4 / 37
第一章 灰姫と魔王
episode.03 夜会の襲撃
しおりを挟む
私達が向う先は王城。本日は大規模な夜会ということもあり馬車が何台も連なっていた、馬車を降りる人達を見るとこの国の重鎮たちの顔がいくつか見受けられた、これらを前にして何事もなく終えれたらいいのだが。
私が乗っていた馬車も足を止め、外へと身を乗り出す。お継母様とソフィアは既に会場に向かっているようで周囲にはいなかった、お父様の姿も見えないがどこへ行ってしまわれたのだろうか。
探す余裕もないので会場につながっているレッドカーペットに足を踏み入れる、周囲が急に騒がしくなり辺りを見渡すが何か起こった様子もみられない、緊張感からか足が重たく感じるが前に前に歩みを進める。
「大丈夫、最高の鎧を身に着けているのですから」
小さく、アリサの言葉を胸に抱く。
「わぁ、凄い……」
会場の中へと入ると、まさに豪華絢爛といったような巨大なシャンデリアや美しい花々、煌めかしい灯りと、天井にある大きなドーム型のガラス窓と周りのガラス窓から入る月明りが幻想的な演出を作り出していた。見たことないものばかりで目が眩みそうになる。
「お父様のドレスがあって良かったわ」
当初のドレスでは萎縮して周りから変な視線を向けられていた事でしょう、にしては先程から変な視線をそこらじゅうから感じるので、私はその視線に耐えれなくなり会場の端の方へと向う。
すると、足下が何かに引っ掛かり大きく転倒してしまった、一気に恥ずかしい感情に襲われながらも、誰かの足を引っ掛けたのかと焦りながら目線を向けるとソフィアの足が伸びていた事に気がつく。
周りの人はざわついていたが、ソフィアだけが笑みを浮かべている。
「ソフィア……」
「あらお異母姉様、大丈……」
ソフィアが私に手を伸ばそうとした瞬間、周囲がさらに騒がしくどよめきだした。その視線の先は私ではなく、隣の人物に注がれていた。
「大丈夫ですか?」
男性の声が聞こえ、見上げると誰もが知っているこの国の王子殿下が手を差し伸べていた。私は惹き寄せられるかのように差し出された手に触れる。
白髪でとても優しい雰囲気をまとっておりこの会場で一番の存在感を放っている、噂の通り誰に対しても分け隔てなく優しく接し、誰からも愛される人物であるその噂は間違っていないのだろうと感じさせてくれていた。
「あ、ありがとうございます……王子殿下」
「いえお怪我はありませんか?」
整った顔立ちから放たれる無邪気な笑顔はとんでもない破壊力を秘めていた、その証拠に先程までざわついていた周囲からは甲高い声が聞こえるようになっていた。まぁ、半分は嫉妬でしょうけど。
「王子殿下のお手をお借りしてしまい、大変申し訳ございません」
「いえ、そんな事は仰らずに。せっかくの夜会ですから心ゆくまで楽しんでいただけたら」
初めて向けられる優しい言葉遣いと表情に少し焦りを覚えてしまう、こんな事は今までに無かったのでどう取り繕えばいいのかも分からない。
「失礼ですがお嬢様、お名前を伺っても?」
「……あっ、はい!オーエンス家が長女、エレナと申します。以後お見知りおきを」
そう言いながら必死に自己紹介を述べて頭を下げる、スカートを少しだけ持ち上げて少しでも優雅に、美しく見られるようにと。
そうして顔を上げると、突如視界が遮られ間に入ってきたのはソフィアだった。
「私はオーエンス家が次女ソフィアと申します、どうぞよろしくお願いします。王太子殿下」
そう言いながら王太子の手を急に握り始めた、ソフィアはどうしてその行いが不敬に当たると気づかないだろうか、その証拠に先程まで騒がしかった周囲が静まり返り、あまりの行いと言動に周囲も呆れ返るしかない。
私も同じ気持ちを抱くがその光景を見ていたのか、奥から必死に表情を隠しながらお継母様が駆け寄ってきた。
「王太子殿下申し訳ございません、娘は初めての場所で少し舞い上がっていたようで」
「おや、貴女がオーエンス家のルーゼン夫人か?」
「は、はいっ」
「オーエンス家には大変に世話になった」
「それは守るべき国があればこそ、その国を作りし王があればこそでございます」
先程までと違い空気が張り詰めたように感じる、私もその場から動けずに二人を見つめることしか出来なかった。いつの間にか会場の視線はこの2人に集められており、誰もが固唾をのんで見守っている。
すると、その空気を取り払うかのように王太子殿下が大きく腕を振り、声を高らかにこの会場に集まった人たちに告げる。
「皆の者!此度は魔獣掃討作戦の成功を祝う会である、その立役者となるオウル・オーエンス当主、並びにオーエンス家に盛大な拍手を!」
その瞬間、誰もが拍手を打ち鳴らし歓声を上げる。その迫力に圧倒されそうになるが、お父様の成果によるものだと思うと心の内から込み上げてくるものがある、当のお父様の姿は見当たらないが、その分私がお父様に労いを伝えたいと、そう感じる。
「それで、オーエンス当主はどちらへ?」
「それでしたら……」と二人が話していると、突然入口の扉から爆発音が鳴り響いた、辺りは騒然として王子殿下を守ろうと兵士たちが取り囲み始める。
私は何が起こったのか分からず、状況を把握するよりも先に目の前に黒い人影が現れた。
「コノ国ニ破滅ヲモタラサン」
その人影は黒装束に身を包み、混乱に乗じて私に迫ってきたのだろう。反応する事が出来ずに、次に気がついた時には光る刃を向けられていた。
(なに、これ!?)
私は突然の出来事に目を瞑るしかなかった、斬り込まれると思ったその瞬間、すぐ傍で金属音が響き渡る。私は恐怖心を抱きながらも目を開けると、そこに立っていたのはお父様だった。お父様は、黒装束の敵が持っていた剣を弾き飛ばし、そのまま斬り伏せてしまった。
「大丈夫かエレナっ!?」
「え、あ…あ」
「エレナっ、しっかりしろ!」
その一言に先程まで混乱していた頭が冴えわたる、冷静さを取り戻し周囲を確認すると黒装束の敵は会場を入り乱れるように動き回り、侵入口は入口の大きい扉と四方の窓ガラス割って入ってきていた。
狙いは王子殿下のようで周囲に集まる兵士が守りながらも対処にあたっており、その見た目からは敵の正体は判明できない、敵は揃って黒装束で身を覆い隠しながら剣を振りながら軽やかに会場を動き回っている。
「お父様、これは一体」
「細かい話は後だ、取り敢えずお前は動くな!」
そう言いながらお父様は私たちを守るように戦い続けていてくれてる、お継母様とソフィアは腰が抜けたのかお互いに抱き合うようにしてその場にうずくまっていた。王子殿下は冷静に兵士に指示をしながら、自身も戦いに参戦していた。
こうなってしまえば敵も味方も入り乱れて状況を把握するだけで精一杯ね。冷静になった今、私にも出来ることを考える。
すると天井のガラスドームが激しく割れる音が聞こえる、上を見上げると敵は空からも襲撃を始めたようだ。私は先程までとは違い体が考えるよりも先に動いていた。
「本当に情けない」
先程まで身が竦んでいたのが情けなく感じる、私は一体誰の娘なのだ、誰の背中を追いかけていたのかと。先ほどまでとは違い、歯を食いしばり目線を上げ眼前に迫る脅威に目を向ける。
「私はオーエンス家が長女、オウル・オーエンスの娘!こんな賊なんかに遅れは取らない!!」
敵の正体は見当もつかないが、これ以上お父様に情けない姿は見せることはできない。天に手をかざし、私は魔力を込めて魔法を唱える。
《フレイムジャベリン!!》
炎の槍をいくつも展開させ、空から降ってきた敵に連射していき紅蓮の炎が天上を覆うようにして、迫ってきた敵を足止めする。詠唱を省いたので、威力は控えめだが十分な効力をもたらしていた。
「エレっ、いや……すまない助かった」
「お父様、私は大丈夫です」
それでも敵の勢いは衰える気配が無く場は混乱を極めていた、一度攻め込まれた以上どうしても守りに入ってしまい後手が続いている、お父様も王太子殿下も攻めあぐねている状況に焦りを感じているようにも見えた、この状況を逆転するには私が動くしかない。
『 燃ゆる逆巻く 劫炎一切 我が焔を顕現せよ
この刃に込めた炎 恐れ抱き 業火と共に散れ』
「お、おい……エレナ?」
私の全身を猛り狂う炎が身を包み始める。それをお父様が心配そうにこちらを見つめていた、それもそのはず、お父様にこれを見せた事は無いのだから、私がこの見た目と他に"灰かぶり"と言われる事になった理由の一つ。
「目覚めなさいっ!《灰燼斬刀》」
噴き出す炎が私の右手に収束し一振りの刀を形作っていく。異常を感じたのか敵の視線が私に集まり始めているのを感じたが私は臆することなく姿を整えた刀を強く握りしめ、向かってきた黒装束の敵に向かって振り切る。
その刀は敵の握る剣と一緒に胴体を一刀両断し、その勢いを殺すことなく良く振り切られたその瞬間、眼前の敵は激しく燃え上がり空へと灰が舞い上げられた。
「ひっひぃぃっ」
一人をいとも簡単に屠った事で、周囲の敵に恐怖が伝染したようだ。手前の何人かは震えながら立ち止まっていたが奥から臆せずに数人が飛び込んできた、私は向かってくる剣を溶かし斬りながら、そのまま目に映る敵を全て灰にしていく。
気がつけば王太子殿下を守っていた兵士やお父様がこれを期に場を掌握、一気に押し返していった。そこからは一方的な戦況が続き、こちらは大きな負傷者を出す事なく場を収めた。
落ち着いた私は握っていた刀を炎に還し一呼吸ついた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
体力的には問題ないが体内の魔力が尽きかけていた、私の中で使える強力な魔法を連発したせいだ。
「エレナっ!大丈夫かっ!?」
驚いた事にお父様が私の元へと駆け寄ってきた、その顔は娘を心配する父親の顔そのものだった。今までに向けられたことのなかった感情に私は戸惑いながらも「私は大丈夫です」と、返事する。
その言葉に安心したのか周囲の確認と兵士を数人引き連れ、この場を後にしたその去り際に「後で屋敷に戻れば話がある」
その時の言葉と表情はいつも通り、私に興味がなかったお父様のままだった。そうしてこの場には私とお継母様とソフィアが取り残されていた、二人は変わらず抱き合ったままその場でうずくまったまま動こうとせずにいた、一応近づいて様子を見に行くと何か呟いているのが聞こえた。
「こんなはずじゃ…ここまでとは聞いてない」
その言葉に耳を疑う。まるで今回の襲撃を事前に知っていたかのような、若しくは手引きをしていたような。何かの聞き間違いかと思い声をかけようとすると、王太子殿下が後ろから声をかけてきた。
「エレナ、ご無事ですか?」
「王太子殿下におかれましても、ご無事で何よりでございます」
「まさか、貴女が"灰かぶり姫"だったとは」
その言葉に緊張が走る。私は昔に魔学の一環で魔獣の実戦討伐に出た事があるが、その際に盗賊に襲われた。身を守るために先ほどの力を振るい、これを退けることに成功したがその際の戦いぶりと、戦闘後に灰を撒き散らしていたことから、この見た目と相まって"灰かぶり姫"と言われる事になった。
その正体が私だと知って王太子殿下は幻滅した事だろう。こんな、淑女とは程遠い私の事を。
「はい、そう呼ばれる事もあります」
「そうか、名乗り遅れてしまったが私の名は【リュシアン・バーン】と申す」
「勿論、存じ上げております」
「それもそうか」
そう言いながらリュシアン殿下は笑いかけていた、向けられたその笑顔には少しばかり幻滅されていないと期待したくなってしまうほどの。
「今宵の礼は追って出すゆえ、今日は帰られるといい。エレナの母君と妹君は帰られたようだしな」
その言葉に振り向くとその場所にいたはずの二人は見当たらなくなっていた、気になる言葉の意味を問いたかったが今日は厳しいだろう。
「お言葉に甘えさせていただきます、王太子殿下。私は此処で失礼させていただきます」
そうして頭を下げながら私はその場をあとにする。会場の外に出ると、アリサが馬車を用意して待っていてくれていた。馬車に乗り込むと全身の力が抜けるかのようにソファに座り込む。
今日一日で色々な出来事が起こりすぎて疲れ切っていたようで、私は窓の外から見える景色に少しの寂しさを覚えながらも屋敷に向かって馬車を走り出してもらう。
私が乗っていた馬車も足を止め、外へと身を乗り出す。お継母様とソフィアは既に会場に向かっているようで周囲にはいなかった、お父様の姿も見えないがどこへ行ってしまわれたのだろうか。
探す余裕もないので会場につながっているレッドカーペットに足を踏み入れる、周囲が急に騒がしくなり辺りを見渡すが何か起こった様子もみられない、緊張感からか足が重たく感じるが前に前に歩みを進める。
「大丈夫、最高の鎧を身に着けているのですから」
小さく、アリサの言葉を胸に抱く。
「わぁ、凄い……」
会場の中へと入ると、まさに豪華絢爛といったような巨大なシャンデリアや美しい花々、煌めかしい灯りと、天井にある大きなドーム型のガラス窓と周りのガラス窓から入る月明りが幻想的な演出を作り出していた。見たことないものばかりで目が眩みそうになる。
「お父様のドレスがあって良かったわ」
当初のドレスでは萎縮して周りから変な視線を向けられていた事でしょう、にしては先程から変な視線をそこらじゅうから感じるので、私はその視線に耐えれなくなり会場の端の方へと向う。
すると、足下が何かに引っ掛かり大きく転倒してしまった、一気に恥ずかしい感情に襲われながらも、誰かの足を引っ掛けたのかと焦りながら目線を向けるとソフィアの足が伸びていた事に気がつく。
周りの人はざわついていたが、ソフィアだけが笑みを浮かべている。
「ソフィア……」
「あらお異母姉様、大丈……」
ソフィアが私に手を伸ばそうとした瞬間、周囲がさらに騒がしくどよめきだした。その視線の先は私ではなく、隣の人物に注がれていた。
「大丈夫ですか?」
男性の声が聞こえ、見上げると誰もが知っているこの国の王子殿下が手を差し伸べていた。私は惹き寄せられるかのように差し出された手に触れる。
白髪でとても優しい雰囲気をまとっておりこの会場で一番の存在感を放っている、噂の通り誰に対しても分け隔てなく優しく接し、誰からも愛される人物であるその噂は間違っていないのだろうと感じさせてくれていた。
「あ、ありがとうございます……王子殿下」
「いえお怪我はありませんか?」
整った顔立ちから放たれる無邪気な笑顔はとんでもない破壊力を秘めていた、その証拠に先程までざわついていた周囲からは甲高い声が聞こえるようになっていた。まぁ、半分は嫉妬でしょうけど。
「王子殿下のお手をお借りしてしまい、大変申し訳ございません」
「いえ、そんな事は仰らずに。せっかくの夜会ですから心ゆくまで楽しんでいただけたら」
初めて向けられる優しい言葉遣いと表情に少し焦りを覚えてしまう、こんな事は今までに無かったのでどう取り繕えばいいのかも分からない。
「失礼ですがお嬢様、お名前を伺っても?」
「……あっ、はい!オーエンス家が長女、エレナと申します。以後お見知りおきを」
そう言いながら必死に自己紹介を述べて頭を下げる、スカートを少しだけ持ち上げて少しでも優雅に、美しく見られるようにと。
そうして顔を上げると、突如視界が遮られ間に入ってきたのはソフィアだった。
「私はオーエンス家が次女ソフィアと申します、どうぞよろしくお願いします。王太子殿下」
そう言いながら王太子の手を急に握り始めた、ソフィアはどうしてその行いが不敬に当たると気づかないだろうか、その証拠に先程まで騒がしかった周囲が静まり返り、あまりの行いと言動に周囲も呆れ返るしかない。
私も同じ気持ちを抱くがその光景を見ていたのか、奥から必死に表情を隠しながらお継母様が駆け寄ってきた。
「王太子殿下申し訳ございません、娘は初めての場所で少し舞い上がっていたようで」
「おや、貴女がオーエンス家のルーゼン夫人か?」
「は、はいっ」
「オーエンス家には大変に世話になった」
「それは守るべき国があればこそ、その国を作りし王があればこそでございます」
先程までと違い空気が張り詰めたように感じる、私もその場から動けずに二人を見つめることしか出来なかった。いつの間にか会場の視線はこの2人に集められており、誰もが固唾をのんで見守っている。
すると、その空気を取り払うかのように王太子殿下が大きく腕を振り、声を高らかにこの会場に集まった人たちに告げる。
「皆の者!此度は魔獣掃討作戦の成功を祝う会である、その立役者となるオウル・オーエンス当主、並びにオーエンス家に盛大な拍手を!」
その瞬間、誰もが拍手を打ち鳴らし歓声を上げる。その迫力に圧倒されそうになるが、お父様の成果によるものだと思うと心の内から込み上げてくるものがある、当のお父様の姿は見当たらないが、その分私がお父様に労いを伝えたいと、そう感じる。
「それで、オーエンス当主はどちらへ?」
「それでしたら……」と二人が話していると、突然入口の扉から爆発音が鳴り響いた、辺りは騒然として王子殿下を守ろうと兵士たちが取り囲み始める。
私は何が起こったのか分からず、状況を把握するよりも先に目の前に黒い人影が現れた。
「コノ国ニ破滅ヲモタラサン」
その人影は黒装束に身を包み、混乱に乗じて私に迫ってきたのだろう。反応する事が出来ずに、次に気がついた時には光る刃を向けられていた。
(なに、これ!?)
私は突然の出来事に目を瞑るしかなかった、斬り込まれると思ったその瞬間、すぐ傍で金属音が響き渡る。私は恐怖心を抱きながらも目を開けると、そこに立っていたのはお父様だった。お父様は、黒装束の敵が持っていた剣を弾き飛ばし、そのまま斬り伏せてしまった。
「大丈夫かエレナっ!?」
「え、あ…あ」
「エレナっ、しっかりしろ!」
その一言に先程まで混乱していた頭が冴えわたる、冷静さを取り戻し周囲を確認すると黒装束の敵は会場を入り乱れるように動き回り、侵入口は入口の大きい扉と四方の窓ガラス割って入ってきていた。
狙いは王子殿下のようで周囲に集まる兵士が守りながらも対処にあたっており、その見た目からは敵の正体は判明できない、敵は揃って黒装束で身を覆い隠しながら剣を振りながら軽やかに会場を動き回っている。
「お父様、これは一体」
「細かい話は後だ、取り敢えずお前は動くな!」
そう言いながらお父様は私たちを守るように戦い続けていてくれてる、お継母様とソフィアは腰が抜けたのかお互いに抱き合うようにしてその場にうずくまっていた。王子殿下は冷静に兵士に指示をしながら、自身も戦いに参戦していた。
こうなってしまえば敵も味方も入り乱れて状況を把握するだけで精一杯ね。冷静になった今、私にも出来ることを考える。
すると天井のガラスドームが激しく割れる音が聞こえる、上を見上げると敵は空からも襲撃を始めたようだ。私は先程までとは違い体が考えるよりも先に動いていた。
「本当に情けない」
先程まで身が竦んでいたのが情けなく感じる、私は一体誰の娘なのだ、誰の背中を追いかけていたのかと。先ほどまでとは違い、歯を食いしばり目線を上げ眼前に迫る脅威に目を向ける。
「私はオーエンス家が長女、オウル・オーエンスの娘!こんな賊なんかに遅れは取らない!!」
敵の正体は見当もつかないが、これ以上お父様に情けない姿は見せることはできない。天に手をかざし、私は魔力を込めて魔法を唱える。
《フレイムジャベリン!!》
炎の槍をいくつも展開させ、空から降ってきた敵に連射していき紅蓮の炎が天上を覆うようにして、迫ってきた敵を足止めする。詠唱を省いたので、威力は控えめだが十分な効力をもたらしていた。
「エレっ、いや……すまない助かった」
「お父様、私は大丈夫です」
それでも敵の勢いは衰える気配が無く場は混乱を極めていた、一度攻め込まれた以上どうしても守りに入ってしまい後手が続いている、お父様も王太子殿下も攻めあぐねている状況に焦りを感じているようにも見えた、この状況を逆転するには私が動くしかない。
『 燃ゆる逆巻く 劫炎一切 我が焔を顕現せよ
この刃に込めた炎 恐れ抱き 業火と共に散れ』
「お、おい……エレナ?」
私の全身を猛り狂う炎が身を包み始める。それをお父様が心配そうにこちらを見つめていた、それもそのはず、お父様にこれを見せた事は無いのだから、私がこの見た目と他に"灰かぶり"と言われる事になった理由の一つ。
「目覚めなさいっ!《灰燼斬刀》」
噴き出す炎が私の右手に収束し一振りの刀を形作っていく。異常を感じたのか敵の視線が私に集まり始めているのを感じたが私は臆することなく姿を整えた刀を強く握りしめ、向かってきた黒装束の敵に向かって振り切る。
その刀は敵の握る剣と一緒に胴体を一刀両断し、その勢いを殺すことなく良く振り切られたその瞬間、眼前の敵は激しく燃え上がり空へと灰が舞い上げられた。
「ひっひぃぃっ」
一人をいとも簡単に屠った事で、周囲の敵に恐怖が伝染したようだ。手前の何人かは震えながら立ち止まっていたが奥から臆せずに数人が飛び込んできた、私は向かってくる剣を溶かし斬りながら、そのまま目に映る敵を全て灰にしていく。
気がつけば王太子殿下を守っていた兵士やお父様がこれを期に場を掌握、一気に押し返していった。そこからは一方的な戦況が続き、こちらは大きな負傷者を出す事なく場を収めた。
落ち着いた私は握っていた刀を炎に還し一呼吸ついた。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
体力的には問題ないが体内の魔力が尽きかけていた、私の中で使える強力な魔法を連発したせいだ。
「エレナっ!大丈夫かっ!?」
驚いた事にお父様が私の元へと駆け寄ってきた、その顔は娘を心配する父親の顔そのものだった。今までに向けられたことのなかった感情に私は戸惑いながらも「私は大丈夫です」と、返事する。
その言葉に安心したのか周囲の確認と兵士を数人引き連れ、この場を後にしたその去り際に「後で屋敷に戻れば話がある」
その時の言葉と表情はいつも通り、私に興味がなかったお父様のままだった。そうしてこの場には私とお継母様とソフィアが取り残されていた、二人は変わらず抱き合ったままその場でうずくまったまま動こうとせずにいた、一応近づいて様子を見に行くと何か呟いているのが聞こえた。
「こんなはずじゃ…ここまでとは聞いてない」
その言葉に耳を疑う。まるで今回の襲撃を事前に知っていたかのような、若しくは手引きをしていたような。何かの聞き間違いかと思い声をかけようとすると、王太子殿下が後ろから声をかけてきた。
「エレナ、ご無事ですか?」
「王太子殿下におかれましても、ご無事で何よりでございます」
「まさか、貴女が"灰かぶり姫"だったとは」
その言葉に緊張が走る。私は昔に魔学の一環で魔獣の実戦討伐に出た事があるが、その際に盗賊に襲われた。身を守るために先ほどの力を振るい、これを退けることに成功したがその際の戦いぶりと、戦闘後に灰を撒き散らしていたことから、この見た目と相まって"灰かぶり姫"と言われる事になった。
その正体が私だと知って王太子殿下は幻滅した事だろう。こんな、淑女とは程遠い私の事を。
「はい、そう呼ばれる事もあります」
「そうか、名乗り遅れてしまったが私の名は【リュシアン・バーン】と申す」
「勿論、存じ上げております」
「それもそうか」
そう言いながらリュシアン殿下は笑いかけていた、向けられたその笑顔には少しばかり幻滅されていないと期待したくなってしまうほどの。
「今宵の礼は追って出すゆえ、今日は帰られるといい。エレナの母君と妹君は帰られたようだしな」
その言葉に振り向くとその場所にいたはずの二人は見当たらなくなっていた、気になる言葉の意味を問いたかったが今日は厳しいだろう。
「お言葉に甘えさせていただきます、王太子殿下。私は此処で失礼させていただきます」
そうして頭を下げながら私はその場をあとにする。会場の外に出ると、アリサが馬車を用意して待っていてくれていた。馬車に乗り込むと全身の力が抜けるかのようにソファに座り込む。
今日一日で色々な出来事が起こりすぎて疲れ切っていたようで、私は窓の外から見える景色に少しの寂しさを覚えながらも屋敷に向かって馬車を走り出してもらう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~
枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。
同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。
仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。
─────────────
※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。
※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。
※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。
崩壊寸前のどん底冒険者ギルドに加入したオレ、解散の危機だろうと仲間と共に友情努力勝利で成り上がり
イミヅカ
ファンタジー
ハートとお気に入り登録、ぜひぜひお願いいたします!
↓簡単なあらすじは''もっと見る''へ!↓
ここは、剣と魔法の異世界グリム。
……その大陸の真ん中らへんにある、荒野広がるだけの平和なスラガン地方。
近辺の大都市に新しい冒険者ギルド本部が出来たことで、辺境の町バッファロー冒険者ギルド支部は無名のままどんどん寂れていった。
そんな所に見習い冒険者のナガレという青年が足を踏み入れる。
無名なナガレと崖っぷちのギルド。おまけに巨悪の陰謀がスラガン地方を襲う。ナガレと仲間たちを待ち受けている物とは……?
チートスキルも最強ヒロインも女神の加護も何もナシ⁉︎ ハーレムなんて夢のまた夢、無双もできない弱小冒険者たちの成長ストーリー!
努力と友情で、逆境跳ね除け成り上がれ!
(この小説では数字が漢字表記になっています。縦読みで読んでいただけると幸いです!)
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる