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第7話 君の声で
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あれから、りかの声からは元気がなくなっていった。
俺との会話もほとんどなくなり、まるで一人暮らしに戻ってしまったような、そんな状態だった。
でも、それも仕方ないことだと思う。
やっと勝ち取ったヒロイン役。それを演じる事ができない。落ち込まない方がおかしい。
りかを生き返らせてあげられたらどんなにいいか。でも俺に、そんなことできるわけがない。
会社で仕事をしていても、気を抜くとついりかの事ばかり考えてしまっていた。
気づけば昼休憩。同僚に誘われて近くの定食屋に行った俺は、その同僚がアニメ好きな事を思い出し、聞いてみた。
やっとつかんだアニメの主役を、不慮の事故で演じられないまま死んだ声優は、どうやったら成仏するのだろうか、と。
同僚は、なんだそれ、と言いながらも、うーんと考えていたが、そのアニメに出るしかなくね?という、無茶な回答しか返ってこなかった。
(アニメに出る……か)
聞いた時は無理だろ、と思っていた。でも俺は、ひとつの可能性を思い付いた。
俺は、ネットのテレビ番組表で、そのアニメの欄を確認すると、スマホのスケジュールに登録した。
金曜24時……今日の夜中。
それをすればりかを救えるのか……余計なことじゃないのか……。でも、俺にはそれしかできない。
決意を固め、俺は仕事に戻った。
***
「ただいま……」
考え事をしすぎた代償として、ここ最近で一番長い残業となってしまった。慌てて帰宅したがもう21時を過ぎている。
「あ、玲斗くん……おかえり」
元気のないりかの声。
「うん、ただいま……風呂……入ってくる」
「うん……」
最低限の返事しか返ってこない。
俺は風呂と食事をさっと済ませ、時計を確認した。
放送時間まであと1時間もない。
俺は、一度深呼吸をしてから、りかに話しかけた。胃が緊張で焼けるように痛い。
「りか、俺からひとつお願いがあるんだ」
俺に声をかけられて驚いたのか、少し間が開いた後、なに?という声が返ってきた。
俺は、ひとつ深呼吸をして、心を落ち着けて言う。
「りかが出るはずだったアニメ……一緒に見たいんだ」
「…………」
返事がない。当然だ。絶対に見たいと思わないだろう。自分じゃない誰かが出ているなんて、俺なら絶対に無理だと思う。
「でも、俺は、りかの声で見たい。だから……」
そういうと俺は、リモコンのテレビを消音ボタン、そして字幕ボタンを押した。
テレビからは音が消え、字幕が表示される。
「調べたんだ。りかが出るはずだったアニメ、字幕が出るんだって」
俺は、無意識のうちにリモコンを強く握っていた。手は汗ばむ。
「だから、音を消して、りかが字幕を見ながら話せば、りかが出てるアニメになる……。俺しか見てあげることができないけど……俺にできるのは、これしかないから……」
ない知恵を絞って考えた。
(……これがダメなら、またいくらだって考えてやる)
沈黙が続く。俺は背中にまで変な汗をかき始めた。
だけど、その時やっと、りかの声が聞こえた。
「……やってみる」
俺は思わず、よっしゃあ!と叫び、天を仰いだ。くすくす、というりかの笑い声が聞こえ、俺は我に返る。恥ずかしい。
「……台本もないし、絶対に、うまくできないと思うし、きっと玲斗くんをがっかりさせちゃう……でも、やる。やりたい」
アニメが始まるまで、あと10分。俺たちは、その時を待った。
俺との会話もほとんどなくなり、まるで一人暮らしに戻ってしまったような、そんな状態だった。
でも、それも仕方ないことだと思う。
やっと勝ち取ったヒロイン役。それを演じる事ができない。落ち込まない方がおかしい。
りかを生き返らせてあげられたらどんなにいいか。でも俺に、そんなことできるわけがない。
会社で仕事をしていても、気を抜くとついりかの事ばかり考えてしまっていた。
気づけば昼休憩。同僚に誘われて近くの定食屋に行った俺は、その同僚がアニメ好きな事を思い出し、聞いてみた。
やっとつかんだアニメの主役を、不慮の事故で演じられないまま死んだ声優は、どうやったら成仏するのだろうか、と。
同僚は、なんだそれ、と言いながらも、うーんと考えていたが、そのアニメに出るしかなくね?という、無茶な回答しか返ってこなかった。
(アニメに出る……か)
聞いた時は無理だろ、と思っていた。でも俺は、ひとつの可能性を思い付いた。
俺は、ネットのテレビ番組表で、そのアニメの欄を確認すると、スマホのスケジュールに登録した。
金曜24時……今日の夜中。
それをすればりかを救えるのか……余計なことじゃないのか……。でも、俺にはそれしかできない。
決意を固め、俺は仕事に戻った。
***
「ただいま……」
考え事をしすぎた代償として、ここ最近で一番長い残業となってしまった。慌てて帰宅したがもう21時を過ぎている。
「あ、玲斗くん……おかえり」
元気のないりかの声。
「うん、ただいま……風呂……入ってくる」
「うん……」
最低限の返事しか返ってこない。
俺は風呂と食事をさっと済ませ、時計を確認した。
放送時間まであと1時間もない。
俺は、一度深呼吸をしてから、りかに話しかけた。胃が緊張で焼けるように痛い。
「りか、俺からひとつお願いがあるんだ」
俺に声をかけられて驚いたのか、少し間が開いた後、なに?という声が返ってきた。
俺は、ひとつ深呼吸をして、心を落ち着けて言う。
「りかが出るはずだったアニメ……一緒に見たいんだ」
「…………」
返事がない。当然だ。絶対に見たいと思わないだろう。自分じゃない誰かが出ているなんて、俺なら絶対に無理だと思う。
「でも、俺は、りかの声で見たい。だから……」
そういうと俺は、リモコンのテレビを消音ボタン、そして字幕ボタンを押した。
テレビからは音が消え、字幕が表示される。
「調べたんだ。りかが出るはずだったアニメ、字幕が出るんだって」
俺は、無意識のうちにリモコンを強く握っていた。手は汗ばむ。
「だから、音を消して、りかが字幕を見ながら話せば、りかが出てるアニメになる……。俺しか見てあげることができないけど……俺にできるのは、これしかないから……」
ない知恵を絞って考えた。
(……これがダメなら、またいくらだって考えてやる)
沈黙が続く。俺は背中にまで変な汗をかき始めた。
だけど、その時やっと、りかの声が聞こえた。
「……やってみる」
俺は思わず、よっしゃあ!と叫び、天を仰いだ。くすくす、というりかの笑い声が聞こえ、俺は我に返る。恥ずかしい。
「……台本もないし、絶対に、うまくできないと思うし、きっと玲斗くんをがっかりさせちゃう……でも、やる。やりたい」
アニメが始まるまで、あと10分。俺たちは、その時を待った。
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