ほしくずのつもるばしょ

瀬戸森羅

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おはなし

むこうは明るい

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 気がつけば僕は、真っ暗な夜道を歩いていた。
 誰もいない。
 建物はあるのに明かりがついていない。
 人が生活しているはずの空間に、人の気配がない。
 それがなんだかとても不気味だった。
 しばらくその暗闇を、月の明かりだけを頼りに歩いた。
 真っ赤な月だ。
 綺麗というよりはもはや美しすぎるというくらいだ。
 その妖艶な月明かりが、誰もいない街に影を作る。
 僕はその影を避けるように、ただ道の真ん中をひたすら月の方へ歩くのだった。
 そうしていると、大きな川が流れていて、橋がかかった道にたどりついた。
 橋の先には、明るく賑やかや街並みが浮かんでいる。
 ようやく帰ってこれた。
 僕は安堵してほうっと息を吐いた。
 そうして、大きな橋を渡ろうとしたところで異変に気づいた。
 やけに人が多いのだ。
 賑やかな街には建物が多く、その窓には明かりが灯っているものだが、その全てから人がこちらを覗いているようなのだ。
 僕はゾッとした。
 ここを通るくらいなら戻った方がマシなのではないか。
 そう思って踵を返し、もと来た道を引き返した。
 すると、すぐ耳元で声が聞こえた。
 もう少しだったのに。
 僕は振り返らずに歩いた。
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