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しおりを挟む痛い……苦しい……熱い……息ができない……
夢の中のはずなのに、どうしてこんなにも苦しいの――
ぼやけた視界は、上り立つ赤い炎を見つめていた。
ズキズキと痛む胸には、短剣が刺さっており、ドレスを赤く染めている。短剣の柄の部分にはアヴィリアス帝国の紋章が刻まれていた。
あれ、私……死ぬの……?
そして、倒れている私を抱きかかえている誰か……でも顔はよく見えない。
あなたは、誰……?
◇
――――ハッと目が覚めた。
「はあ、はあ、はあ……」
呼吸が荒れていて、急いで胸元に手を置くが、そこには何も刺さっておらず、いつものヴィルター公爵家の自室のベッドの上である事にエリーナは、胸をなでおろす。
「はあ……はあ……はあ……、夢……か……」
それにしても、やけにリアルな夢……。
炎の熱さも焼け焦げる匂いも……私の胸を突き刺す短剣の痛みも……全て本物のように感じた……。
エリーナは、震える手を自身の手でギュッと握る。
「まさか……、私も転生者……、なの?」
いいえ、でも、それならこの断片的な記憶はなに?
記憶を取り戻す時って、一瞬で蘇るって聞くし。それに、私は前世の誰かと会って記憶を取り戻したわけでもない。だから、今のは前世の記憶なんかじゃないはずよ……うん。
エリーナは、そう自分に言い聞かせるも、言いようのない不安が広がる。
転生者が前世の記憶を思い出すのは、前世の恋人や夫婦に再会した時が大半である。しかし、少数ではあるが、全ての転生者が愛する人と添い遂げる為に転生者となるわけではないようなのだ。
有名なのが、ジェフ・マカロッカ公爵子息。
彼は子供の頃に前世の記憶を思い出した。それは、自身がスマラ王国の国王であったという記憶だったそうだ。彼は、その当時、国を拡大する事に躍起になっており、国民の事を考えず戦争をした事を深く悔いていた。
そして、現世でアヴィリアス帝国の公爵家に産まれた事に縁を感じたジェフは、政治経済を改めて学び直し、貴族学園に通いながら、現在帝国の宰相を務める父親マカロッカ公爵の手伝いもしている。
もしかしたら、私の前世にもジェフ公爵子息のように恋愛とは関係のない所で、後悔があるという事?
それなら、私だってジェフ公爵子息のように帝国の為になる事ならば、その思いを帝国の為に役立てたいとは思う。
でも……、もしそうでなければ……?
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