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第9話 夜這いか?
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ああ、やっぱりやめれば良かった……。
カレンは今、心の底からそう思っていた。
同じベッドに入っていざ寝るとなると、なぜか心臓がバクバクいってまったく寝られそうにない。
馬に乗っている時より離れているのにどうして!?
と横を見ればエリックはスヤスヤと眠っている。
ううっ。私だけ気にして眠れなかっただなんて格好悪すぎる!!
カレンは横を向いてエリックに背を向けると目を閉じた。
早く眠らなきゃと、思えば思うほど、なかなか寝付けず、エリックが寝返りしてシーツが擦れる音に敏感に聞き耳を立ててしまう。
ふと、月明かりに気が付いてカレンはそっと布団から出ると窓から月を眺めて、その光に手をかざした。
満月の夜にエリック王子に加護を授ける儀式をしたけれど、私は本当にエリック王子に加護を授ける事が出来るようになったのかしら……?
これから、今日みたいに魔獣と戦う事だって増えて、怪我をする事だってあるわ。もしその時、私の加護の力が効かなかったら?
カレンは急に不安になり、寝ているエリックの顔を覗き込んだ。
「どこか傷がある所ないかしら?」
カレンは小さくそう呟くと、顔中をくまなく見ていく。
というか、本当に綺麗な顔ね。シミ一つ見当たらないわ。
するとカレンは、エリックが被っている布団に手を掛けようとしたが、そこでガシッと腕を掴まれた。
「夜這いか?」
カレンの腕を掴んだのは寝ていたはずのエリックだった。
「な、な……!?」
カレンは口をアワアワとさせ、顔を赤くする。
そんなカレンをエリックはニヤリとした顔で見ると、掴んでいる腕をグイッと引いてカレンをエリックの上に倒れ込ませた。
「魔王を倒す為だけの結婚じゃなかったのか?」
耳元でそう意地悪く囁いたエリックに、カレンの顔は更に赤くなり、ガバッとエリックの上から起き上がった。
「そ、そそそうよ!だから、ちゃんと傷を癒せるかどうか確かめたくて……」
真っ赤な顔で弁解するカレンにエリックは意地悪く微笑んだ。その顔にエリックは最初から全部分かっていてからかっているんだと悟った。
「もう!最初から起きてたんでしょ!?人の事をからかって、最低よ!!」
カレンは手近にあった枕でエリックを叩いた。
そして、あまりの恥ずかしさに何故か涙が滲む。
「ハハッ。悪かったよ。ちょっと寝たふりしてただけだろう?そんなに怒るなよ」
と枕をどけながら顔を出したエリックと目が合って、涙を見られまいとカレンは即座に顔を逸してソファへ向かった。
「私はこっちで寝るから」
振り返る事なく、そう言うとカレンはそのままソファに横になる。
「なんだよ?怒ったのか?」
カレンのその様子にエリックもベッドを降りて、ソファへやってきた。
「元はといえば、カレンが俺の布団を剥いで来ようとしたんだろう?そんなに怒らなくても……」
背もたれの方を向いてソファに寝転ぶカレンの顔を覗いたエリックは、必死で赤い顔と目元を隠すカレンに息を呑んだ。
「見ないで!」
そう言ったカレンの声は少し鼻声だった。
「からかって悪かった……」
エリックはそう言ってカレンの身体にシーツを掛けてやると、静かにベッドへ戻っていった。
カレンは恥ずかしいのか悔しいのかなんだか分からない涙を流しながら、いつの間にかソファで眠ってしまっていた。
カレンは今、心の底からそう思っていた。
同じベッドに入っていざ寝るとなると、なぜか心臓がバクバクいってまったく寝られそうにない。
馬に乗っている時より離れているのにどうして!?
と横を見ればエリックはスヤスヤと眠っている。
ううっ。私だけ気にして眠れなかっただなんて格好悪すぎる!!
カレンは横を向いてエリックに背を向けると目を閉じた。
早く眠らなきゃと、思えば思うほど、なかなか寝付けず、エリックが寝返りしてシーツが擦れる音に敏感に聞き耳を立ててしまう。
ふと、月明かりに気が付いてカレンはそっと布団から出ると窓から月を眺めて、その光に手をかざした。
満月の夜にエリック王子に加護を授ける儀式をしたけれど、私は本当にエリック王子に加護を授ける事が出来るようになったのかしら……?
これから、今日みたいに魔獣と戦う事だって増えて、怪我をする事だってあるわ。もしその時、私の加護の力が効かなかったら?
カレンは急に不安になり、寝ているエリックの顔を覗き込んだ。
「どこか傷がある所ないかしら?」
カレンは小さくそう呟くと、顔中をくまなく見ていく。
というか、本当に綺麗な顔ね。シミ一つ見当たらないわ。
するとカレンは、エリックが被っている布団に手を掛けようとしたが、そこでガシッと腕を掴まれた。
「夜這いか?」
カレンの腕を掴んだのは寝ていたはずのエリックだった。
「な、な……!?」
カレンは口をアワアワとさせ、顔を赤くする。
そんなカレンをエリックはニヤリとした顔で見ると、掴んでいる腕をグイッと引いてカレンをエリックの上に倒れ込ませた。
「魔王を倒す為だけの結婚じゃなかったのか?」
耳元でそう意地悪く囁いたエリックに、カレンの顔は更に赤くなり、ガバッとエリックの上から起き上がった。
「そ、そそそうよ!だから、ちゃんと傷を癒せるかどうか確かめたくて……」
真っ赤な顔で弁解するカレンにエリックは意地悪く微笑んだ。その顔にエリックは最初から全部分かっていてからかっているんだと悟った。
「もう!最初から起きてたんでしょ!?人の事をからかって、最低よ!!」
カレンは手近にあった枕でエリックを叩いた。
そして、あまりの恥ずかしさに何故か涙が滲む。
「ハハッ。悪かったよ。ちょっと寝たふりしてただけだろう?そんなに怒るなよ」
と枕をどけながら顔を出したエリックと目が合って、涙を見られまいとカレンは即座に顔を逸してソファへ向かった。
「私はこっちで寝るから」
振り返る事なく、そう言うとカレンはそのままソファに横になる。
「なんだよ?怒ったのか?」
カレンのその様子にエリックもベッドを降りて、ソファへやってきた。
「元はといえば、カレンが俺の布団を剥いで来ようとしたんだろう?そんなに怒らなくても……」
背もたれの方を向いてソファに寝転ぶカレンの顔を覗いたエリックは、必死で赤い顔と目元を隠すカレンに息を呑んだ。
「見ないで!」
そう言ったカレンの声は少し鼻声だった。
「からかって悪かった……」
エリックはそう言ってカレンの身体にシーツを掛けてやると、静かにベッドへ戻っていった。
カレンは恥ずかしいのか悔しいのかなんだか分からない涙を流しながら、いつの間にかソファで眠ってしまっていた。
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