醒メて世カイに終ワリを告ゲルは

立津テト

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3.岩屋の死闘と、居ない人達。

3#1 捜索

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 レンガのように四角い焼しめたパンを握り締める。
 硬すぎて歯で削り取るか水orスープに浸して柔らかくしなきゃ食べられないパンが、俺の握力に耐えかねてボロリと二つに崩れた。

 これは、怒りなんだろうか?
 ふとそんな疑問がよぎるほど得体のしれない黒々とした何かが、俺の腹の中にわだかまっている。
 昨日の晩はここまでひどくはなかった。でも思い出せば思い出すほど、考えれば考えるほど、遣り切れない感情は凝り固まっていく。
 二つになったパンを革の皿のスープに浸し、柔らかくなった部分を口に含んだ。スープの塩味とパンの甘味が口の中にふわりと広がる。

 俺は今、ルー=フェルから西に延びていくフェリアス山脈の裾にある、森と森に挟まれた谷間で休息していた。街からはおおよそ四十キロも離れた地点か。キャリンたち捜索のため、『根絡みの大空洞』に向かう道中だ。
 結局、出立の買い出しはルルが一人で手配してくれて、俺は約束を違えたことを平謝りに詫びる羽目になった。ルルは事情を理解してあっさりと許してくれたから良かったものの、こうなったのもアイツのせいだと思うと別の怒りが湧いてくる。
 そうしたルルとリリカの働きのおかげで今朝、俺たち三人は予定通りにルー=フェルを出立できた。ガーラは知らん。ここ三日くらい姿を見てないから誘おうにも誘いようがなかった。

 本来、街からはおよそ十八リィ――約五十四キロ離れている根絡みの大空洞及びその入り口である根絡みへの通廊までは、朝に出て翌々日の午後に到着する三日行程だ。
 三日行程というと遺跡迷宮の中では割とご近所の部類だろう。しかし俺達はほぼ半分の道程を午前中に踏破して、これから山の中に入るという手前で食事休憩を取っているところだった。

 なぜこうも快速で旅が進むかといえば、三日行程というのがあくまで一般的な遺跡迷宮探索時の装備でかかる日数だからだ。
 今回の目的は捜索なので予定日数を少なめに見積もっている。まあ、捜索だからとか以前に資金の問題もあるんだが。
 んで、これから向かう遺跡迷宮は環境が安定しているので野営の準備が最低限で済む。なので天幕やら調理器具やら重くてかさばる荷物を軒並み置いてきたから、通常時と比べて荷物が半分以下になった。飯は携帯食で我慢だけどな。でもおかげで身は軽い。
 
 そして身が軽いからこそ使える移動手段に、ルルの身体強化門晶術『ラエウ』がある。
 この、実は結構難度が高いのにルルは気軽に使っている門晶術、普段は保護のために封じている人間の筋力を一時的に全開放させる機能を持つ。これにより膂力(りょりょく)だけならば常人の五倍の怪力を得ることができ、しかも筋肉を増やすわけじゃないから筋肉が干渉するような動きの制限もない。単純に攻撃力と素早さと防御力を底上げできるって訳だ。
 そんな便利な門晶術なんだから、どんな代償があるの? って思うかもしれないが、実は術者にも被術者にも直接の負担はほとんどない。エーテルの保護で筋繊維及び骨格も強化しているため最低限の負荷で済むからだ。
 論理難易度がどうしても四論数以上の上級魔法になってしまうって点を除けば、チートスレスレのトンデモ魔法だろう。

 ただし弱点はある。
 一つはこの術の利用になれた人間でないと、急激に上昇した身体能力に振り回されてまともに身体を操れなくなる。速すぎて壁に激突とか跳びすぎて目的の場所を行き過ぎるとかだ。運動神経が良くなるわけじゃなく、単に馬鹿力を身につけるだけだからな。
 なのでこの門晶術はリリカには使えない。彼女はちょっと、普段の状態ですら持て余してる感があるからな……なのでリリカは俺が背負ってここまで運んできた。
 もう一つの弱点は筋肉への負担だ。ついさっき直接の負担はない、負荷は最低限で済むといったが、あくまで最低限で済むというだけでないわけではない。門晶術ナシで筋断裂するところが筋肉痛程度で済むなら、ホントに最低限と呼んで差し支えないだろう? なので多用すると次の日、ひどいときは直後に筋肉痛でまともに動けなくなってしまう。

 荷物が少なくて門晶術でブーストができる、こうした理由で三日行程を半日強で消化できたわけだ。
 そして荷物が少ないのも門晶術で無理なブーストができるのも、偏(ひとえ)に目的が捜索で後の事を深く考えなくてよいからだ。
 とは言いつつも全く考えなくていいわけでもない。
 遺跡迷宮は基本的に魔物の巣窟であり、これから向かう根絡みの大空洞も例に漏れない。きっと回避しようのない戦闘もあるだろう。
 なので戦闘の余力を残すためにブーストはここまでとあらかじめ決めていた。山登りは身体を休める意味合いで徒歩のゆっくりとした進行になる。だから数字上は残り二割の道程もこれで半分くらいなのだ。十キロ強の山道は侮れない。
 
 お昼ご飯にと持ってきた保存食――パンとスープ、そしてチーズをよく噛んで食べ終えると、まだ食事中の二人を後目に出立の準備を進める。
 傍から見たら早くしろと催促しているように見えるかもしれないが、他意はない。誤解されたところで気心の知れた仲間同士だ、問題無いだろ。

 俺が見上げる視界の中央を鬱蒼と茂る樹木に挟まれた砕石の坂道が伸びていた。これから俺達が登る道だ。
 延々と続くそれは地平線がそのまま盛り上がったかのような尾根にぶつかり、晴れ渡った青空へと続いていく。雨季にはここを雨水が通り流れの激しい川になるらしいのだが、今は大きな岩や小さな石を敷き詰めた山道にしか見えなかった。
 この川跡を辿って山を登り、中腹から森に分け入って遺跡迷宮まで真っ直ぐに向かう予定になっている。

「ねえ、シューちゃん~」

 リリカに呼ばれて振り返る。
 二人は俺から少し離れた平たい岩の上に腰かけて昼食を取っていた。その膝の上にはまだパンの半分ほどが残っている。

「朝からずっと怖い顔してるよ~、ルルちゃんも心配してる~。どうしたの~?」

 言われてルルを見る。気付いてはいたが、ルルはどこか敬遠するように不安げな面持ちでこちらを窺っていた。
 視線をリリカに戻す。対してリリカは普段通り、どこにも気負ったものはない。
 わかってるさ、俺の不機嫌が変な空気を醸してるくらい。

「あたしにもよくわかんない」

 声がトゲトゲするのも致し方ない。独りよがりにそう思ってしまうほど、今の俺の心持ちは荒んでいる。
 それもこれも全部アイツのせいだ。

「でも原因ははっきりしてる」

「なぁに?」

「エリクよ」

「希者様?」

 一つ頷いて深呼吸。
 そうして一拍おいて気持ちと頭を少し整理してから、俺は二人を収めるように身体ごと視界を向け直す。

「昨日の晩のことなんだけど――」

 そうやって話す態勢を整えてから、俺は昨日から話すタイミングを逸していた総督府門前の出来事を語り始めた。
 ガノ君を探して散々走り回った事。
 エリクの使いで現れた巫女服の少女の事。
 総督府の明かりに照らし出されたガノ君の必死な顔。
 そして門の向こう側、安全なところに姿を見せたエリク。
 ガノ君の思いを嘲笑うような物言い。自分の力は大勢を助けるためにある、と。
 果ては希者としての使命感も責任も感じさせないような投げ遣りな言葉。

『僕にとっては希みも恨みも変わらない。どちらも受け入れ希むままに消化する。それだけ。中身に興味なんてないんだ☆』

 一晩考えてみても、やっぱりアイツの言い分は納得がいかない。
 大きく間違ってるとは言わないさ。世の中、処世術で成り立ってるのは今も昔も大昔も変わらない。そして俺は大昔と昔にその処世術に失敗して世の中から弾き出されている。今も、得意とは言えない。だから、処世術に長けてる人間を見るとコンプレックスを感じる。

 だけどさ、アイツは違う。コンプレックスとか苦手とか、そういう問題じゃない。
 あの時は怒りのあまりロクな言葉が浮かばなかったけど、いろいろ考えた後の今は『違うだろ!』って大声で叫びたかった。お前みたいにみんなが頼りにする、憧れるような人間が、そういう処世術で世の中切り分けちゃダメだろ! って言ってやりたい。

 こんなの能天気な正論だって言われちゃそれまでだけどさ……アイツは、希者ってのは、そういうのを率先して守るべき人間なんじゃないのかよ……すごいヤツって、そういうヤツの事じゃないのかよ……馬鹿らしい正義を守って、それでも必死に前を向いてるような人間こそが素晴らしいってのは、俺の妄想なのかな……。

「……そんな事がぁったんですか……」

 重々しい沈黙を破って、ルルが嘆息した。

「あいつ、何なの? そんなに希者って偉いの? 救う人、救わない人、自分の好き勝手に選んでさ、何様なのよ」

 一語一語に力を込めて吐き出す度、思いつめた感情がほどけていく気がした。
 リリカはそんな俺をじっと見つめている。一言一句聞き漏らすまいと、俺の悪感情を全部受け止めようとしてくれているかのように静かに耳を傾けてくれていた。

「だいたいあいつ、本当にそんな御大層なものなの? 一体どんな力を持ってるってのよっ」

 あんな軟弱そうな顔のナンパなロン毛が何程のものだってんだ。

「突拍子もなく出たり現れたり非常識なだけじゃないっ」

「噂ではなんだかとんでもなぃマイノリティの持ち主だそぅですけど……」

 次第に声の大きさが高まっていく俺を抑えるように、ルルの苦笑が割り込んでくる。

「マイノリティ? 瞬間移動でもするっての?」

 マイノリティとはこの世界で云う特殊能力の事だ。俺の身近だとリリカが『動物と話せる力』を持ってるくらいか。稀少だけどびっくりするほど珍しいものでもない。

「ぃぇ、瞬間移動だけじゃぁりません。ぁくまで噂なんですが、一瞬で魔族級の魔物を粉砕したとか、死んだ人間を蘇らせたとか、そこにぁるはずのなぃものを懐から取り出すょぅに出現させたとか、もはゃ奇跡と呼ぶしかなぃょぅな現象ばかり引き起こしてぃるんです。それでぃて力の実態は誰も知らなぃ、故に『希跡の力』なんて勝手に呼ばわれてぃるくらぃ謎なのです」

「胡散臭すぎるじゃない……なんでそんなのが希者様なんて敬われてるのよ」

「希者様だからですょ。三柱もの神様に認められてぃるからこそ、その力が邪悪なものではなぃとみんな心から信じられるんです。実際、彼の功績は無視できるものじゃぁりません。街や村を救った事は数知れず、東方大陸では天災から国を一つ丸々守り切ったなんて話もぁりますからね」

「うそくさ……」

「信じょぅと信じまぃと、世界が彼を支持してぃる事には変わりぁりません。だからぁんまり外で希者を罵るょぅな真似は控ぇて下さぃね、ぉねぃさま」

 最後の諫言じみた言葉は聞かなかったことにした。
 にしても、ほんっとに何から何まで非常識な野郎なんだな、アイツは……なんかもうこれ以上関わり合いになりたくない気がしてきた。

「非常識なマイノリティを持ってるから非常識なのか、非常識だから非常識なマイノリティを持ってるのか……いずれにしろロクでもないヤツってのはよくわかったわ」

 俺の結論にルルは苦笑を浮かべただけだった。

「あーあ、マイノリティってのも面倒くさいわね……なんでそんな得体のしれない力があるのかしら――」

 って、リリカも保持者の一人だった。
 慌ててリリカに詫びるような笑みを見せる。

「あ、リリカのは別ね、動物と話せる力なんてリリカにぴったりの可愛らしい力だと思うわ」

 と、言い掛けられたリリカはきょとんと目をしばたたかせた。

「動物と話せる力~……?」

 のんびりと繰り返した声は、なぜか疑問形。

「あれ、動物の気持ちがわかるだけ、だった?」

「ううん、そもそもわたし、マイノリティなんて持ってないよ~?」

「…………あれ?」

 表情筋が固まるのを感じた。

「えーとぉ……持ってないよ?」

 改めて繰り返された。

「え? いやだって……子供の頃よく一人で動物と戯れてたじゃない! 森の妖精って感じで動物を集めてあれこれ語り掛けててさ!」

「あ、あの頃はまだシューちゃんとお話しするのも怖くってぇ……一人でしょんぼりしてたら動物さん達が集まってきてくれて、胸に溜まってた事を聞いて貰ってただけよぅ~」

「……あたしの勘違い?」

「うん~、そうみたい~」

「えーと……」

 リリカは『動物と話せる』特殊能力を持ってない。
 エリは『動物と話せる』特殊能力を持ってこの世界に転生している。
 だから持ってない人間はエリの生まれ変わりじゃない。つまり、リリカはエリの生まれ変わりじゃない……?
 いやでもマイノリティ持ちは転生者だってのはあくまで俺の仮設で……つっても持ってるはずの力を持ってないんだからリリカがエリじゃないのは確定で……エリじゃないとしたら誰? って誰でもないよリリカだよ。いやじゃあリリカがエリじゃないならリリカは俺の嫁じゃない? いやまていつからエリ=俺の嫁になった。それにそんなんなくてもリリカは俺の嫁だ。

「ってそうじゃない!」

「なんか、だぃぶ混乱されてますね、ぉねぃさま……」

「えーと……なんだろ……シューちゃん、ごめんね?」

「はっ!? いやいや違うのよ、リリカは何にも悪くないから! ただあたしの未来予想図が大きく路線変更を強いられただけで……でも大丈夫、もう大丈夫」

「そ、そう~?」

「うん、そう」

 そうさ、リリカがマイノリティを持ってなかろうがエリの生まれ変わりじゃなかろうがリリカはリリカだ。それでこの娘が変わるわけでもなし、俺の気持ちの問題だ。であればなんにも問題ない。ないはずだ。

「でもよかったぁ、昨日エリク様と会ってからシューちゃんずっと難しい顔してて~、何も話してくれないから心配したのよ~」

 ふと心付く。
 そっか、今日はまだ一度もリリカのこのふんわりスマイルを見てなかった。
 俺のせいでリリカにまで気を張らせちゃってたんだな……いつの間にか内側に溜めていた悪感情を察して、リリカがそれを話させてくれた。おかげでだいぶスッキリだ。
 スッキリしたついでにもう一つ無茶言っとくか。

「リリカ、ルル」

「なぁに~?」「なんです?」

「あいつに“様”はいらない」

「あいつって、希者の事ですか?」

「そう」

 さすがルルは呑み込みが早い。早速俺の言いつけ通りに“様”を取ってる。
 うんうん、それでいいそれでいい。あんな奴を俺の大事な人達が尊称付きで呼ぶのはなんか腹が立つからな。

「少なくともあたしの前ではあいつに“様”付け禁止ね」

「えぅ~、でも希者様は希者様だしぃ~……」

「言いつけを守らないなら――」

 意識して眼を細める。リリカが強張った顔で生唾を飲み下す。

「揉むわよ」

「もっ……!?」

「ルルもゃっぱり希者様は希者様と呼ぶべきだと思ぅのですょ」

「ルルは魂胆が見え見えだから却下」

「ぅぐぐ……なんですと……」

 心底悔しそうに顔を顰(しか)めて拳を握り締めるルル。血の涙を流しそうな表情だ。でも意味もなくご褒美を与えるつもりはない。

「いやよぅ、シューちゃん乱暴なんだもの~」

 ゆっくりとした動作で岩の上のスープ皿にパンを置いたリリカが、揉まれるべき控えめな胸を分厚いローブの上から両腕で保護して身を捩る。
 困惑と羞恥に上気した頬と丸眼鏡の下の上目遣いが、なかなか興をそそる光景だった。

「あれくらい激しくしないと刺激されるものもされないわよ!」

 言い切って胸を張る。

「無駄に説得力ばかりぁりますね……」

 革鎧の上からでもそれとわかる俺の胸を見上げて、ルルが呻いたものだ。

 俺は何も罰だから、ましてやわいせつ行為目的としてリリカの胸にあんなことやこんなことをしたいと言っている訳じゃあない。
 リリカの胸はもっと大きくあるべきなのだ。俺のために。
 それが見ろ、性格を引き写したかのようなあの控えめな胸を!

 第二次性徴期が始まる時期にリリカのそばを離れたのはまずかった。正直、シューレリアの人生においてその点だけは後悔している。
 いや、控えめなのが悪いと言っているわけじゃない。その需要の少なくないことは重々承知している。

 だがしかしだ、ここで大事なのは俺個人の感性だ。つまり必要なのは胸の――いやさおっぱいの真価たるべき大きさと重量感となめらかさ! 少なくとも俺は自分のおっぱいにおいてそこを重点的に鍛え上げている。
 しかしあくまで自分のおっぱいは自分のおっぱいでしかない。自分でおっぱいを持ってみて俺は気付かされた。

 おっぱいは他人の為にある、と。

 だからどれだけ自分のおっぱいが好ましい状態にあっても、真の充足感は得られない。結局は他人のおっぱいこそが真のおっぱい足りえるとも言える。
 おっぱいは他人のものであり他人のものこそおっぱい。他人のおっぱいじゃなきゃ揉んでも満たされないのだ。

 故に俺はリリカが嫌がろうとリリカのおっぱいを大きくするために心を鬼にする。
 これは必要な儀式だった。俺とリリカが永劫おっぱいという絆で繋がるために必要な通過儀礼なのだ。

「うぅ……シューちゃぁん……そんな目でじっと他人の胸を見つめないでよぅ~」

 恨みがましいリリカの声で我に返る。今俺どんな顔してた? なんか凄腕スナイパーみたいな濃ゆい顔になってなかったか?
 いかん、それは女子としていかんぞ……。
 ……うん……まあ、あれだ……結局大きい方がいいか控えめな方がいいか、大きくなるかならないかは人それぞれなんだろうけどな。何より重要なのは、たとえ控えめだとしても俺がリリカの胸を揉めるか否か、だ。

「あたしは、ただリリカのおっぱいを揉みたいだけよ」

「そんな事をそんな真面目な顔でこんなところで言わないでぇ~!」

「大事(だいじ)な話じゃないっ!」

「シューちゃんが勝手に大事(おおごと)にしてるだけよぅ~! お願いだから落ち着いて考えてぇ! それすっごく下らない話だからぁっ!」

「何故に……ルルに何が足りなぃと言ぅのですか……大きさも形もリリカさんと比べて五分と五分……でぁれば一体ルルとリリカさんの差とは……」

 それから揉む揉まないでリリカとじゃれ合い、物欲しそうなルルに時間のことを指摘されて渋々保留することにした俺だった。

 そういや今までモヤモヤのせいで心付かなかったけど、エリサには『エリクに会え』って言われてたんだっけ。
 でも総督府前で顔を合わせた時は特に何も起こらなかったな……これと言った情報も手に入ったわけじゃないし、結局なんだったんだろうあの助言は。

「……考えて答えの出ないものは考えても仕方ない、か」

 今は時期も分からない予言に心を砕く時じゃない。
 親友のピンチなんだ、そっちに集中したって罰は当たらないだろ。

「ぉねぃさま、何かぉっしゃぃましたー?」

「なんに、もっ」

 返事と一緒にまとめた荷物を腰に乗せて背負い直す。
 急ごう、きっとキャリンが待ってる。
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