【本編完結】混血才女の政略結婚

じぇいそんむらた

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プロローグ

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「人間の血が混ざっているなんて、穢らわしい。山犬の餌にでもなればいい」

 とても美しい顔の魔族が、その顔を醜く歪ませながら、私に投げつけたその言葉を、私は大人になった今でも忘れられないでいる。

「好きで混血に生まれてきたんじゃないわよ……」

 もう、何十回も繰り返したその言葉を、私は今日も呟く。そうやって私は、過去の傷に蓋をする。癒えることのない傷に。

 そんな私に、運命は残酷だ。

「新しい領主へ挨拶に行く。お前もついてらっしゃい」

 母の言う事はいつも突然だ。だが、母は私の予定を完全に把握している。私に、断るという選択肢は存在しない。

 前の領主が急な病で亡くなり、次男が領主を継ぐという話は聞いていた。
 母は、この辺りでは誰もが知る実業家であり、新しい領主への挨拶も当然の事だ。でも。

「母様、なぜ私が?」

 母の経営に全く関与していない、継ぐ予定もない私までもがついて行く必要など、普通に考えてあり得ない。
 だが、母の答えは、とんでもないものだった。

「お前の夫候補だからだよ、アステ」
「…………夫、候補?」

 あまりの驚きに、足元が崩れてしまったかのように、座り込んでしまう。

(そんな……だって……新しい領主は……)

 私の脳裏に、あの恐ろしい光景が蘇る。私を罵倒する、美しい魔族の姿が。

 そう、新しい領主となる男は、今も私を苦しめている元凶なのだ。

(そんな男と……結婚ですって……?)

 私の心は、絶望に満ちた。
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