異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第4章 いにしえの因果㉑『魅かれる相手』

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 本を戻し、振り返った佐井賀に海人は話しかけた。

「あの、佐井賀さん」

 話が一区切りついたので、海人は昨日から感じている不思議なことを訊こうと思った。

「なに?」

 イリアスの前では言いにくいことだったが、竜人の話を聞いた今しかない。

「その、イリアスもユリウスさんも竜人の末裔かもってことですけど」

 思い切って口を開いたが、言葉にするのにためらった。一旦、口を閉じかけたが、海人は顔を上げた。

「たとえば、なんですけど。ユリウスさんの方が竜人の血が濃いとか、そういうのあると思いますか」
「それはわかんないけど。どうして?」

 佐井賀が再び椅子に腰を下ろした。
 海人は言い淀んだ。

「あの人、なんかちょっとイリアスと違うっていうか……。
 うまく言えないんですけど……」

 口ごもった海人を佐井賀は射貫くように見た。

「姿は見えないのに、気配がわかるとか?」

 言いにくかった言葉をずばりと言われた。

 海人は目を泳がせ、ためらいがちにうなずくと、佐井賀は机に突っ伏した。
 
 どうやら心当たりがあるらしい。

 しばし机に額をつけていたが、体を起こした。

「血が濃いとか、たぶんそういうことじゃない」

 佐井賀は困ったような顔をして、頬杖をついた。

「ユスのパートナーは海人くんなんだね」

 海人は目を丸くした。イリアスが組んでいた腕を解いた。

「ディーテ、何を!」

 イリアスが言いかけたところを、佐井賀は制止した。

「ちゃんと言っておいた方がいい。でないと、海人くんはずっとユスを気にするよ」

 イリアスは何か言いたげだったが、引き下がった。佐井賀は優しい声で言った。

「ユスが気になって仕方ないんでしょう」

 海人が小さくうなずくと、イリアスがじっと見つめてきた。

 刺さるような視線に居たたまれなくなる。佐井賀は真面目な顔をして言った。

「それはたぶん、魂が魅かれ合ってるのかも」

 海人は急に運命的な話が出て、戸惑った。

 もっと科学的な話であってほしかった。いやそもそも見えない人を感じ取れるという話自体、科学的ではないのだが。

「これも何かの因果なんだろうね。ユスと海人くんは魅かれ合うんだ」
「……」
「僕とイルが魅かれ合うようにね」
「!」

 海人の心臓が嫌な跳ね方をした。

「僕らもお互いが近くにいるとわかるんだ。でも僕はユスのことはわからない。海人くんはユスのことはわかるのに、イルが近くにいてもわかんないでしょ」

 海人は返事ができなかった。その通りだった。
 胸がざわつく。海人は乾いた唇を丸めた。

「たとえば、その、パートナー同士の方が、魔力をたくさんあげられるとかあるんでしょうか」
「? どういうこと?」

 海人は動揺を隠しながら、昨夜ユリウスに言われたことを伝えた。

『おまえからは、ディーテよりも力がもらえそうだな』

 すると、佐井賀は思いっきり呆れ返った顔をした。

「ユスったら、そんなこと言ったの。それはわかんないよ。この国に跳躍者は僕しかいなかったわけだし」

 そう言いながら、思いついたようにイリアスを見た。

「あ、今ならわかるか。ちょっと比べてみる?」

 佐井賀は人差し指を唇に当てた。

「ディーテ!」

 イリアスが目を怒らせた。

「冗談だよ。怒らないの」
「あなたが言うと冗談に聞こえない」

 イリアスは憮然として、腕を組んだ。
 海人は自分が口にした言葉を後悔した。

 二人が力を受け渡しているところなんて、見たくない。海人は膝の上で拳を握った。
 
 佐井賀は茶目っ気のある顔から真顔に戻った。

「海人くん。大切なのは自分の心だよ。見えない力で魅かれたって、何がどうなるわけじゃない。
 現に僕とイルは何年も離れていたけど、変わったことなんて何もない。惑わされちゃダメだよ」

 イリアスと佐井賀に見つめられる。

 海人は曖昧な笑顔で、力のない返事をした。
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