異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

文字の大きさ
59 / 117

第4章 いにしえの因果⑯『ざわめき』

しおりを挟む
 海人はイリアスが語ってくれた過去と彼らの雰囲気に、唇を噛んだ。
 
 二人には特別な絆がある。
 
 胸がちりっとして、海人はグラスに残った炭酸水を飲み干した。ひどく苦く感じた。

 燭台の炎がゆらっとする。
 昔話をしていたら夜も更けてしまったようだ。佐井賀は膝を打って、お開きの合図をした。

「今日はもうこのくらいにしておこう」

 立ち上がって部屋の入口に向かう。

「王都には何日いる予定?」

 海人とイリアスのために扉を開けてくれる。

「四日だが」
「じゃあ、また明日、僕のところに来てくれる? 面白いものを見つけたんだ」

 面白いもの、というわりに目が光っていた。おやすみの挨拶をして扉が閉まる。
 海人とイリアスは自分たちの客室に向かって歩き始めた。
 
 廊下には静寂が流れていた。
 
 海人は何を話していいのかわからなかった。
 
 イリアスの過去を知れたことは良かった。佐井賀とイリアスの間にわだかまりがあったのなら、それも解けたようで良かったと思う。
 
 だがそれと同時に二人の間には入れない絆があることを見せつけられた。

(イリアスが笑ってた……)

 自分にはまだ一度しか笑ってくれたことがないのに、あの人にはたくさん笑いかけるのだろうか。
 
 いつも無表情なのに、不貞腐れたり、イラついてみたり、感情が豊かだった。
 
 そのことを思うと、海人の胸がズキっとした。
 
 足元を見ながら歩いていると、

「ディーテに会えてよかったか」

 穏やかな声が降ってきた。海人はハッと顔を上げた。

「あ、うん、もちろん! ほんとに、おれと同じ日本人だった。知らない人でも同じ国の人っていうだけで、すごくうれしいものだね!」

 痛む胸を悟られないように、努めて明るく振舞う。しかし、言った言葉に嘘はなかった。

「滞在中、いろいろと話すといい」
「うん、」

 そうだね、と言いかけて、海人はふと正面を見据えた。
 胸がざわざわする。

(この感じ……)

 廊下には誰もいなかった。だが、曲がった角の先から人影が現れる。

(やっぱりだ)

 海人は自然と歩を緩め、イリアスの後ろに隠れるように下がった。前から来た人物にイリアスが声をかけた。

「兄上」

 ユリウスが軽く手を上げ、立ち止まる。

「ずいぶん遅くまで話したみたいだな」
「はい。久しぶりでしたので」

 海人は目を伏せ、彼の顔を見ないようにしてやり過ごそうとした。

 なぜだかわからないが、この人が近くにいると落ち着かないのだ。それを知ってか知らずか、ユリウスはいきなり海人の顎を掴んだ。

「!」

 否応無しに目が合う。
 イリアスの瞳は灰色だが、この人の瞳は茶色だった。珍しい色でもないのになぜか惹きこまれそうになる。

 目をそらせずにいると、ユリウスが口端を上げた。

「なるほどな。ディーテが言っていたのは、こういうことか」

 海人は眉を潜めた。

「おまえからは、ディーテよりも力がもらえそうだな」

 にやりと笑う。
 カッと頬が紅潮し、海人はユリウスの手を乱暴に払った。

「兄上! カイトをからかわないでください!」

 イリアスが声を荒げると、ユリウスは笑みを浮かべたまま言った。

「からかってなどおらんよ。思ったことを言ったまでだ」

 ユリウスは片手を挙げて、歩き出した。その先は佐井賀の部屋だ。
 
 海人は小さく肩で息をしながら、昂った心臓を落ち着けようとした。

 無意識に、唇を触っていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

処理中です...