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1章「はじめまして、相棒」
1「どっちもコミュ障」
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「・・・・・・・・・・」
思いがけない言葉であったのか、無表情にこちらを見返す獣。
「・・・・・・・・・・食べないの?」
見つめ合いに耐え切れず、思わず聞いてしまった。
「・・・なんだ、お主は喰われたいのか」
少し呆れたように面白そうに聞き返される。
「食べられたい訳じゃない、よ」
そう。別に死にたい訳ではない。死にたいと思ったことなど山ほどあるけれど。
ただ、この綺麗な獣なら、一口で食べてくれそうだなと思ってしまったのだ。
特段、生きていたって何もないのだ。
「お主、何て言った」
「・・・・え?」
反応が遅れてしまった。
「・・・・・」
目を合わせられる。顔がおりてくる。同じ視線で見つめ合う。
「食べられるのかと思ったの。でも、」
「違う」
「違う?」
話が噛み合わない。困惑したように獣を見つめると、目を逸らしながらこぼした呟きが聞こえた。
「言っただろう。我のことを。」
ああ。そういうことか。
「綺麗と?うん、言った」
「・・・・・・変な人間だな」
長い沈黙の後にしみじみと言われた。褒めたのに、この獣はなんてやつだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙が続く。目を合わせながら。
目も綺麗だなとぼんやりと見つめ返す。
「人間、名前は何だ」
「えっと、言ったら呪われるとか?」
おずおずと確認する。人でない者に名前を言って良いことにつながった経験はあんまり無い。
「はっ、お主ごとき呪わんでもどうにでもできるわ」
鼻で笑いながら見下してくる獣。しかし、それもそうだなという感想が生まれた。この獣がその気になれば、きっと私が神社に入ったときにはもう食べられていただろう。
「・・・・小夜」
「・・・・・・・・・・」
人の名前に反応しにくいのはわかるけれど、何も言われないと流石に気まずい。そういえば、人でない者達にも名前はあるのだろうか。これまで自己紹介なんてしたことなかった。
「おい」
そもそも、会話がまともに成り立ったこともない。一方的に関わるか、無視されるか。そう思うとこの獣はお喋りなのかもしれない。
「おい、小夜!」
「っえ?」
思考がそれていたので驚いた。驚きすぎて、反応が遅れてしまった。
名前を呼ばれるなんて、久しぶりだから。
とりあえず、何も聞いていなかったことに対して謝罪をする。
「ごめんなさい、何?」
「我の話を聞かないとは・・・・いい気になるな。人間。お前などすぐに喰らってやる。」
機嫌を損ねた獣は、目を細めつつ低い声で脅すように言った。空気が、大気が震える。獣の毛が逆立つ。思えば、鳥の声も虫の音もない。獣の存在に怯えているのであろう。
張りつめた空気の中。
「それもいいかな」
ぽろっとこぼれてしまった。それもいいかなと思ってしまったから。
「っち、ただの死にたがりか」
脅し文句にならなかったことが不愉快なのか、より一層ピリピリとした空気を感じる。複数の尾が揺れている。ギシギシと神社の屋根から音が聞こえる。まとわりつく気配が重たい。
「死にたがりでは、ないよ。ただ・・」
自殺を試みたことはない。死にたがっているわけではない。
「・・・・なんだ」
ただ、思ってしまっただけなんだ。
「綺麗だったからそれもいいかなって」
それだけの理由。出会った一瞬、目が奪われたから。白銀に輝く毛並に。瞳に。その気高い気配に。
思えば、生きている理由もないのだから、死ぬ理由だってそれくらい単純な理由でも良いんじゃないか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ピリピリとした空気は霧散し、獣は目を見開いた。
意外と表情が豊かなことに気づく。ぼんやりと思考を飛ばしながら獣の表情を観察する。
だから、またしても獣の言葉に対して反応が遅くなってしまった。
「お主・・・・この世界に未練はあるのか」
「っえ?」
思いがけない言葉であったのか、無表情にこちらを見返す獣。
「・・・・・・・・・・食べないの?」
見つめ合いに耐え切れず、思わず聞いてしまった。
「・・・なんだ、お主は喰われたいのか」
少し呆れたように面白そうに聞き返される。
「食べられたい訳じゃない、よ」
そう。別に死にたい訳ではない。死にたいと思ったことなど山ほどあるけれど。
ただ、この綺麗な獣なら、一口で食べてくれそうだなと思ってしまったのだ。
特段、生きていたって何もないのだ。
「お主、何て言った」
「・・・・え?」
反応が遅れてしまった。
「・・・・・」
目を合わせられる。顔がおりてくる。同じ視線で見つめ合う。
「食べられるのかと思ったの。でも、」
「違う」
「違う?」
話が噛み合わない。困惑したように獣を見つめると、目を逸らしながらこぼした呟きが聞こえた。
「言っただろう。我のことを。」
ああ。そういうことか。
「綺麗と?うん、言った」
「・・・・・・変な人間だな」
長い沈黙の後にしみじみと言われた。褒めたのに、この獣はなんてやつだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙が続く。目を合わせながら。
目も綺麗だなとぼんやりと見つめ返す。
「人間、名前は何だ」
「えっと、言ったら呪われるとか?」
おずおずと確認する。人でない者に名前を言って良いことにつながった経験はあんまり無い。
「はっ、お主ごとき呪わんでもどうにでもできるわ」
鼻で笑いながら見下してくる獣。しかし、それもそうだなという感想が生まれた。この獣がその気になれば、きっと私が神社に入ったときにはもう食べられていただろう。
「・・・・小夜」
「・・・・・・・・・・」
人の名前に反応しにくいのはわかるけれど、何も言われないと流石に気まずい。そういえば、人でない者達にも名前はあるのだろうか。これまで自己紹介なんてしたことなかった。
「おい」
そもそも、会話がまともに成り立ったこともない。一方的に関わるか、無視されるか。そう思うとこの獣はお喋りなのかもしれない。
「おい、小夜!」
「っえ?」
思考がそれていたので驚いた。驚きすぎて、反応が遅れてしまった。
名前を呼ばれるなんて、久しぶりだから。
とりあえず、何も聞いていなかったことに対して謝罪をする。
「ごめんなさい、何?」
「我の話を聞かないとは・・・・いい気になるな。人間。お前などすぐに喰らってやる。」
機嫌を損ねた獣は、目を細めつつ低い声で脅すように言った。空気が、大気が震える。獣の毛が逆立つ。思えば、鳥の声も虫の音もない。獣の存在に怯えているのであろう。
張りつめた空気の中。
「それもいいかな」
ぽろっとこぼれてしまった。それもいいかなと思ってしまったから。
「っち、ただの死にたがりか」
脅し文句にならなかったことが不愉快なのか、より一層ピリピリとした空気を感じる。複数の尾が揺れている。ギシギシと神社の屋根から音が聞こえる。まとわりつく気配が重たい。
「死にたがりでは、ないよ。ただ・・」
自殺を試みたことはない。死にたがっているわけではない。
「・・・・なんだ」
ただ、思ってしまっただけなんだ。
「綺麗だったからそれもいいかなって」
それだけの理由。出会った一瞬、目が奪われたから。白銀に輝く毛並に。瞳に。その気高い気配に。
思えば、生きている理由もないのだから、死ぬ理由だってそれくらい単純な理由でも良いんじゃないか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ピリピリとした空気は霧散し、獣は目を見開いた。
意外と表情が豊かなことに気づく。ぼんやりと思考を飛ばしながら獣の表情を観察する。
だから、またしても獣の言葉に対して反応が遅くなってしまった。
「お主・・・・この世界に未練はあるのか」
「っえ?」
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