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第4章 いにしえの因果⑰『王宮書庫』
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王宮滞在二日目。
国王に拝謁した海人は、生まれて初めて片膝をついて頭を下げた。斜め前にいるイリアスの真似をするように言われていた。
玉座に座った王に拝礼する。
イリアスはリンデ辺境警備隊の隊服を着ており、深紅のマントを纏って様になっていた。自然な美しい所作だった。彼の半歩後ろにいた海人は、等身大のお手本通りにやってみたが、自分が不格好なような気がしてならなかった。
国王からは「よく来てくれた」という型式の挨拶だけで終わった。もっと何か話しかけられるかと思っていたので、肩透かしをくらった気分だ。
国王との謁見が終わったあとは、昨夜言われた通り、佐井賀の元を訪れた。
部屋で話をするのかと思いきや、佐井賀は王宮にある図書館に場所を移したいと言った。
佐井賀に連れられて行った王宮図書館は、手の届かないところまで本棚がそびえ立っていた。
蔵書数は海人の地元の図書館を遥かに超えており、圧巻の光景である。
佐井賀は慣れた足取りで、図書館のさらに奥の一室に向かった。貴重な文献が所蔵された王宮書庫という部屋に案内された。
書庫は鍵が掛かっており、佐井賀は司書に声をかけ、鍵を受け取っていた。重々しい扉を開けると、四方をぐるりと壁一面に本が並んであり、書庫の中央には机と椅子が一脚ずつあった。
佐井賀は二人分の丸い椅子を持ってきて、「座って」と言った。
背もたれはついていない。海人が腰を下ろしていると、佐井賀は本棚から一冊の古びた本を抜き出し、机に置いた。
それを見た海人は、
「佐井賀さんはこの国の文字が読めるんですか?」
と訊いた。佐井賀は「十五年もいればね」と笑って答えた。
海人は馬鹿な質問をしたな、と恥ずかしくなった。
佐井賀は椅子に腰を下ろしながら、
「まあ、知りたいことがあったから、必死で覚えたんだよ」
と言った。
「何が知りたかったんですか?」
海人の問いに、佐井賀は目を光らせた。
「なんでこの世界に僕が来たのかということ。僕でなければならなかった理由だよ」
海人は目を見張った。佐井賀は真剣な眼差しを向けてきた。
「偶然だと思う? 考えてみて。
僕は熊野古道を歩いていたら、突然この世界に飛ばされたんだ。知らない世界なのに、なぜか言葉だけは通じる。僕は特別な生まれでも、特殊な能力があったわけでもない。
なのに魔力を付与できると言われた。信じられなかったけど、本当だった。しかも、その相手はユスとイルだけだ」
佐井賀は十年以上、この王宮の守護をユリウスと共に担ってきたという。
この国にとってはありがたい話だ。だからこそ疑問が浮ぶ。
そもそも、異世界に飛ばされて保護された先に、魔力を与えられる相手が偶然いたなんて、そんな幸運が起こり得るのだろうか。
考えれば考えるほど、偶然というには妙な話に思える、と佐井賀は黒い瞳を光らせて言った。
国王に拝謁した海人は、生まれて初めて片膝をついて頭を下げた。斜め前にいるイリアスの真似をするように言われていた。
玉座に座った王に拝礼する。
イリアスはリンデ辺境警備隊の隊服を着ており、深紅のマントを纏って様になっていた。自然な美しい所作だった。彼の半歩後ろにいた海人は、等身大のお手本通りにやってみたが、自分が不格好なような気がしてならなかった。
国王からは「よく来てくれた」という型式の挨拶だけで終わった。もっと何か話しかけられるかと思っていたので、肩透かしをくらった気分だ。
国王との謁見が終わったあとは、昨夜言われた通り、佐井賀の元を訪れた。
部屋で話をするのかと思いきや、佐井賀は王宮にある図書館に場所を移したいと言った。
佐井賀に連れられて行った王宮図書館は、手の届かないところまで本棚がそびえ立っていた。
蔵書数は海人の地元の図書館を遥かに超えており、圧巻の光景である。
佐井賀は慣れた足取りで、図書館のさらに奥の一室に向かった。貴重な文献が所蔵された王宮書庫という部屋に案内された。
書庫は鍵が掛かっており、佐井賀は司書に声をかけ、鍵を受け取っていた。重々しい扉を開けると、四方をぐるりと壁一面に本が並んであり、書庫の中央には机と椅子が一脚ずつあった。
佐井賀は二人分の丸い椅子を持ってきて、「座って」と言った。
背もたれはついていない。海人が腰を下ろしていると、佐井賀は本棚から一冊の古びた本を抜き出し、机に置いた。
それを見た海人は、
「佐井賀さんはこの国の文字が読めるんですか?」
と訊いた。佐井賀は「十五年もいればね」と笑って答えた。
海人は馬鹿な質問をしたな、と恥ずかしくなった。
佐井賀は椅子に腰を下ろしながら、
「まあ、知りたいことがあったから、必死で覚えたんだよ」
と言った。
「何が知りたかったんですか?」
海人の問いに、佐井賀は目を光らせた。
「なんでこの世界に僕が来たのかということ。僕でなければならなかった理由だよ」
海人は目を見張った。佐井賀は真剣な眼差しを向けてきた。
「偶然だと思う? 考えてみて。
僕は熊野古道を歩いていたら、突然この世界に飛ばされたんだ。知らない世界なのに、なぜか言葉だけは通じる。僕は特別な生まれでも、特殊な能力があったわけでもない。
なのに魔力を付与できると言われた。信じられなかったけど、本当だった。しかも、その相手はユスとイルだけだ」
佐井賀は十年以上、この王宮の守護をユリウスと共に担ってきたという。
この国にとってはありがたい話だ。だからこそ疑問が浮ぶ。
そもそも、異世界に飛ばされて保護された先に、魔力を与えられる相手が偶然いたなんて、そんな幸運が起こり得るのだろうか。
考えれば考えるほど、偶然というには妙な話に思える、と佐井賀は黒い瞳を光らせて言った。
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