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嫉妬 後編
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朝の光がまぶたをくすぐる。でもまだ眠りから抜けきれないでいるわたしは、いつの間にかどこかにやってしまったらしい愛用の肌掛けを手探りで探す。
そんなわたしの耳に、小さな笑い声が聞こえ、それから、わたしの体は肌掛けにふわりと包まれる。
「ん……レミス……ありがと……」
わたしがお礼を言うと、どういたしましての代わりなのか、大きな手がわたしの頭をなでる。
昔は、同じことをされても、受け止めることが怖かった。でも今は、素直に受け止められる。そのことを思うだけで、幸せでたまらない。
「ふふ……だいすき……レミス……」
まだ少し夢の中にいるようなふわふわした気分が、わたしに素直な気持ちをつぶやかせる。そしてわたしはそのまま眠りに戻ろうとした。でも。
「そんな愛らしい事を言われたら、二度寝させるわけにいかないな」
「ん……?」
どういう意味か理解するより前に、レミスの香りが鼻をくすぐり、そして、唇がふさがれる。
「ん……」
されるがまま、わたしは何回もレミスのキスを受け止める。眠気が少しずつ消え、かわりに違う欲求が迫り上がってくる。
「レミス……」
そうわたしがつぶやくだけで、レミスは理解したのだと思う。わたしもそうしたいと思っていると。
彼の手は、わたしの体をまさぐりはじめる。その手が触れる場所はどこも心地よく、燃え上がるように熱くなる。
身につけていたもの全てを脱がされた頃には、わたしの体は、すぐにでも彼を受け入れられるようになっていた。
そして、熱く潤う場所を、彼のものが満たしていく。
「ん……」
レミスが、わたしの心も体も支配していく。わたしがそうなるなんて、彼にはわかりきってるはず。それなのに彼は、わたしに嫉妬を語った。わたしの知らなかった彼が、わたしだけが見られる彼が、そこにいる。
「レミス……」
愛してるの言葉さえ、この気持ちを表すには足りないような気がして、わたしはレミスの名前をつぶやくことしかできない。もどかしい気持ちが、涙に変わる。
「もっと……もっと……レミスだけのわたしに……して……」
いっそこのまま熱に溶かされて、レミスとひとつになってしまいたい。そんなわたしの気持ちを見透かしてしまうように、レミスの瞳がわたしの瞳を捉える。そしてわたしの奥深くをえぐって、彼は動きを止める。
「お前を求めるあまり、喰らい尽くしてしまいたいと、何度も思った。だが、お前のころころ変わる愛らしい表情を見れなくなるのは困る」
レミスは少し困ったように笑って、わたしの頬に手のひらで触れる。
「私の命尽きるその日まで、どうか、誰よりも側にいて、私を愛しておくれ」
わたしは、レミスの手のひらに頬ずりをする。そしてこう答えた。
「うん……ずっと、愛してる」
レミスは満足そうに微笑む。それにつられるように、わたしも笑う。なんて幸せな時間。わたしは彼を何度も受け止めながら、終わりの見えない幸福と快楽に包まれ続けた。
――
あれから、わたしはすっかり体力を使い果たしてしまった。レミスの方が動いてるはずなのに、彼の体力は減った様子もなくて。ほんと信じられない。
なんとか朝食は食べたものの、その間も気を抜いたらうつらうつらしてしまって、レミスに笑われてしまう始末。
結局、わたしは日が沈むまで夢の中で過ごした。
でも時折、意識が夢から現実に戻りかけ、そのたびにレミスの気配や香りを感じて、嬉しくなった。
彼は、わたしの頭をなでながら語る。
「お前が人のままであれば、手折る事のないまま、師として見守り続けるべきだと、私は自らに言い聞かせていた。しかし、お前の強大な魔力は、とうとうお前の体を蝕み、命を削り始めた」
そう。人間の体では耐えられないくらいの魔力がわたしにはあった。でも、子供の頃はまだなんともなかった。大きくなるにつれて、体が悲鳴を上げるようになった。
「魔族に迎え入れれば、魔力をコントロールし、命を脅かす事もなくなる。それでも、人のまま生を終えた方がお前にとって幸福なのかもしれぬと、悩んだ。だが運命は、お前を私に引き寄せた」
わたしの頬に触れるレミスの手が、震えている。彼の悲しみと怒りがまぜこぜになって、わたしの中に流れ込んでくる。
「お前の死が現実に迫り、私はいてもたってもいられなくなった」
わたしの体には傷跡などないのに、あの時刺された場所が疼く。
「わたしは、お前の、側にいたいという気持ちを利用したんだ。お前は私を、男としてなど見ていなかっただろうに。穢れのない乙女のお前を、私の欲望の中に引き摺り込んでしまった」
そんなことない、そう言いたかったけれど、意識だけがさめて、体は眠りについたまま、喉を震わすこともできない。
「それでもお前が、偽りのない眼差しで、私を愛していると言ってくれるたびに、決して間違いではなかったのだと、そう思えるんだ」
そして、額にレミスのキスを感じる。
「愛している、ログ。私の心は、お前だけの物だ」
わたしの意識は、再び夢に呼び戻されていく。レミスの、愛してるの言葉を胸に抱きながら。
きっともう、悪夢など二度と見なくてすみそうな、そんな気分で。
――
後日。
「……ってわけでお兄ちゃん、レミスに一体どんなお説教したの?」
「……はて、なんのことやら。俺は忙しいからもう行くぞ」
「えー!やだやだ!!きーかーせーてっ!!!」
「断る!」
「もう!逃がさないんだから!!」
なかなか口を割らないスクルと、どうしても聞きたいわたしの攻防は、どちらかが根負けするまで続くのであった……。
そんなわたしの耳に、小さな笑い声が聞こえ、それから、わたしの体は肌掛けにふわりと包まれる。
「ん……レミス……ありがと……」
わたしがお礼を言うと、どういたしましての代わりなのか、大きな手がわたしの頭をなでる。
昔は、同じことをされても、受け止めることが怖かった。でも今は、素直に受け止められる。そのことを思うだけで、幸せでたまらない。
「ふふ……だいすき……レミス……」
まだ少し夢の中にいるようなふわふわした気分が、わたしに素直な気持ちをつぶやかせる。そしてわたしはそのまま眠りに戻ろうとした。でも。
「そんな愛らしい事を言われたら、二度寝させるわけにいかないな」
「ん……?」
どういう意味か理解するより前に、レミスの香りが鼻をくすぐり、そして、唇がふさがれる。
「ん……」
されるがまま、わたしは何回もレミスのキスを受け止める。眠気が少しずつ消え、かわりに違う欲求が迫り上がってくる。
「レミス……」
そうわたしがつぶやくだけで、レミスは理解したのだと思う。わたしもそうしたいと思っていると。
彼の手は、わたしの体をまさぐりはじめる。その手が触れる場所はどこも心地よく、燃え上がるように熱くなる。
身につけていたもの全てを脱がされた頃には、わたしの体は、すぐにでも彼を受け入れられるようになっていた。
そして、熱く潤う場所を、彼のものが満たしていく。
「ん……」
レミスが、わたしの心も体も支配していく。わたしがそうなるなんて、彼にはわかりきってるはず。それなのに彼は、わたしに嫉妬を語った。わたしの知らなかった彼が、わたしだけが見られる彼が、そこにいる。
「レミス……」
愛してるの言葉さえ、この気持ちを表すには足りないような気がして、わたしはレミスの名前をつぶやくことしかできない。もどかしい気持ちが、涙に変わる。
「もっと……もっと……レミスだけのわたしに……して……」
いっそこのまま熱に溶かされて、レミスとひとつになってしまいたい。そんなわたしの気持ちを見透かしてしまうように、レミスの瞳がわたしの瞳を捉える。そしてわたしの奥深くをえぐって、彼は動きを止める。
「お前を求めるあまり、喰らい尽くしてしまいたいと、何度も思った。だが、お前のころころ変わる愛らしい表情を見れなくなるのは困る」
レミスは少し困ったように笑って、わたしの頬に手のひらで触れる。
「私の命尽きるその日まで、どうか、誰よりも側にいて、私を愛しておくれ」
わたしは、レミスの手のひらに頬ずりをする。そしてこう答えた。
「うん……ずっと、愛してる」
レミスは満足そうに微笑む。それにつられるように、わたしも笑う。なんて幸せな時間。わたしは彼を何度も受け止めながら、終わりの見えない幸福と快楽に包まれ続けた。
――
あれから、わたしはすっかり体力を使い果たしてしまった。レミスの方が動いてるはずなのに、彼の体力は減った様子もなくて。ほんと信じられない。
なんとか朝食は食べたものの、その間も気を抜いたらうつらうつらしてしまって、レミスに笑われてしまう始末。
結局、わたしは日が沈むまで夢の中で過ごした。
でも時折、意識が夢から現実に戻りかけ、そのたびにレミスの気配や香りを感じて、嬉しくなった。
彼は、わたしの頭をなでながら語る。
「お前が人のままであれば、手折る事のないまま、師として見守り続けるべきだと、私は自らに言い聞かせていた。しかし、お前の強大な魔力は、とうとうお前の体を蝕み、命を削り始めた」
そう。人間の体では耐えられないくらいの魔力がわたしにはあった。でも、子供の頃はまだなんともなかった。大きくなるにつれて、体が悲鳴を上げるようになった。
「魔族に迎え入れれば、魔力をコントロールし、命を脅かす事もなくなる。それでも、人のまま生を終えた方がお前にとって幸福なのかもしれぬと、悩んだ。だが運命は、お前を私に引き寄せた」
わたしの頬に触れるレミスの手が、震えている。彼の悲しみと怒りがまぜこぜになって、わたしの中に流れ込んでくる。
「お前の死が現実に迫り、私はいてもたってもいられなくなった」
わたしの体には傷跡などないのに、あの時刺された場所が疼く。
「わたしは、お前の、側にいたいという気持ちを利用したんだ。お前は私を、男としてなど見ていなかっただろうに。穢れのない乙女のお前を、私の欲望の中に引き摺り込んでしまった」
そんなことない、そう言いたかったけれど、意識だけがさめて、体は眠りについたまま、喉を震わすこともできない。
「それでもお前が、偽りのない眼差しで、私を愛していると言ってくれるたびに、決して間違いではなかったのだと、そう思えるんだ」
そして、額にレミスのキスを感じる。
「愛している、ログ。私の心は、お前だけの物だ」
わたしの意識は、再び夢に呼び戻されていく。レミスの、愛してるの言葉を胸に抱きながら。
きっともう、悪夢など二度と見なくてすみそうな、そんな気分で。
――
後日。
「……ってわけでお兄ちゃん、レミスに一体どんなお説教したの?」
「……はて、なんのことやら。俺は忙しいからもう行くぞ」
「えー!やだやだ!!きーかーせーてっ!!!」
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