後悔電車

如月由美

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regret one 「亡くなった妹」

〜レッツ、タイムスリップ〜

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翌日の早朝。
昨晩、早めに寝た俺は、岩滝さんからの説明を受けていた。
「いいですか?今日は、二○三○年の八月七日。南月さんが亡くなる一週間前です。秀さんは、お父さんも助けると言っていましたね?」
「はい。父も助けます」
「ですが、タイムスリップにも制限というものがあります。タイムスリップできたのは、今日だけです。残された時間は少ないので、注意してください」
「了解です」
「こちらからでは、何もできません。タイムスリップのみです。つまり、全てを自分で解決するということになります。今更ですが、大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「最後に。解決できずに帰ることは、できません。さらに、タイムスリップは一度なので、チャンスは一回しかありません。タイムスリップが終わった時、後悔を消していなかったら、時間の渦に巻き込まれます。最悪の場合は、死に至るかと。それでも、いいですね?」
「はい!」
覚悟はとっくにしている。
それに、父のメッセージには。
"大丈夫だよ。お前なら、できるさ"
そう書いてあった。
だから、俺ならできる!
「それでは。秀さんを眠らせます」
と言われた途端、俺の意識は遠のいた。

二○三○年八月七日、午前八時──。
俺が目を覚ましたのは、この瞬間ときだった。
そして、階段から母の声が聞こえたのも、この瞬間だった。
「秀ー!早くしないと、遅刻するわよー!」
「わ、分かった。すぐ行くー」
とりあえず、返事をした俺はベッドから起き上がり、部屋を見渡した。
「すごいな。本当にタイムスリップしたんだな。あの電車、本物だったのか」
カードを老人から貰った時はそんなのあるわけないと思ったが、ちゃんとタイムスリップしていることに驚いていた。
机や椅子、ベッド。そして、クローゼット。
全て、当時のもの。壁に掛けられた制服も、当時の学校のものだ。
その制服を身に着け、ブレザーのポケットに入っていた生徒手帳を取り出す。
「五年前の俺なのに、今の俺とそっくりだなぁ。でも、俺ってこんなんだっけ」
そこには、当時の俺が写真として残っていた。
しかし。今と違って、ボサついた髪型に、着崩れた制服。そして、言動が軽薄そうな顔つきをしている俺がそこにはいた。
「秀ー!」
生徒手帳の写真を見ていると、母親の怒りの声が聞こえた。
すぐに、ブレザーのポケットに戻し、言葉を返す。
「は、はーい!」
学校の指定かばんを手に取り、階段を下りた。
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