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第1話 伯爵令嬢の密かな趣味
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シルヴィア・プレーヘムは、建国時から続く由緒ある伯爵家の令嬢である。
ブロンドヘアにエメラルドグリーンの瞳の美しい顔立ちが評判の令嬢だ。故に舞踏会に参加すれば、ダンスの誘いは後を立たない――
「シルヴィア様、今日もなんとお美しい」「流石、プレーヘム伯爵家のご令嬢です」「シルヴィア様、今日こそは僕とダンスを」「いいや、私と先に踊って下さい!」「なんだと!?俺が先に声を掛けたんだ!」「いいや、俺はプレーヘム伯爵様とも面識があって……」
シルヴィアは、毎度こうして言い争う男達に少々ウンザリしていた。
はあ……。また始まった。
シルヴィアはため息をつき、争う男達から視線を外すと舞踏会のホールを見渡した。
すると同じように女性に囲まれた男性が見える。
フレシアム公爵家の令息、エドワルド・フレシアムだ。
サラリとした黒髪に、吸い込まれそうな碧い瞳の端正な顔立ちの彼も、舞踏会では女性の誘いが後を立たない。
あちらも大盛況ね……。
シルヴィアとエドワルドは同じ舞踏会で会えば挨拶程度は交わすが、特に親しい間柄ではなかった。しかし、同じように異性に囲まれるという状況にシルヴィアは少しだけ親近感を抱いていた。
ただ、そんな女性に人気のエドワルドとまさかあんな場所で会うことになるとは思いもしなかったが――
◇
舞踏会から帰ったシルヴィアは、寝間着のワンピースに着替えて、ベッドに腰掛けていた。
「それではお嬢様お休みなさいませ」
「ええ、おやすみ」
侍女が出て行くのをしっかりと見届けたシルヴィアは、スクッと立ち上がると意気揚々に机に近付き、引き出しを開けて奥に仕舞ってある本を取り出した。
「フフッ。やっと読めるわ!ミリアーム先生の本!」
シルヴィアは椅子に座ると嬉しそうに本の表面をなぞった。
表紙には「あなたの瞳に焦がれて」作者ミリアームと書かれている。
シルヴィアは、その本を開くと熱中して読み始めた。
シルヴィアの密かな趣味……それは、平民の間で流行っている恋愛小説を読む事だった。ただ、貴族の令嬢が俗物を読んでいるなんて知られるわけにはいかない。だから、シルヴィアは誰にも知られぬよう一人になれるときにこっそり読んでいるのだった。特にお気に入りなのが、ミリアーム作の「あなたの瞳に焦がれて」という小説のシリーズであった。
今まで2冊のシリーズが出ており、舞台は架空の国に住む人々の恋愛の話が描かれている。第一巻は、王女様と護衛騎士の恋愛。第二巻は王子様と平民女性の恋愛の話が綴られていた。
シルヴィアは、もう何度も読んだ第一巻をしばらく夢中で読んでいると、パタンと本を閉じて寂しそうに本を抱き、机に頭を載せてため息をついた。
「はあ。ミリアーム先生……。私も恋してみたいです……」
名門伯爵家の娘に生まれたからには、小説のような恋い焦がれる恋愛をする事が、叶えられない夢である事をシルヴィアはよく分かっていた――
ブロンドヘアにエメラルドグリーンの瞳の美しい顔立ちが評判の令嬢だ。故に舞踏会に参加すれば、ダンスの誘いは後を立たない――
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「フフッ。やっと読めるわ!ミリアーム先生の本!」
シルヴィアは椅子に座ると嬉しそうに本の表面をなぞった。
表紙には「あなたの瞳に焦がれて」作者ミリアームと書かれている。
シルヴィアは、その本を開くと熱中して読み始めた。
シルヴィアの密かな趣味……それは、平民の間で流行っている恋愛小説を読む事だった。ただ、貴族の令嬢が俗物を読んでいるなんて知られるわけにはいかない。だから、シルヴィアは誰にも知られぬよう一人になれるときにこっそり読んでいるのだった。特にお気に入りなのが、ミリアーム作の「あなたの瞳に焦がれて」という小説のシリーズであった。
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シルヴィアは、もう何度も読んだ第一巻をしばらく夢中で読んでいると、パタンと本を閉じて寂しそうに本を抱き、机に頭を載せてため息をついた。
「はあ。ミリアーム先生……。私も恋してみたいです……」
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