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1.無能聖女、婚約破棄される
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「聖女トルテ、いや、トルテ・ザッハ!!今この時をもって、第一王子である私アルファド・ツイースは、お前との婚約を破棄する!!そしてお前の筆頭聖女としての地位も剥奪する!!」
建国500年を記念する夜会が開かれている王宮の広間に、王子の声が大きく響いた。
「……婚約破棄、ならびに聖女の位の剥奪、謹んでお受けいたしますわ」
王子に名指しされた私は、にやけそうになる表情筋を叱咤しながら優雅に頭を下げた。自慢の銀髪がさらりと横に流れる。私の名はトルテ・ザッハ17歳。このツイース王国の侯爵家の一つ、ザッハ家の末娘であり、この国の筆頭聖女でもある。
「言い訳などしても無駄…って、えっ??」
私が反発すると思っていたのだろう、王子は私の予想外の返答に戸惑っている。この隙に、とっととズラをかりましょう。領地へ逃げればどうにでもなるわ。
「すべて、殿下の仰せのままに致しますわ、では私はこれで失礼いたします」
さっと広間から出ていこうとした瞬間。突然横から腕を引っ張られ、痛いと思う間もなく、無理やり跪かされてしまった。
「逃がさないぞ!無能聖女め!!」
「何をなさいますの!!痛いですわよ!!」
「うるさい、お前のような無能聖女はこのくらいの扱いで十分だ!!」
私を押さえつけているのは、リック・バウム。騎士団長の息子で王子の取り巻きのひとり。まったく、力加減ってものを知らないのかしら…掴まれてる腕が痛いわ。
「よくやったリック!!そのままその女を離すんじゃないぞ」
嬉々として王子が近づいてくる。
「殿下…これは一体何のまねでしょうか、私何か悪い事をしましたかしら…?」
「しましたかしら…だと?聖女としての役目を放棄し、私の最愛であるミーシャを虐めていただろう!!」
「確かに、聖女の役目放棄…のほうは否定いたしませんわ。でもそれは理由をお話いたしましたよね?殿下も分かったとおっしゃいましたわ。それに私、ミーシャさんとは会った事さえございません」
(この王子、私の言葉をちゃんと聞いてなかったな…)
ちらりと王子の方を見やると、王子にしなだれかかるようにピンクの髪をした少女が立っていた。ミーシャ・ウェハースだ。ここ最近、殿下やその取り巻きと一緒にいるという噂の男爵令嬢だ。
「殿下、あなたの横にいらっしゃる方がミーシャさんでしょうか?初めまして、私トルテ・ザッハと申しますわ。私、あなたとは会ったことも話をしたことも無かったと思うのですが、なぜそんなに怯えていらっしゃるのかしら?」
トルテが痛みを我慢しつつ声をかけると、ミーシャは大げさに肩を震わせる。
「ひっ!!殿下…怖い!!」
王子は彼女を護るように自分の胸の中へ抱きしめた。
「嘘をつくな!ミーシャが怖がっているではないか!さっさと謝罪するんだ!!」
王子の腕の中でミーシャが底意地の悪い笑みを浮かべていた。
(あー、これはハメられたな…)
「やっても居ない事を謝罪する気などございません。というか、どのようにいじめられたのでしょうか?」
「ミーシャがお前に虐められたと言っていたのだから虐めていたんだろう!!」
(王子ともあろう者が大声で喚くんじゃないわよ。十分聞こえるわ)
そんな事を口に出せるわけもなく、トルテは冷静に言葉を選ぶ。
「ですから、その虐められたという内容を…」
「うるさい黙れ!!ミーシャに謝罪をすれば聖女の位の剥奪だけで済ませてやろうと思ったのに!」
トルテの言葉を遮るように怒鳴る王子の姿に、思わずため息が出そうになる。
「何だその生意気な目は!!ええい、もういい、お前はこれから呪われの森で一生暮らすんだ!!」
王子はトルテが付けていた聖女のサークレットを乱暴に奪い取ると、奪ったそれをミーシャの頭へ置いた。
「さあ、これでお前はもう聖女ではなくなった!!新たな筆頭聖女はこのミーシャだ!」
「んな!教会で正式な選定も受けずにそんな事できませんわ!!」
こいつ馬鹿なのか?いや、馬鹿だったわ。国王陛下から婚約を命ぜられて7年。こいつの馬鹿さ加減にはお手上げよ。
そもそも、この国では聖女は選定の間にある魔法陣に立って、その適正を見極めなければなれないのに。
そして、そのサークレットは結界魔法陣に光の魔力を流し込むためだけの魔道具であって、筆頭聖女の証でもなんでもない、トルテ以外に6人いる聖女も皆つけてる。
「リック!さっさとこのうるさい女を城から連れ出せ!!」
「殿下!!ちょっと待ってください!!」
トルテは抵抗虚しく、そのままズルズルと広間から引きずり出された。
建国500年を記念する夜会が開かれている王宮の広間に、王子の声が大きく響いた。
「……婚約破棄、ならびに聖女の位の剥奪、謹んでお受けいたしますわ」
王子に名指しされた私は、にやけそうになる表情筋を叱咤しながら優雅に頭を下げた。自慢の銀髪がさらりと横に流れる。私の名はトルテ・ザッハ17歳。このツイース王国の侯爵家の一つ、ザッハ家の末娘であり、この国の筆頭聖女でもある。
「言い訳などしても無駄…って、えっ??」
私が反発すると思っていたのだろう、王子は私の予想外の返答に戸惑っている。この隙に、とっととズラをかりましょう。領地へ逃げればどうにでもなるわ。
「すべて、殿下の仰せのままに致しますわ、では私はこれで失礼いたします」
さっと広間から出ていこうとした瞬間。突然横から腕を引っ張られ、痛いと思う間もなく、無理やり跪かされてしまった。
「逃がさないぞ!無能聖女め!!」
「何をなさいますの!!痛いですわよ!!」
「うるさい、お前のような無能聖女はこのくらいの扱いで十分だ!!」
私を押さえつけているのは、リック・バウム。騎士団長の息子で王子の取り巻きのひとり。まったく、力加減ってものを知らないのかしら…掴まれてる腕が痛いわ。
「よくやったリック!!そのままその女を離すんじゃないぞ」
嬉々として王子が近づいてくる。
「殿下…これは一体何のまねでしょうか、私何か悪い事をしましたかしら…?」
「しましたかしら…だと?聖女としての役目を放棄し、私の最愛であるミーシャを虐めていただろう!!」
「確かに、聖女の役目放棄…のほうは否定いたしませんわ。でもそれは理由をお話いたしましたよね?殿下も分かったとおっしゃいましたわ。それに私、ミーシャさんとは会った事さえございません」
(この王子、私の言葉をちゃんと聞いてなかったな…)
ちらりと王子の方を見やると、王子にしなだれかかるようにピンクの髪をした少女が立っていた。ミーシャ・ウェハースだ。ここ最近、殿下やその取り巻きと一緒にいるという噂の男爵令嬢だ。
「殿下、あなたの横にいらっしゃる方がミーシャさんでしょうか?初めまして、私トルテ・ザッハと申しますわ。私、あなたとは会ったことも話をしたことも無かったと思うのですが、なぜそんなに怯えていらっしゃるのかしら?」
トルテが痛みを我慢しつつ声をかけると、ミーシャは大げさに肩を震わせる。
「ひっ!!殿下…怖い!!」
王子は彼女を護るように自分の胸の中へ抱きしめた。
「嘘をつくな!ミーシャが怖がっているではないか!さっさと謝罪するんだ!!」
王子の腕の中でミーシャが底意地の悪い笑みを浮かべていた。
(あー、これはハメられたな…)
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「ミーシャがお前に虐められたと言っていたのだから虐めていたんだろう!!」
(王子ともあろう者が大声で喚くんじゃないわよ。十分聞こえるわ)
そんな事を口に出せるわけもなく、トルテは冷静に言葉を選ぶ。
「ですから、その虐められたという内容を…」
「うるさい黙れ!!ミーシャに謝罪をすれば聖女の位の剥奪だけで済ませてやろうと思ったのに!」
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「何だその生意気な目は!!ええい、もういい、お前はこれから呪われの森で一生暮らすんだ!!」
王子はトルテが付けていた聖女のサークレットを乱暴に奪い取ると、奪ったそれをミーシャの頭へ置いた。
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