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 旧校舎の図書館――

 ここは、ほとんど生徒が来ない事から、学園内で二人がゆっくりと話す事ができる場所であった。

「また、転生者の話をしていたのか?」

 向かい合った本棚の狭い通路で、本を選ぶフリをしていたルドルフは、本を選ぶエリーナの様子を伺いながら、話しかけた。

「ええ。リヴァイ先生が転生者だったの。それで、今日の授業は、いかに転生者の恋が素晴らしいかの熱弁よ」

 エリーナは、苦笑いをすると本を選ぶ手をおろして、本棚を背にするよう振り返ると、下を向いた。

「それから……、まだ秘密みたいだけどルアナ嬢も転生者だった……」

「え!?」

 これには、ルドルフも驚きを隠せないでいた。

「嘘だろ!?じゃあ、アランは……」

「婚約破棄になるかもしれないわ……。今はルアナ嬢の要求をラミエス伯爵が止めているみたいだけれど、時間の問題よね……」

 エリーナは、会うといつも、ルアナの事を照れながら話してくれるアランの顔を思い出し、唇を噛み締めた。
 そんなエリーナを慰めるように、ルドルフはエリーナの頭に優しく手を2回置いた後、その手でエリーナを優しく抱き寄せた。

「はあ……そうか……。それにしても、最近ますます、転生者が増えてきたな……」

 そう言いながら、ルドルフはエリーナを横目で見る。
 それに気付いたエリーナは、少し意地悪な顔になり、首を傾げて、ルドルフを見上げた。

「あら、私も転生者になるんじゃないかって心配?」

「あ、いや……」

 とルドルフは、焦ったように視線を空中に彷徨わせた後、抱き締めていたエリーナを離すと、しっかりとその目を見つめて言った。

「エリーナ、俺は何があってもエリーナへの気持ちは変わらないし、エリーナにもそう思ってもらえたらって思ってる」

 こうやってちゃんと思いを伝えてくれる所も彼の良い所だ。

 ルドルフの赤い瞳が揺れて、私の答えを欲しがっているのが分かる。

「ええ。ルドルフの気持ちはちゃんと分かっているわ。私も同じ気持ちよ」

 エリーナが笑みを浮かべて答えると、ルドルフの腕が再びエリーナを優しく抱きしめた。

 フワリと鼻をくすぐるルドルフの香りと、包まれた暖かさにエリーナが心地よさを感じていると

「エリーナ……」

 と囁くルドルフの声がエリーナの耳に切なく響いた。

 何を不安に思っているのかと、エリーナは小さく笑みを溢すと、ルドルフの背中に腕を回して、そっと彼の胸に頭を傾けた。

 こんなに好きなのに、たとえ前世の想い人を思い出したとしても、この気持ちがなくなるなんて、絶対にあり得ないわ。
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