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第4章 いにしえの因果⑲『神話の考察』
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*竜人と巫女*
人に化け 人を脅かす 古竜あり
人々の嘆き 天にまします神に届けり
神に遣わされし巫女 天から降る
巫女 清き力をもって
竜の力を奪いしとき 竜は人となりけり
竜の力 巫女とともに 天に還らん
短い一節だった。
「どう思う?」
佐井賀に問われて、海人は戸惑った。
「どう、と言われても……」
ただのおとぎ話のようだった。
「巫女は僕らの先祖。竜人はイルたちの先祖。僕らは竜人と巫女の末裔だとしたら?」
突拍子もない話に、海人は目をぱちくりさせた。『トンデモ話』もいいところだ。
海人は宙を見て、佐井賀に目をやった。
「でも、おれと佐井賀さんって親戚とかじゃないですよね。うちは一般家庭です」
「元を辿れば同じ先祖に行きつくかもしれない。家が分かれてわからなくなってるだけで、同じ一族かもしれない」
家系図で何百年もたどれるなんて普通はないからね、と佐井賀は付け足した。
海人は少し考え、それでもやはり眉唾物に思えた。
「そしたら、イリアスは竜の末裔ってことになりますけど、それこそ信じられません」
真っ当な意見を言ったつもりだ。当人であるイリアスは否定も肯定もしない。黙って聞いている。
しかし佐井賀はこの説に自信があるようで、それだよ、と言った。
「海人くん、イルに力をあげたとき、何か気づかなかった?」
問われて、海人はそのときのことを思い返した。
身体の奥からなにか不思議な力が湧いたこと。
そして、イリアスの灰色の瞳が琥珀色に変わり、瞳孔が細長くなっていたことを思い出した。
「目……! 目が変わってました!」
佐井賀がうなずいた。
「うん、そう。ユスもね、変わるんだよ」
竜の末裔の証明になりそうなことといえばそれしかない。人間の瞳孔は円形で、細くなって見えるようなことはない。
イリアスが黙ったままだったので、海人は自分ではわからないのだろうと思って、口にした。
「力をあげたとき、イリアスの目の色が金色っぽくなって、猫みたいになってたんだ」
「ねこ……」
イリアスが微妙な反応を示したので、佐井賀がくすりと笑う。
「竜の瞳だよ。猫っていうより、トカゲ」
すると、海人は目を見開いた。
「え⁉ トカゲって爬虫類じゃん! おれ、イリアスが爬虫類なんて嫌なんだけど!」
海人が力いっぱい嫌がると、佐井賀は笑った。
爬虫類呼ばわりされたイリアスは額を抑えている。佐井賀は肩を揺らしながら言った。
「物のたとえだよ。爬虫類なわけないじゃない。神話でも竜は人になったってあるでしょ。ちゃんと人間だよ。ね?」
イリアスに同意を求めるが、腕を組んで目をつぶってしまった。
不貞腐れたようだったので、爬虫類呼ばわりした海人はちょっと慌てた。
「でも、すごく綺麗だったよ。あんな綺麗な目を見たの、初めてだし」
海人がじっとイリアスを見つめると、彼も目を開けて見つめ返してきた。
この端整な顔に現れた『竜の瞳』は怖ろしいほど美しく、あの瞳にもう一度見つめられたいと思った。
海人の胸がトクトク鳴り始めた。
人に化け 人を脅かす 古竜あり
人々の嘆き 天にまします神に届けり
神に遣わされし巫女 天から降る
巫女 清き力をもって
竜の力を奪いしとき 竜は人となりけり
竜の力 巫女とともに 天に還らん
短い一節だった。
「どう思う?」
佐井賀に問われて、海人は戸惑った。
「どう、と言われても……」
ただのおとぎ話のようだった。
「巫女は僕らの先祖。竜人はイルたちの先祖。僕らは竜人と巫女の末裔だとしたら?」
突拍子もない話に、海人は目をぱちくりさせた。『トンデモ話』もいいところだ。
海人は宙を見て、佐井賀に目をやった。
「でも、おれと佐井賀さんって親戚とかじゃないですよね。うちは一般家庭です」
「元を辿れば同じ先祖に行きつくかもしれない。家が分かれてわからなくなってるだけで、同じ一族かもしれない」
家系図で何百年もたどれるなんて普通はないからね、と佐井賀は付け足した。
海人は少し考え、それでもやはり眉唾物に思えた。
「そしたら、イリアスは竜の末裔ってことになりますけど、それこそ信じられません」
真っ当な意見を言ったつもりだ。当人であるイリアスは否定も肯定もしない。黙って聞いている。
しかし佐井賀はこの説に自信があるようで、それだよ、と言った。
「海人くん、イルに力をあげたとき、何か気づかなかった?」
問われて、海人はそのときのことを思い返した。
身体の奥からなにか不思議な力が湧いたこと。
そして、イリアスの灰色の瞳が琥珀色に変わり、瞳孔が細長くなっていたことを思い出した。
「目……! 目が変わってました!」
佐井賀がうなずいた。
「うん、そう。ユスもね、変わるんだよ」
竜の末裔の証明になりそうなことといえばそれしかない。人間の瞳孔は円形で、細くなって見えるようなことはない。
イリアスが黙ったままだったので、海人は自分ではわからないのだろうと思って、口にした。
「力をあげたとき、イリアスの目の色が金色っぽくなって、猫みたいになってたんだ」
「ねこ……」
イリアスが微妙な反応を示したので、佐井賀がくすりと笑う。
「竜の瞳だよ。猫っていうより、トカゲ」
すると、海人は目を見開いた。
「え⁉ トカゲって爬虫類じゃん! おれ、イリアスが爬虫類なんて嫌なんだけど!」
海人が力いっぱい嫌がると、佐井賀は笑った。
爬虫類呼ばわりされたイリアスは額を抑えている。佐井賀は肩を揺らしながら言った。
「物のたとえだよ。爬虫類なわけないじゃない。神話でも竜は人になったってあるでしょ。ちゃんと人間だよ。ね?」
イリアスに同意を求めるが、腕を組んで目をつぶってしまった。
不貞腐れたようだったので、爬虫類呼ばわりした海人はちょっと慌てた。
「でも、すごく綺麗だったよ。あんな綺麗な目を見たの、初めてだし」
海人がじっとイリアスを見つめると、彼も目を開けて見つめ返してきた。
この端整な顔に現れた『竜の瞳』は怖ろしいほど美しく、あの瞳にもう一度見つめられたいと思った。
海人の胸がトクトク鳴り始めた。
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