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第5章 動乱の王宮⑦『いつ帰れるのかな』
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王都滞在四日目の昼下がり、海人は手持無沙汰になり、王宮の庭園をあてどなく歩いていた。
夏の陽射しはギラギラしているが、日本と違い湿気がないせいか過ごしやすい。
途中、東屋を見つけ座ってみると、そこから噴水が見えるようになっていた。
白く吹き流れる水を見ながら、海人はイリアスのことを考えた。
昨日の午後、イリアスは王太子や宰相と話をしてくると言って、しばらく帰って来なかった。
夕食で顔を合わせたとき、いつもと様子が違うように思えたが、特に何も言われなかったのでこちらからも訊かなかった。
あまり突っ込んだことを訊くのも良くないだろうと思ったからだ。
ところが今朝、朝食のときに顔を見せなかった。
不思議に思って、イリアスの部屋の扉を叩いたが返事はない。
海人に付き添う衛兵が、朝早くにお出かけになりましたよ、と教えてくれた。
彼は海人の部屋の前に立っているので、イリアスが出て行くところを見たという。
(なにかあったのかな)
海人は首を傾げたが、帰ってきて訊けばいいかと思った。
庭園を見ているのも飽きてきたところで、近くに衛兵がいることに気が付いた。そういえば、イリアスといるときは見かけない。
海人は衛兵を呼んで、イリアスと一緒のときはなぜいないのか訊いてみた。
すると衛兵は近くにはいると言った。ただ、誰かと共にいるときは極力姿が見えないようにしているというのだ。
目障りにならないように、配慮してくれているらしい。海人は衛兵もいろいろと大変なんだなと思った。
ちょうどいいので雑談に付き合ってもらった。
彼はノースリー領の出身で、王都に住んで十年が経つと言った。
海人は、そうだこの人に訊いてみようと思った。
実は王都で買いたいものがあったのだ。
ちょうどいいものがないか、訊いてみたら、それなら、となかなか良い物を教えてくれた。
海人は帰りにイリアスに頼んで、その店に寄ってもらおうと思った。
(いつ帰れるのかな)
予定では王都滞在は四日だった。
ただ、予定しているというだけで、滞在日数はわからないとも言われていた。
海人は王宮ではすることがなく、退屈していた。
緑の美しい庭園に、白亜の王宮。光るシャンデリアと口触りの良い食事。物語のように煌びやかな世界だが、海人には窮屈だった。
リンデであれば、駐屯地で馬にも乗れるし、厨房の手伝いなどがある。大いに笑い、肩を叩かれ、頭をかき回される。
汗臭い人たちばかりだが、にぎやかで笑い声が絶えない。
あの街を出て、まだ十日を過ぎたくらいだというのに、皆が恋しくなっていた。
(それに)
海人は知らず、笑みがこぼれた。
帰ったらイリアスが剣術を教えてくれることになっている。その約束を思い返すだけでも楽しみで仕方なかった。
しばらく東屋にいた海人は、せっかくだから佐井賀のところに行ってみようと思い、宮殿に戻ろうとした。
立ち上がったところで、人影が見えた。
夏の陽射しはギラギラしているが、日本と違い湿気がないせいか過ごしやすい。
途中、東屋を見つけ座ってみると、そこから噴水が見えるようになっていた。
白く吹き流れる水を見ながら、海人はイリアスのことを考えた。
昨日の午後、イリアスは王太子や宰相と話をしてくると言って、しばらく帰って来なかった。
夕食で顔を合わせたとき、いつもと様子が違うように思えたが、特に何も言われなかったのでこちらからも訊かなかった。
あまり突っ込んだことを訊くのも良くないだろうと思ったからだ。
ところが今朝、朝食のときに顔を見せなかった。
不思議に思って、イリアスの部屋の扉を叩いたが返事はない。
海人に付き添う衛兵が、朝早くにお出かけになりましたよ、と教えてくれた。
彼は海人の部屋の前に立っているので、イリアスが出て行くところを見たという。
(なにかあったのかな)
海人は首を傾げたが、帰ってきて訊けばいいかと思った。
庭園を見ているのも飽きてきたところで、近くに衛兵がいることに気が付いた。そういえば、イリアスといるときは見かけない。
海人は衛兵を呼んで、イリアスと一緒のときはなぜいないのか訊いてみた。
すると衛兵は近くにはいると言った。ただ、誰かと共にいるときは極力姿が見えないようにしているというのだ。
目障りにならないように、配慮してくれているらしい。海人は衛兵もいろいろと大変なんだなと思った。
ちょうどいいので雑談に付き合ってもらった。
彼はノースリー領の出身で、王都に住んで十年が経つと言った。
海人は、そうだこの人に訊いてみようと思った。
実は王都で買いたいものがあったのだ。
ちょうどいいものがないか、訊いてみたら、それなら、となかなか良い物を教えてくれた。
海人は帰りにイリアスに頼んで、その店に寄ってもらおうと思った。
(いつ帰れるのかな)
予定では王都滞在は四日だった。
ただ、予定しているというだけで、滞在日数はわからないとも言われていた。
海人は王宮ではすることがなく、退屈していた。
緑の美しい庭園に、白亜の王宮。光るシャンデリアと口触りの良い食事。物語のように煌びやかな世界だが、海人には窮屈だった。
リンデであれば、駐屯地で馬にも乗れるし、厨房の手伝いなどがある。大いに笑い、肩を叩かれ、頭をかき回される。
汗臭い人たちばかりだが、にぎやかで笑い声が絶えない。
あの街を出て、まだ十日を過ぎたくらいだというのに、皆が恋しくなっていた。
(それに)
海人は知らず、笑みがこぼれた。
帰ったらイリアスが剣術を教えてくれることになっている。その約束を思い返すだけでも楽しみで仕方なかった。
しばらく東屋にいた海人は、せっかくだから佐井賀のところに行ってみようと思い、宮殿に戻ろうとした。
立ち上がったところで、人影が見えた。
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