
 カイトが静かに拍手の真似をしてくれた。
 里はまだ眠りから覚めていない。昨夜の祭りの喧騒が嘘のように静かだった。
 
 三人は馬をひき、最後の街へ向けて出発した。
 心地よい朝の空気を吸いながら、隊長の魔力が完全に戻ったことを確認してシモンが言った。

「カイトから魔力供給できるってことは、もう怖いものなしですね」

 魔法を使う者にとって怖いのは、戦っている最中に魔力を使い切ってしまうことだ。底知れない魔力を持っていると思っていた隊長でも魔力切れを起こすことがある。それがわかったのは昨日だった。
 だが、自分たちの魔力は底をついても、指揮官の魔力が切れなければ、辺境警備隊は無敵に近い。
 
 魔獣との戦いは、剣だけで立ち向かうには不利である。また魔法だけでも同様だった。剣と魔法があるからこそ魔獣退治も危険が減る。
 カイトの存在はこれから部隊をさらに強くしてくれる。そんな期待をシモンは持ったのだが。

「残念だが、そう簡単な話でもない」

 意外にも隊長は否定した。

「確かに魔力の付与は願ってもないことだ。だがカイトの力には難点もある」
「難点? どういうことですか」
「制御が難しい」

 シモンは眉根を寄せた。

「魔法を顕現するには、魔力でもって霊脈に干渉する。それは自分の意志で行うものだ。だがカイトの力の魔力は、使い手の意志を超えて霊脈に干渉しようとする」
「えっ」

 シモンは驚きの声を上げた。それは魔力の暴走を意味するからだ。

「好き勝手に干渉しようとするから、それを抑えながら、こちらの顕現させたい魔法を組んでいくのは、骨が折れる」
「そう何度も使えるものでもないってことですか」
「神経を消耗するからな。立て続けは無理だろう」

 カイトから魔力を受け取った後、死んだように眠っていたのは、余程疲れたということか。
 シモンは空を仰いだ。

「カイトの力は切り札ってことかあ」

 すると、

「奥の手があるのとないのとではずいぶん違う。カイトの力はありがたい」

 隊長がカイトを気遣うように言った。
 そこでハッと気がついた。

「もしかして、隊長の魔力制御が精密なのって、そういうことなんですか」

 跳躍者の能力を聞いたとき、隊長は以前にも魔力を付与してもらったことがあると言っていた。その力を得るのであれば、常に自分の思い通りに魔力を制御できなければならない。

「こう見えて、努力の賜物だ」

 隊長は淡々と言った。

 魔力量と四属性すべての霊脈が視えるのは生来のものであり、天から与えられたものだ。だが制御は違う。そんな当たり前のことにも思い至らず、シモンは自分が恥ずかしくなった。
 敬愛する上官は、努力などしなくても何でもできてしまう人なんだと思っていた。
 自分の知らないところで、この人はどれだけの努力をしてきたのだろうか。しかもその努力をおくびにも出さない。
 
 シモンは唇を噛んだ。

「俺、まだまだですね。もっと頑張ります」

 隊長ほどの素質はなくても、努力だけはしっかりしたい。そして助けてもらった恩に報いたいと強く思う。

「俺も風以外の魔法が使えたら、もっと役に立てるんでしょうけど」

 ぽそっとつぶやくと、隊長は言った。

「シモンは水の霊脈も視えるんだったな。なら、水の魔法も使えるぞ」
「え⁉」

 爆弾発言だった。
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