私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第二章.やっと召喚されました

016

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近衛騎士ベルンは少し不愉快だった。

何故なら、せっかく今後の昇進の為にと、好みでもない召喚者の女に世辞を言って媚を売ったのに、あの女は顔色ひとつ変えないどころか、俺が名前を呼ぶ事すら拒んだのだ。俺の顔を見て惚れない女はこいつで2人目だ。

俺になびかなかったもう一人はこの国の侯爵家の娘だった。あいつはあいつでいけ好かない貴族女だった。

あーあ、媚を売るなら他の召喚者にしておけば良かった。
向こうに居た娘の方が可愛かったもんなー

そんな事を一瞬で考えたが、このヤマノとか言う女、虚空を見てなかなかステータスを開示しない。
俺は少し苛つきながら声をかけた。

「ヤマノ様もお願いします」

「スミマセン今やります。ステータスオープン!」

声を掛けられハッとした女は、やっとステータスを開示した。


***

まさか、召喚者でスキルを一つしかもたない人間がいるとは思わなかった。しかも、そのスキルがスライムテイムなどという見た事も無いスキル。

通常のテイムスキルであれば、力の強い魔物を自分の配下におけるが、名前から察するにスライムしかテイム出来ないのだろう。こんなスキルが使えるとしたら下水道清掃やゴミ処理のような職業だけだろう…。

こんな使えないスキルしか持っていない召喚者など、国王陛下の御前に連れていけるわけが無い。
思わず、スキルはこれだけなのかと問いただしてしまった…

「…ヤマノ様……あの…スキルは本当にこれだけですか…?」
「え…?これだけって、普通はもっと持っている物なんでしょうか?ていうかステータス見るの初めてなんですが…」

女はきょとんとした顔をしている。

それはそうだ、俺みたいにここに居る近衛騎士団のやつは、全員が少なくとも1回は召喚された異世界人と接しているし、過去全員の召喚者が3つスキルを持っている事を知っているが、こいつはそんな事知るわけが無い。

変に気取られたくないし、これは俺の手に余る事態だ。宰相様に判断をゆだねよう。

「いえ!そういう訳ではありませんが…。あ、終わりましたので楽にしてお待ちください!!」

俺はそう言って、宰相様の元へ急いだ。


***

「宰相様!サボック様!少々ご相談した事があります…」
「ん?なんだ貴様は」

俺は宰相に声をかけ近づいた。

「私、近衛騎士のエドガー・ベルンと申します、召喚者の一人のステータスを確認しておりました」
「ふむ、して騎士ベルンよ何があったのだ?」

「はい、私がステータスを確認した者ですが、あの…何の手違いかスキルを一つしか持っていませんでした。スキルの内容もスライムテイムなどという聞いた事の無いスキルでして…宰相様のご判断を仰ぎたく…」

俺は宰相の前で跪きながら事の次第を話す。

「何だと?スキルを一つしか持たない者が召喚されただと…?聖女や勇者の称号を持つものも複数人いた。スキルも今まで通り、鑑定とアイテムボックスを所持していたのに…なぜその者だけ、ろくなスキルを持っておらんのじゃ…」

「それは、わたくしにも分かりかねますが…、こちらがその人間のステータスがこちらになります」

先ほど書き写した紙を宰相に差し出した。

「ふむ…イツキヤマノ、19歳、女……。ベルンと言ったか、報告ご苦労だった。この者の処遇はこちらで対処する。お前は他の召喚者たちの所へ戻れ」

「了解しました」

多分、あの女は適当に始末されるのだろう。ま、俺には関係ない。他の能力の高い召喚者に取り入るとするか。
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