追放令嬢の叛逆譚〜魔王の力をこの手に〜

ノウミ

文字の大きさ
5 / 37
第一章 灰姫と魔王

episode.04 婚約者について

しおりを挟む
夜会の襲撃事件から数日が経過していた。その間、私は自室から出る事は禁止されており、一人部屋の中で行き場の無い気持ちを巡らせていた。

ため息すら誰にも届かず、置かれている現状にただ何も出来ず。ただ、毎日決まった時間に自室の扉がノックと共に開かれる。

「どうぞ」
「失礼します、エレナお嬢様」

中に入ってきたのはお父様の連れてきたメイドのアリサだった、彼女は食事と間食のティーセットを持ってきてくれて、この数日はアリサとしか言葉を交わしていない。

「アリサ、まだ私は自室から出れないのかしら」
「申し訳ございません、旦那様と奥様からの指示でございますので、どうか沙汰があるまでお待ち下さい」
「そう、ありがとう」

私も閉じ込められている理由を聞かされていない、正直な所あれだけ活躍したのだと思うのだけれど何の沙汰もないのは不思議だと感じる。まるで、誰かの思惑の中に絡め取られているかのような。

この日も食事以外の時間は読書にふけるか、魔法の鍛錬に費やしていた。部屋の中で出来る事といえば限られてくる。

「夜会の日も魔力切れであれ以上は動けなかったからね」

鍛錬の一環として私の課題である魔力燃費の悪さを克服するために、魔力を効率よく体内に循環させる。地面に座り落ち着く姿勢で体内の魔力に意識を向け、ゆっくりと動かし循環させる。

「うぐっ……」

流れが詰まったり悪くなると内から弾けようとする負荷がかかる、これに耐えるか負荷のないように緩やかに魔力を流していく必要がある。

「うぅっ……あっはぁっ」

抑えきれなかった魔力が溶け落ちて行くのを感じた、この鍛錬は昔から続けているが毎度あるラインからが流れを詰めるかのような感覚で襲い、上手くいかない。

「はぁーっ…はぁーっ……ふぅーっ」

気がつけば滝のような汗が流れていた、それだけ体にも負荷がかかっていたこのでしょう。耐えることも出来なければ、上手く流す事もできない。これでは強力な魔法の発現はおろか、発現したとしてもすぐに魔力切れに襲われる。

「お父様にアドバイスがもらえたらいいのにな……」

ついそんな言葉が溢れだしてしまう。甘えることが出来なかった分、夜会の日の出来事が私の我慢していた心を掻き乱す、期待したくないのに期待を寄せたくなってしまう。

「話があるって言ってたのに、部屋にも来てくれない…いつもの事なんでしょうけど」

そんな愚痴を吐いたところでお父様は来てくれない、そんな感情を抱く前に私はもう一度鍛錬に励む。私に出来ることを、機会が巡った時に掴めるように。

それからしばらくして、いつもと違う時間に自室の中にノックが響いいた。

「はい」

私はそう答えるとアリサが入ってきた。

「あら、食事の時間ではないでしょう」
「はい、旦那様と奥様がお呼びです」
「えっ」

私は思わず座っていた椅子から立ち上がる、ようやくお父様と話せる機会が巡ってきたからだ。お継母かあ様と一緒にという所が少し気になるが、私の置かれている現状を確認しないといけない、何故にも自室に軟禁されなければならなかったのかと。

「分かったわ、すぐに行くと伝えてちょうだい」
「かしこまりました」

そういえばアリサはあんな雰囲気だったかしら、夜会の日に身支度を整えてくれた時にはもう少し明るかった気がするのは、気のせいでしょうか。だが、それよりも私には確認するべきことがある。急いで着替えを済まし、呼ばれた大部屋に向かって自室を出ていく。

いつもと違って静まり返った廊下、歩き慣れた屋敷の中だというのに大部屋まで遠く感じる。何を言われるか分からない恐怖なのか、久々に会える高揚感なのかは分からない。

私としては夜会の功績を褒めて欲しい所ではあるが、お継母かあ様もご一緒にいらっしゃるのであれば、あまり良い話ではない気がする。気を紛らわせようと後ろをついてくるアリサの方を振り向いてみるが、下を俯いてこちらを見ようともしない。そこがまた少し寂しさを感じさせる。

大部屋の前に着くと扉をノックする、中から声が聞こえたのを確認して扉を開ける。部屋の中にはお継母かあ様にソフィア、お父様が座りながらこちらに視線を向けており、部屋の隅にはセブンスが立っており隣にアリサが移動していた。

「遅くなりました」と一言添えて頭を下げる、部屋の中に案内されたので私はお父様と向き合うような形でソファに腰掛ける。

「あらお異母姉ねえ様、しばらく姿を見ないと思っていたら何処で何をしていたのかしら?」
「ソフィア、静かにしなさい」

お父様が制止しようとするが、ソフィアを話し始めた口を止めなかった。

「いいじゃない、せっかく王太子殿下が連日会いに来てくださっていたのに姿も見せず……「ソフィアっ」
「はーい、お父様。静かにしてまーす」

リュシアン王太子殿下がこの屋敷に来ていたと、私はそんな事も知らずに自室に籠もっていた。ソフィアの口ぶりからするに何度か接触しているのだろう、もしかして私も呼ばれたのは王妃の選定を決められた報告の為でしょうか、そして私は選ばれずに……。

「ふふっ、可哀想な可哀想なお異母姉ねえ様だこと」

そう呟く言葉に誰も反応しなかった、私もどこかで諦めていたのかもしれない。私が選ばれるはずがないのだからって、夜会の日も淑女らしからず

こんな私より、ソフィアのような可愛らしい女性の方が好まれるでしょう、性格は多少あれだとしても。

「ごほんっ、話を始めようか」

そうしてお父様が場の空気を流し直す、今回全員が呼ばれた理由について話し始める。

「まずはエレナ、夜会の日はありがとう。おかげで沢山の人が救われた事だろう」
「いえ、私ごときの力は些細なものでしたので」
「その話はまた後ほどしようか」
「えっ?「それでお父様っ、王妃は決まったの!?」
「そうですわ貴方、何度か屋敷にお越しになられてる際にお話を重ねていらっしゃったでしょうから、
「分かった、話を戻そうか」

お父様がそう告げると場が張り詰める、分かっている事でも緊張するものなのね。私はあまり良い面持ちではなく、下に俯きながらお父様の話を聞く。

「今回、リュシアン王太子殿の王妃として婚約者の指名を受けたのは……、お前だ」

その言葉に全員が言葉を失っていた、私も下を俯きながらも気を失ったかのように呆然とし、話を聞いていたが顔を上げるどころではなかった。

「っ!?」「はぁっ!?」

二人の慌てた言葉に我に返り、私は顔を上げる。お継母かあ様は瞳孔が開き驚きを隠せていない様子で、ソフィアも声を荒げながら机を叩き立ち上がった。それでも私は、言葉の意味が読み込めずに何も言葉に出来なかった。あの私が、婚約者としてって。

「お父様っ!何かの間違いでしょう??この灰被りが王太子殿下の婚約者にって」
「そうよ貴方、何かと間違えてるのではなくて?」
「そうよ!あれだけ楽しく過ごしていたのよ、王太子殿下だって私の事が素敵だって言ってくれたのよ!?」

ソフィアはお父様に掴みかかりそうな勢いで迫るが、冷静に話を続ける。

「何も間違えてないし、エレナを婚約者にと」
「お、お父様。よろしいでしょ「黙りなさいよ灰かぶりがぁっ!」
「なんだ、エレナ」

お父様は冷静にソフィアを気にしないようにしながら私の方に向き直る、後ろで変わらずソフィアが何か喚き散らしているがその真剣な眼差しに押されて、ようやく私も冷静になり自分の気持ちを話せるように、頭の中が整理されていた。

「何故、私なのでしょうか。見た目もお世辞にも良いとは思えないですし、灰かぶりと皆に揶揄されております。それに王太子殿下とお会いしたのは夜会の日が初めて、それ以降はお会いすらしていないです」
「ほら、お父様!エレナもこう言っていますわ、王妃には私の方が相応しいでしょう!ねぇ、お異母姉ねえ様??」
「エレナ、お前の気持ちを教えてくれ」

「私は……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

処理中です...