私はただ、憧れのテントでゴロゴロしたいだけ。

もりのたぬき

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【1部】第三章.自分のスキルを確認するまでが長い

027

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宿の支払いを済ませると、リカルドさんが鍵を持ってカウンターから出てきた。

「部屋に案内するからついてきな。あっちの奥が食堂だ。閉門の鐘が鳴ったら夕飯だ。つってもまだ昼も過ぎてすぐだからな…悪いが昼めしは外に食べに行ってくれ。出かける時は一声かけてくれな」

「あ、はい」

リカルドさんが指さした方に、扉がある。あの奥が食堂なのだろう。
二階へ上がると、客室が4部屋と共同の洗面スペースとトイレがあった。

私は客室の1つに案内された。ドアにはスミレの花が描かれたプレートがかかっている。

「この部屋があんたの部屋だ。夕食は呼びに来ないから自分で降りてきてくれ」
「わかりました」

「何かあれば声をかけてくれ」

そう言うとリカルドさんは下へ降りて行った。

部屋に入ると広さは6畳くらいで、ベットと書き物机、クローゼットが置かれているだけのシンプルな内装だった。
壁紙はドアプレートと同じスミレ柄。

窓の外を覗いてみると表通りが見える。やはり人通りは少なく、この国の状況はあまり良くないように感じた。
私はカーテンを閉めると外套を脱ぎ、鞄を下ろすとベットに腰を掛け、そのまま仰向けに寝転がった。

地図を開き私を追ってきている人間が居るかチェックをした。どうやらエリザさんのお影で城からついてきた人を撒けたようだ。よかったよかった。

「これでやっと落ち着いてスキルの確認が出来るねー…」

召喚されて神様たちと話をして、グラム国に来て城から追い出されるも、親切な人たちのおかげでこの宿まで来られた。

目まぐるしい一日だけど、助けてくれた人(神様)たち本当には感謝しかない。

ふぅ…とため息をついた途端、私はこの世界で生きて行けるのか?という不安感が襲ってきた。
このまま野垂れ死にするんじゃないか?とかネガティブな思考がどんどん湧いてくる。

駄目だ駄目だ、こんな後ろ向きな事を考えたら駄目だ…

目をつぶり、首にかけたペンダントをぎゅっと握りしめた。
そうすると、じんわりと暖かさが体中に広がっていき、不安感が薄れていった。

グラームス様とミルス様ありがとう。
落ち着いたらちゃんと教会に行かないとね…。

とりあえず、私の最終的な目標は絶対安全空間でゴロゴロ生活をする事で変わらない。
だけど、どんな世界でも生きていくうえでは、ある程度お金が必要になる。

まずはお金を稼ぐ手段を考えないといけない。

むくりと起き上がると、アイテムボックスを開いた。

外に居た時はとりあえず必要な物だけチェックしていたから、しっかり見ていなかった。
洋服店でもビジネスバッグに入っていた小物を、適当に放り込んでしまったから中身を整理したい。

中を覗いてみると、一番最近入れた物が一覧の上に来るようになっている。
なので、アイテム一覧の一番上にはリップクリーム、一番下には枕と狸のぬいぐるみが入っている。

真っ先に要求したものだったからね。
しかし、これだと何が入っているのか見づらい…

並べ替えできるような機能は無いかな?と探してみると有りました有りました。

【名前順】【種類順】【入れた順】【自分で設定】の4つの方法で整理出来るらしい。

種類順で整理と書かれた文字をタッチしてみると、縦一列に羅列されていた一覧が【武器】【防具】【道具】【素材】【衣類】【食べ物】【その他】【だいじな物】というタブの中に表示されるようになった。

うん、まさにRPGの持ち物欄だ。

あ、食べ物の一覧にエネルギーバーが入ってる。
うん、会社で夕食を食べ損ねた時用に、バックに4本入りのを2箱は常備してたっけ…
お昼食べてないし、ちょっと食べちゃおう。

喉が渇くから、一緒に入っていたペットボトルのお茶も取り出す。

ささっと一箱開けて、一袋だけ開ける。
チョコ味おいしい。

もぐもぐしながら、他の項目も見てみる。

お金は【だいじな物】に分類されていて、金貨300枚と表示されていた。
これはもしかすると、それぞれの硬貨ごとに仕分けされるんだろうか…あとでやってみよう。

ちなみに、枕とぬいぐるみも【だいじな物】の中に入っていた。うん、めっちゃ大事な物。
そんな感じでアイテムボックスの中を確認していると、ピロリンと電子音のような音と音声が頭の中で響いた。

<<絶対安全空間で案内人(名称未設定)が呼んでいます>>

案内人??何だそれ。
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