異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第3章 王都への道⑯『魔法講義』

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 シモンはカイトと並べた馬を一歩進めた。

「霊脈が視えるんだ。あたりまえだろう」

 さらっと言っているが、シモンはかつて一度も水の魔法を使えたことはない。
 水の霊脈に干渉しようとしても、霊脈が反応しないのだ。それに比べ、風の霊脈はシモンの魔力に応えてくれる。
 自分が自然に干渉できる霊脈、それが属性魔法と呼ばれていた。

 複数の属性に干渉できるのは生来の素質ではないのか。
 どういうことだ。
 シモンは首を捻った。

「霊脈は属性ごとに干渉方法が違う。風の霊脈と同じように干渉しても、水の霊脈は反応しない。水には水の、火には火の。それぞれ干渉の仕方が違う」

 初めて聞いた事実に、シモンの口が開いた。
 警備隊の日常の中で、魔法の鍛錬をする時間があるが、誰ひとり、そんな話をしたことはない。皆、自分の属性魔法に磨きをかけている。
 副官のダグラスも火と土の霊脈が視えるといったが、属性は火で、土の魔法の話は出たことはない。

 おそらく、隊の中でその事実を知っている者はいないのではないだろうか。
 シモンはごくりと唾を飲んだ。

「水の霊脈への干渉って、どうやるんですか」
「こればかりは説明できない。感覚だからな」

 シモンはがっかりしたが、水の魔法が使えるとわかっただけでも大きなことだ。
 干渉の仕方は自分で探し当てるしかない。

 それにしても、と思う。

「隊長。なんで今まで教えてくれなかったんですか」

 不満顔のシモンに隊長は呆れた声で言った。

「おまえ、自分の属性魔法ですら未熟なのに、別の魔法が満足に使えると思っているのか」

 痛烈な一言に、シモンは崩れそうになった。
 隊長がその事実を黙っているのは、半端な力はいらないからだと言った。
 確かに多くの魔法が使えることは有利でもある。だが、剣も重視する辺境警備隊において、ひとつの属性を極めている方がいざとなったときに大きな力となる。器用貧乏では逆に足手まといになりかねないという。

「そんな……確かに、そうかもしれませんけど。でも、じゃあどうすれば、一人前になれるんですか」

 シモンは辺境警備隊の中では、群を抜いて魔法が使えると思っている。
 魔法の発動も他の者に比べれば短時間であり、まだ練習中ではあるが、結界にも挑戦している。隊長を除けば、隊の中では一、二を争う魔力の高さだと自負していた。
 
 それなのに、とみるみる落ち込んでいくシモンだったが、隊長は指標を示してくれた。

「おまえ、霊脈の揺らぎが視えていないだろう」

 霊脈の揺らぎ? シモンは首を傾げた。

「魔法を使うと霊脈が揺らぐんだ。魔力で干渉しているわけだから、霊脈の流れに変化が起きる、とでも言えばいいか。逆に霊脈が揺らげば誰かが魔法を使ったということだ」
「そんなことわかるんですか⁉」
「わかる。近くだけだがな」

 シモンはそれを聞いて、腑に落ちたことがあった。
 勝ち抜き戦をやったとき、隊長は自分が魔法を使うことを予見していたかのように、防御してきた。気づかれないように平静を装って編んだ魔法だった。
 しかし霊脈の揺らぎで魔法の発動がわかるのなら、いくら気取られないようにしていても、意味がない。隊長には視えていたのだ。

 シモンは下唇を舐めた。

「その揺らぎって、俺でも視えるようになりますか」
「鍛錬すればな。水の魔法に手を出すならそれからだ」

 シモンは目を輝かせ、頑張ります! と、はつらつに言った。

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