私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

文字の大きさ
18 / 89
【1部】第二章.やっと召喚されました

017

しおりを挟む
私の名はサボック。このグラム王国の宰相である。
今代の国王は暗愚である。それを長年支えてきたのが私だ。

私の最大の功績は、城の奥深くに隠されていた、異世界人召喚の方法が記された書を見つけた事だろう。
最初に召喚した奴らは2人だけだったが、知識量はかなりの物だった。

私が少しおだててやれば、ベラベラと異世界の知識を披露してくれた。おかげで傾きかけていたこの国の財政や文化は著しく向上した。

その後も、色々な知識を披露してくれたが、しばらくすると地位や金、自由を要求してくるようになり、私の言うことを聞かなくなった。

飼い主に歯向かう犬には躾が必要だ。隷属の魔道具をつけさせ服従させた。
その後も定期的に、異世界からの召喚を行った。

最初の2人とは違った知識を持つ人間がやって来た。やはりそいつらも鑑定とアイテムボックスを所持していた。
従順な奴は騙して隷属の魔道具をつけさせ、反抗的な奴は強制的に隷属の魔道具を着けさせた。

吐き出せる知識の無くなった者は、そのまま自我を潰してアイテム運搬をさせている。
さて、今回の奴らはどんなスキルを持っているのか。


***

近衛騎士たちが持ってきた今回の召喚者たちのスキルを見て、私は大当たりだと思った。

一人、鑑定とアイテムボックスを持たない者が居るが、そいつは大魔法などが使えるから良いだろう。
それよりも何よりも、勇者や聖女の称号を持つ人間が4人も居たのだ。

聖女に至っては、使える者が滅多に居ない治癒魔法を持っている。
スキルを育てていけば、伝説の魔法と言われている蘇生魔法まで習得できるかもしれない。

「なんと、今回は豊作ではないか!」

自然と笑みがこぼれてしまう。

今回の召喚者たちは、国内で飼殺さねばなるまい。
特に聖女達に関しては、絶対に他国に奪われるわけにはいかない。

勇者たちには、王女と私の娘をめあわせればいいだろう。

聖女達には、第一王子と第二王子を宛がおう。王族になれるのだ喜ばないわけが無い。

だが…第二王子の方には婚約者がいたか…。
確か侯爵家の次女だったな…あの侯爵家はそろそろ目障りだ。適当な醜聞をでっちあげて家ごと引きずりおろせば問題ないだろう。

そんな事を考えていると、近衛騎士から声を掛けられた。

「宰相様!サボック様!少々ご相談した事があります…」
「ん?なんだ貴様は」

声の方を見やると、卑しさのにじみ出た顔をした騎士が立っていた。

「私、近衛騎士のエドガー・ベルンと申します、召喚者の一人のステータスを確認しておりました」
「ふむ、して騎士ベルンよ何があったのだ?」

芝居がかった挨拶に、少々イラつきながら言葉を促す。

「はい、私がステータスを確認した者ですが、あの…何の手違いかスキルを一つしか持っていませんでした。スキルの内容もスライムテイムなどという聞いた事の無いスキルでして…宰相様のご判断を仰ぎたく…」

騎士が言った言葉が一瞬理解できなかった。
スキルが一つしかない人間が混ざっていただと…?過去数度の召喚でも、そんな人間はいなかった。
何故今回だけそんな外れが混ざった??

「何だと?スキルを一つしか持たない者が召喚されただと…?聖女や勇者の称号を持つものも複数人いた。スキルも今まで通り、鑑定とアイテムボックスを所持していたのに…なぜその者だけ碌なスキルを持っておらんのじゃ…」

「それは、わたくしにも分かりかねますが…こちらがその人間のステータスがこちらになります」

確かに、こいつの責任ではないな。
咳ばらいを一つして、差し出された紙を読む。

「ああ、すまん。お前を責めたわけでは無い。ふむ…イツキヤマノ、19歳、女か…。ベルンと言ったか、報告ご苦労だった。この者の処遇はこちらで対処する。お前は他の召喚者たちの所へ戻れ」

「はっ!了解しました」

近衛騎士が立ち去った後、私は一度部屋から出て部屋の外に立っていた文官に声をかけた。

「これから召喚者たちをいったん応接間に案内する。その時、あそこの女だけこの金を握らせて裏口からたたき出せ」
「は、はい!」
「それと、下手に貴族街をうろつかれても困る。兵を一人つけて貴族街の外まで案内させろ」
「かしこまりました!!」

文官は礼をして下がっていった。

この国の事を知らない人間だ、放り出せば勝手に野垂れ死にするだろう。
もしも、あれが自分は召喚者だと喚いたところで、あんなスキルしか持たない小娘のいう事など誰も信じない。

五月蠅く喚くようならその時は消せばいい。
影の一人にイツキヤマノの監視を命じ、私は部屋へ戻った。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

湊一桜
恋愛
 王宮薬師のアンは、国王に毒を盛った罪を着せられて王宮を追放された。幼少期に両親を亡くして王宮に引き取られたアンは、頼れる兄弟や親戚もいなかった。  森を彷徨って数日、倒れている男性を見つける。男性は高熱と怪我で、意識が朦朧としていた。  オオカミの襲撃にも遭いながら、必死で男性を看病すること二日後、とうとう男性が目を覚ました。ジョーという名のこの男性はとても強く、軽々とオオカミを撃退した。そんなジョーの姿に、不覚にもときめいてしまうアン。  行くあてもないアンは、ジョーと彼の故郷オストワル辺境伯領を目指すことになった。  そして辿り着いたオストワル辺境伯領で待っていたのは、ジョーとの甘い甘い時間だった。 ※『小説家になろう』様、『ベリーズカフェ』様でも公開中です。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...