異世界美貌の騎士様は、キスで魔力をもっていく

琉希

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第5章 動乱の王宮⑬『王宮の中庭』

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 獣の咆哮ほうこうと共に、窓の外が赤く染まった。窓枠がびりびりと震えている。

 「なに⁉」
 
 佐井賀しょうは窓を開けて、身を乗り出した。上空に何かがいるようだが、よく見えない。
 
 その『なにか』の影がちらりと見えた。

 よくわからないが、なにか得体の知れない魔獣のように思えた。

 景色が赤く染まって見えたのは、魔獣の攻撃だったのかもしれない。

「佐井賀さん、今のは……?」

 海人が不安そうな顔を向けてくる。祥は窓から離れて言った。

「わかんないけど、とにかくユスのとこに行こう! 海人くん、ユスがどこにいるかわかる⁉」

 祥には悔しいが、ユリウスの居場所はわからない。

 海人は目をつむって、ユリウスの気配を探す。祥はじりじりしながら待った。

「こっちです!」

 海人が部屋から飛び出し、王宮の中心に向かって走り出した。海人に付いていた衛兵が驚き顔で追いかけてきて、祥に並んだ。

「ディーテ様! いったい、なにが⁉」
「わからない! いまからユスのとこに行く!」

 海人を追っていると、離れの方に逃げてくる王宮の者たちとぶつかりそうになった。

 海人も避けながら走っているが、ユリウスに向かってまっしぐらだった。
 若さと体力の違いで遅れている祥に気づいていない。

 衛兵はさすがというべきか、祥を置いて海人を追っていった。

 彼の近衛服を目印に、祥も必死で走る。

 追いかけながら、中庭か、と思ったら案の定だった。海人が立ち止まり、集まった人混みの中を指さしている。

 近衛騎士団に囲まれているが、ユリウスの薄金の髪が見えた。

 ユス、と声をあげようとしたとき、頭上を黒い影が覆った。

 ハッと空を見上げ、祥は驚愕した。

「な、なにあれ!」

 赤黒い腹が上空を過ぎていく。
 
 あんな大きな巨体の魔獣など見たことがない。あっけにとられていると、

「ディーテ!」

 と、ユリウスの声が聞こえた。はっとして、彼を見やる。
 ユリウスを囲っていた近衛兵たちが、彼までの道を開けてくれた。

「ちょっと、いまの、なに⁉」

 ユリウスの傍に寄ると、彼の隣にいた近衛騎士団長が渋い声で言った。

「竜です」
「竜⁉ 竜なんて、ルテアニアにいた⁉」
「いえ。我が国に竜はおりません。あれはおそらく、アルミルトの竜。あの赤い鱗は一度だけ見たことがあります」

 年嵩としかさの騎士団長は深い皺を作って、空を見上げた。

 大きな身体がぐるり、ぐるりと王宮の上を飛んでいる。
 祥は乾いた唇を舐めた。

「さっき攻撃受けた?」

 赤く染まった空のことを言うと、ユリウスがうなずいた。

「炎を浴びせたみたいだな。結界のおかげで助かったが」

 王宮の上空には常時ユリウスが結界を張っている。
 祥の力で強化され、非常に堅固な結界だ。そう簡単に破られるものではない。

 ただし、ルテアニア王国にいる魔獣であれば、だ。

 ユリウスと騎士団長が竜の動きを目で追いながら、険しい顔をしていた。
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