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「レイア王女様、おはようございます」

 起こしに来た侍女の声に意識が眠りから呼び戻された。

 何だろう……、凄く懐かしい夢を見ていたと思うけれど、どんな夢だったか覚えて居ないわ。とても心が暖かくて、でも切なくて、そんな気持ちだった……。

「レイア王女様、どうされましたか?よく眠れなかったのでしょうか?」

「いいえ、そんな事ないわ」

 レイアは微笑むと侍女達が支度をしやすいように立ち上がった。




「レイア王女様、おはようございます」

「おはよう」

 支度を終えて部屋を出たレイアを待ち構えていたのは、昨日から護衛騎士となったハンスであった。

 いい!いいわ!朝からハンス様を拝めるなんて最高よ!

 レイアは今朝の物悲しい気持ちなど吹き飛んで、目の前のハンスにテンションが上がる。
 食堂までの道をハンスを引き連れて歩くと、その様子はすぐに使用人達の噂になった。

「レイア王女様の護衛騎士の方が新しい方になってるわ!」
「クールそうだけど、またそこが真面目な感じで素敵だわ!」
「なんでもホステン侯爵子息らしいわよ」
「まあ!そうなの?」

 フフフッ。そうなのよ!ハンスは格好いい上に侯爵子息で、しかも剣術の腕前も凄いのよ!

 とレイアは少し得意気になりながら、ハンスを連れ歩いた。

 お母様とお兄様と朝食を食べていると、お母様が聞いてきた。

「レイア、今度の舞踏会フォシェーン王国の王子と王女をお迎えするのだけれど、ドレスは決まったのかしら?」

「ええ。今日、完成品を試着する予定よ」

「そう。なら良かったわ」

 お母様がニッコリと微笑んだ。

 知ってる。知ってるわ。この舞踏会は私とフォシェーン王国の王子、エルスト王子を近付けるためだって事は!でもお母様ごめんなさい!私、この舞踏会でハンス様に恋するんです!
 でも代わりにお兄様が……ね?

 レイアは意味深な笑みを浮かべて、兄のヴィンセットを見た。

「なんだ?レイア。俺にもドレスを着た所見せてくれるのか?」

「あら、お兄様。時間があるのならぜひお願いしたいわ」

「あー、そうしてやりたいが、今日は来客が多くてな」

 すると、お兄様は私をニヤッとして見てきた。

「レイア、今のお前を最高に彩るドレス選べよ」

「?言われなくても分かっているわよ?」

 珍しいわね。お兄様が私のドレスになにか言ってくるなんて。

 レイアのこの時のヴィンセットの言葉を深く考える事はなかった。

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