【完結】名門伯爵令嬢の密かな趣味〜公爵令息と趣味友になりました〜

花見 有

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第7話 友達辞めたりしませんか?

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 舞踏会の帰り道、馬車の中は重苦しい空気に包まれていた。
 シルヴィアは、向かいに座るエドワルドをチラリと見るが、すぐに視線を彷徨わせて、また下を向いた――


 舞踏会でユディスは、ダンスを踊り終わってもシルヴィアの手を離そうとはしなかった。

「シルヴィア嬢、もう少し君とじっくり話したいんだけど、一緒に来てくれない?」

 ユディスはシルヴィアの顔を覗くように見てきた。

「え?ええと……」

 どうしよう。断るわけにはいかないわよね……

 ユディスの更なる誘いにシルヴィアが戸惑っていると、ユディスの手首をエドワルドが掴んだ。

「ユディス、その辺にしろよ。彼女が困ってる」

「なんだよ、エドワルド。怖い顔しちゃって。まあ、いいや、また今度ね」

 とユディスはシルヴィアから手を離すと、ヒラヒラと手を振った。

「あの、エドワルド様……」「シルヴィア嬢、今日はもう帰った方が良さそうだ。送らせてくれないか?」

 見れば、周りは私達の動向を興味津々でみている。

「え、ええ。お願いします」

 注目が集まりすぎて、とてもじゃないけど、このままここにはいられないから有り難いけど……。

 エドワルド様は先程から怒っているのか、眉間に皺を寄せて厳しい顔をしていた。

 こうして、シルヴィアはエドワルドに連れられてフレシアム公爵家の馬車に乗ったのだが、馬車の中の二人の間には、重苦しい空気が流れていた。

 何も話さず、怒った様子のエドワルドにシルヴィアも何と声をかけていいのか分からずにいる。

 エドワルド様はどうして怒っているのかしら?まさか、私が何かしてしまった?不味いわ。このまま友達を辞めるとでも言われてしまったらどうしよう……。

 シルヴィアの心には言いようのない不安が広がる。

 そんなの駄目よ。謝らないと……よし!

「エドワルド様……。私、何か怒らせる事をしてしまいましたか?ごめんなさい。自分ではよく分からなくて……。嫌な所があるのなら教えて下さい。私、エドワルド様とはずっと友達でいたいんです……」

「え!?いや、違うんだ!シルヴィア嬢は何も悪くない!」

 エドワルドは、焦って言った。

「では、どうして先程から難しい顔をしてずっと黙っているのですか?」

「それは……」

 エドワルドは頬を染めると照れくさくて手で口を覆った。

「シルヴィア嬢がユディスと踊ってるのが面白くなくて……」

 それを聞いたシルヴィアは、頬を赤らめて震える声で答えた。

「す、すみません。私のダンスが下手で殿下に恥を……」

「え!?違う!違う!むしろ、お似合いで……妬けたというか……」

「え?」

 最後の方が小さくて、良く聞こえなかったわ。

「とにかく、シルヴィア嬢は何も悪くないし、俺は怒ってもいないから!」

「本当ですか?私と友達辞めたりしませんか?」

「とも……だちも辞めたりしないから安心してくれ」

 それを聞いて、シルヴィアはホッと肩の力を抜いた。

「ああ、良かった。私、エドワルド様に嫌われたかと思いましたよ」

「そんなわけないだろ?あ、例の本も借りてあるから、近い内にまた家に招待するよ」

「まあ!本当ですか!?楽しみにしてます!」

 二人のわだかまりも溶けた所で、ちょうど馬車はプレーヘム伯爵邸に到着した。エドワルドが最初に降りると、シルヴィアに手を差し出し、馬車から降ろした。

「また、手紙をおくるよ」

「ええ、お待ちしています」

「それじゃあ……」
 とエドワルドは馬車に戻ろうとして、振り返るとシルヴィアを真っ直ぐに見つめた。

「今度は……俺とダンスを踊って頂けますか?」

「ええ、喜んで」

 シルヴィアが返事をすると、エドワルドは嬉しそうに微笑み馬車に乗って帰って行った。

 エドワルド様もダンスが踊りたくて機嫌が悪かったのね。言って下されば、踊ったのに……。っていっても今日はもうあの場には居られなかったか……フフッ。

 シルヴィアは、エドワルドが不機嫌だった理由が分かって、上機嫌で屋敷へ入ると、そこには父であるプレーヘム伯爵が待ち構えていた。

「お父様、只今戻りました」
「ああ、おかえり。シルヴィア、話があるから着替えたら書斎に来なさい」

 お父様はそう言うとニヤリとして、書斎へと行ってしまった。

 いつになく機嫌が良さそうね。今日は大事な話し合いがあるとか言っていたから、お仕事が上手く行ったのかしら?

 シルヴィアは、いつになく上機嫌な父親を少し不思議に思いながらも、着替えて書斎へと向かった。

「お父様、お待たせしました。話というのはなんでしょうか?」

 シルヴィアが書斎に入ると、伯爵は待ち構えていたかのようにニヤリとした。

「おお、シルヴィア。やっと来たか。実はな……、お前の婚約が決まったんだ」

 ああ、ついに来たか……

 いつかはこう告げられる日がくるって分かってはいたけれど、いざその言葉を聞かされると、物凄く重たい鉛を心に落とされた気分だった。

「お相手は……、誰なんですか?」

 少し震える声で聞くと、お父様の顔がとても得意気な物に変わった。

「相手は……フレシアム公爵令息のエドワルド様だ」

「へえ、フレシアム公爵令息のエドワルド様……って、え!?エドワルド様ってあのエドワルド様!?」

「そうだ。お前ののエドワルド・フレシアム様だ!」

「……え?ええ!?」

 まさか、まさか、エドワルド様と婚約する事になるなんて……――
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