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第10話 俺に恋をして
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「お嬢様、どこも悪くないのでしたら、エドワルド様にお会いしましょう?」
翌日、プレーヘム伯爵家にエドワルドがやって来たが、シルヴィアは頑なに会おうとしない。
「無理……会えないわ。お願い一人にして……」
シルヴィアは、枕に突っ伏して元気のない声で答えた。
「では、今日はお帰り頂いていいのですね」
シルヴィアが枕越しに頷くと、侍女はしぶしぶ出ていった。
シルヴィアは、どうしてもエドワルドに会う勇気が出せなかった。
だって、だって、昨日、あんな令嬢にあるまじき大失態をしてしまったんだもの。会えるわけないわ……。
◇
昨日、私はエドワルド様に手を引かれて、ボーッとする頭で公爵家の部屋のソファに座ると、エドワルドもその隣に座った。
「お茶でも飲もうか?」
エドワルドが聞くと、シルヴィアは緩く首を横に振った。
どうしよう……。凄く眠たい……。
「今度の舞踏会は、婚約して初めての舞踏会だね。シルヴィア嬢の事をずっとエスコート出来るのも嬉しいし、それにこの前、約束したダンスも……」
エドワルドは話しを途中で止めると、反応が薄いシルヴィアの様子を見ようと顔を覗き込んだ。するとシルヴィアは、ボーッと一点を見つめていて、今にもその瞳が閉じてしまいそうになっていた。
「眠たいのか?」
寝たら駄目よ。いくら婚約者だっていっても目の前で寝るなんて……。せっかく忙しい中、時間を作って下さってるのに……寝るなんて……
「……いいえ」
シルヴィアは、なんとかそう答えたが、トロンとした目のシルヴィアにエドワルドはクスッと微笑んで、シルヴィアの頭を優しく自身の肩に傾けさせた。
「寝ていいよ」
そう言うとエドワルドは、優しくシルヴィアの髪を撫でる。
ああ、なんなの、これ……。髪を撫でられるのってこんなに気持ちが良いんだ……。確か『あなたの瞳に焦がれて』第3巻にも、主人公が髪を撫でて貰うシーンがあったっけ……。今ならあの時の主人公の気持ちがよくわかるわ……。
いつもは、恥ずかしいとか緊張するって気持ちが先に立ってしまっていたけれど、そういうものを全て排除してしまえば、残ったのは……
この人とずっとこうして一緒にいたい……――
スースーと寝息を立てるシルヴィアを横目に、エドワルドは嬉しそうに微笑んだ。
少し、追い詰め過ぎたか……。でも、こんなに誰かを独占したい気持ちになったのは、初めてだよ。婚約したからって、全然余裕なんてない。
「シルヴィア……早く、俺に恋をして……」
エドワルドは、小さく呟くと肩にのったシルヴィアの頭に軽く口付けた――
エドワルドがそんな事をしていたなんて、知るはずもないシルヴィアは、目が覚めて、自身の状況を把握するとエドワルドの肩から飛び起きた。
「あ、目が覚めた?少しはスッキリした?」
シルヴィアは、真っ赤な顔で口を開閉した後
「も、申し訳ございません!帰ります!!」
と、部屋から飛び出そうとする。
「ちょっと、待って!」
部屋から出ようとしたシルヴィアをエドワルドが止めるが、振り返ったシルヴィアは真っ赤な顔で泣いていた。
「お願い……今日は帰らせて下さい……」
シルヴィアは、扉を開けると急いでプレーヘム家の馬車に乗り込んだのだった――
◇
「ああ、私のバカバカバカ!エドワルド様の目の前で寝る事だってあり得ないのに、エドワルド様の肩にもたれて寝るなんてどんな失態よ!」
シルヴィアは、寝ながらボスボスと布団を叩いてベッドの上で暴れた。
「はあ、エドワルド様。どう思ってるのかしら?会ってるのに寝るなんて失礼すぎるって思ってるんじゃない?いくら親が決めた相手だからって、結婚するのも嫌になったかもしれない。今日だって婚約破棄してくれって言いに来たのかもしれない……」
そこで、コンコンと部屋の扉を叩く音がした。
もう、今日は会わないって言ってるのに……。
と思いながらもシルヴィアが返事をすると
「お嬢様、私です。シーアでございます」
「え!?シーア!?」
それは、シルヴィアに『あなたの瞳に焦がれて』を勧めた元侍女のシーアの訪問であった。
扉が開くと、そこには赤ん坊を抱いたシーアがいた――
翌日、プレーヘム伯爵家にエドワルドがやって来たが、シルヴィアは頑なに会おうとしない。
「無理……会えないわ。お願い一人にして……」
シルヴィアは、枕に突っ伏して元気のない声で答えた。
「では、今日はお帰り頂いていいのですね」
シルヴィアが枕越しに頷くと、侍女はしぶしぶ出ていった。
シルヴィアは、どうしてもエドワルドに会う勇気が出せなかった。
だって、だって、昨日、あんな令嬢にあるまじき大失態をしてしまったんだもの。会えるわけないわ……。
◇
昨日、私はエドワルド様に手を引かれて、ボーッとする頭で公爵家の部屋のソファに座ると、エドワルドもその隣に座った。
「お茶でも飲もうか?」
エドワルドが聞くと、シルヴィアは緩く首を横に振った。
どうしよう……。凄く眠たい……。
「今度の舞踏会は、婚約して初めての舞踏会だね。シルヴィア嬢の事をずっとエスコート出来るのも嬉しいし、それにこの前、約束したダンスも……」
エドワルドは話しを途中で止めると、反応が薄いシルヴィアの様子を見ようと顔を覗き込んだ。するとシルヴィアは、ボーッと一点を見つめていて、今にもその瞳が閉じてしまいそうになっていた。
「眠たいのか?」
寝たら駄目よ。いくら婚約者だっていっても目の前で寝るなんて……。せっかく忙しい中、時間を作って下さってるのに……寝るなんて……
「……いいえ」
シルヴィアは、なんとかそう答えたが、トロンとした目のシルヴィアにエドワルドはクスッと微笑んで、シルヴィアの頭を優しく自身の肩に傾けさせた。
「寝ていいよ」
そう言うとエドワルドは、優しくシルヴィアの髪を撫でる。
ああ、なんなの、これ……。髪を撫でられるのってこんなに気持ちが良いんだ……。確か『あなたの瞳に焦がれて』第3巻にも、主人公が髪を撫でて貰うシーンがあったっけ……。今ならあの時の主人公の気持ちがよくわかるわ……。
いつもは、恥ずかしいとか緊張するって気持ちが先に立ってしまっていたけれど、そういうものを全て排除してしまえば、残ったのは……
この人とずっとこうして一緒にいたい……――
スースーと寝息を立てるシルヴィアを横目に、エドワルドは嬉しそうに微笑んだ。
少し、追い詰め過ぎたか……。でも、こんなに誰かを独占したい気持ちになったのは、初めてだよ。婚約したからって、全然余裕なんてない。
「シルヴィア……早く、俺に恋をして……」
エドワルドは、小さく呟くと肩にのったシルヴィアの頭に軽く口付けた――
エドワルドがそんな事をしていたなんて、知るはずもないシルヴィアは、目が覚めて、自身の状況を把握するとエドワルドの肩から飛び起きた。
「あ、目が覚めた?少しはスッキリした?」
シルヴィアは、真っ赤な顔で口を開閉した後
「も、申し訳ございません!帰ります!!」
と、部屋から飛び出そうとする。
「ちょっと、待って!」
部屋から出ようとしたシルヴィアをエドワルドが止めるが、振り返ったシルヴィアは真っ赤な顔で泣いていた。
「お願い……今日は帰らせて下さい……」
シルヴィアは、扉を開けると急いでプレーヘム家の馬車に乗り込んだのだった――
◇
「ああ、私のバカバカバカ!エドワルド様の目の前で寝る事だってあり得ないのに、エドワルド様の肩にもたれて寝るなんてどんな失態よ!」
シルヴィアは、寝ながらボスボスと布団を叩いてベッドの上で暴れた。
「はあ、エドワルド様。どう思ってるのかしら?会ってるのに寝るなんて失礼すぎるって思ってるんじゃない?いくら親が決めた相手だからって、結婚するのも嫌になったかもしれない。今日だって婚約破棄してくれって言いに来たのかもしれない……」
そこで、コンコンと部屋の扉を叩く音がした。
もう、今日は会わないって言ってるのに……。
と思いながらもシルヴィアが返事をすると
「お嬢様、私です。シーアでございます」
「え!?シーア!?」
それは、シルヴィアに『あなたの瞳に焦がれて』を勧めた元侍女のシーアの訪問であった。
扉が開くと、そこには赤ん坊を抱いたシーアがいた――
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