醒メて世カイに終ワリを告ゲルは

立津テト

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3.岩屋の死闘と、居ない人達。

3#4 激闘

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 ビュウゴオと耳を削る風が、俺の身体を弄(もてあそ)ぼうと押したり引いたり忙しない。
 猛り狂う衣服や一本に縛った金の髪はバササバササと悲鳴を上げる。
 上下左右も平衡感覚もどこか別の世界に置き去りにした浮遊感に苛まれながら、心は新鮮な懐かしさに包まれていた。

 ともすればこの墜落感に置いて行かれそうになる心を繋ぎ止めるよう俺が握りしめているのは、俺の腕に取り縋り身を固くしたルルの青白い手だ。
 俺とルルは一つに見えるくらいしっかりと、腕を絡めた上にギュッと手を握って離れ離れにならないよう備えている。
 手と同じく青白い顔色で顔全体をしわくちゃにするくらい固く瞑った眼に向けて、俺は風に負けない声で囁いた。

「ルル、よろしく」

「ぅぐぐ……トキュルトセデュ・ドラフ・エスネトニ・グニンスギル・ラルリプ・ロルトノク」
 
 食いしばった奥歯の更に奥から絞り出したような声が、辛うじて俺の耳に触れた。
 その刹那、すべての音が吹き飛んだ。
 一抱えほどの大きさの雷球が一つ、二つ、三つ……いや、全部で四つか。俺とルルの周囲を回転しながら出現した。空気を引き裂く絶え間ない破裂音はこの雷球が放電する音だ。
 その雷球が俺達を一周する間にみるみる巨大になり、そうかと思った時には眼下に延びて青白い柱となっていた。
 飛び降りたときは全然見えなかった根絡みの大空洞の床――というかもはや大地か。グニャグニャと捻じ曲がった幹の樹木で複雑な森を形作る地表が、俺達の視界一杯に広がっている。なかなか壮観な景色だ。
 本当はもっとゆっくりこの景色を堪能したいところだが、さすがに今の状況でそれは難しい。

 とんでもないエネルギーの量を予見させる光と音を撒き散らし、雷柱は緑の絨毯にしか見えない地表を余すところなく薙ぎ払っていく。
 低い木や下草は一瞬で灰と化し、太い幹も青い葉を散らして圧し折れ火を噴いた。一見すれば無秩序に動き回っているように見える雷柱だが、これでしっかりルルが操作しているというのだから驚きだ。その辺を適当に焼き払ってキャリン達まで巻き添えにしちまったら元も子もないからな。

 そしてもうこの頃には、肉眼で奴らを確認できるまで地表に近付いていた。
 ルルが蹴散らしているのは俺達を中心にした約五十メートル程の円外で、これ以上は雷柱を近づける事が出来ないギリギリの距離だ。
 なので足元には破壊を振り撒きつつ落下してくる俺達を見上げて、何事か絶叫するオークの姿がいくつも見受けられた。
 こいつらをなんとかしないとすぐに包囲されてかなり面倒な事態に陥る。というかそれ以前にそろそろ着地の準備をしないとこのまま二人でペシャンコだ。
 というわけで今度は俺の出番が来た。
 意識を門晶に集中する。

「ラムレート・ドナプクスェ・エドルプクスェ・ティモックエノドノケス」
 
 囁くように詠唱し、門晶に風が吹き抜けるようなイメージを浮かべる。周囲に満ちていたエーテルがイメージに沿って流れ込む。
 うん、さすが遺跡迷宮はエーテルの質も量も上等だ。
 門晶を流れたエーテルが俺の胸の内で輝くように発熱する。あくまでイメージだけど。
 溶岩のように滾るエーテルを論理の溝に流し込む。身体の中に迸(ほとばし)っていた熱の気配が、体外の一点に集中するのを感じる。
 
「そぅれぇっ!」

 上半身を捩じった反動で、ルルの手を握るそれとは逆の腕を地面に向けて振り抜く。俺の手から投げ放たれたのは、ルルがいつも抱えている宿り木と琥珀の杖だった。

 論理『ティモック』が含まれた門晶術は、一時的に別の物体に付与してそこから発生させられる。
 しかし当然ながら威力が著しく低下するし、それどころかある程度エーテルの通りがよくないと不発に終わったりもする。しかも論理の構造が特殊で慣れと集中を要するときたら好き好んで使う輩が少ないのは頷ける。

 ところが、俺はこの論理を習得したばかりの一時期、濫用と言ってもいいくらい使い込んだ。おかげでこんな状況でも正確に迅速に構築できるまで習熟している。
 加えてルルの杖も借りられたからほとんど不安はない。当時は鉄の剣でこれを練習してたんだからな。ルルの杖を使ったのは不発防止の為で、鉄の剣よりもエーテル順応性が高い特性を利用するのだ。

 ところでそんな扱いづらい、というか扱いに困る論理をなんのために使い込んでいたかというと――まさに今のような時の為だったりする。
 樹々とオークの林をすり抜けて地面に突き立ったルルの杖から、風景を歪ませるほどの圧力が周囲に解き放たれた。杖を基点にして全周囲に発生した衝撃波は、容赦なく遺跡迷宮の床に降り積もった土ごと緑もオークも吹き飛ばす。
 その余波はもちろん空中にいる俺たちにも達した。
 突き上げられるような衝撃に身体がもみくちゃにされ、ルルの悲鳴を暴力的な音の洪水の中で俺の耳がかすかに捉えた。だが、今は気にしていられない。まだ俺の仕事は終わってない。
 落下は着地するまでが落下です、ってな。墜落したら話にならん。

「ラムレート・ドナプクスェ・エドルプクスェ!」

 落下から一転、空中に投げ上げられながらも腰を捻って態勢を整え、同じ呪文を今度は自分の腕の先から解き放つ。
 さっきの呪文よりも門晶を通すエーテルの量を調整して弱くした。それでもさっきに倍する衝撃が、上に引っ張られる感覚の中にあった俺の身体を今度は横へと吹き飛ばす。

 内臓も筋肉も骨も一緒くたに丸めて放り上げられるような、ただただ不快な感触。
 だけど懐かしい感触でもある。
 昔、空気を熱で膨張させる論理『ドナプクスェ』を知った時、俺はこの爆風で空が飛べるんじゃないかと考えた。掌や足の裏から爆風を出せば、反作用で飛べそうな気がするだろ?
 そこで爆風から熱を取り除き、衝撃波を増幅させる論理を組み上げていろいろと実験したのだ。
 実験の結果はまあ、今現在俺が空を飛べていないことから察してくれ。

「ラムレート・ドナプクスェッ」

 地面に叩きつけられる直前に最後のクッション――と言ってもかなり乱暴な反発力を持ったクッションだが――代わりでもう一発。
 衝撃波で最後の慣性を殺し、こうして俺とルルは三秒間の自由落下旅行から地べたに帰還したのだった。

「いったたぁ……」

 ところが、着地の時にしたたかに尻餅をついてしまった。
 最後をカッコ良くランディングで決めようなんて思ったのが悪かった。自分じゃちゃんとやったつもりだったのに、爆発の軸を傾けすぎて勢いが付きすぎたのだ。

 身体の節々とお尻に残るじんわりとした痛みを堪えて立ち上がり、すぐに周囲を警戒する。が、それは不要な気働きだったようだ。
 俺の視界は三百六十度の荒れ地を映しただけで、そこに動くものの姿は一つも確認できなかった。ルルの超大門晶術と俺の爆風でこのあたりのオークは一掃できたみたいだ。
 しかしこれでオークが全滅したわけじゃない。これだけ大騒ぎしたんだ、すぐに周囲の別動隊が集まってくる。

「ルル、動ける?」

 落下と着地の衝撃に慣れていた俺と違い、ルルにはなかなか堪えたみたいだ。それでも手を離さなかったのは感心する。いまだに話そうとしないのは別の執念を感じるが。
 振り払うように解いた手を腰に当てて、ルルを見下ろす。
 パッと見たところ、これといった外傷は見当たらないが……?

「し、死ぬかと思ぃましたょ……」

「大丈夫、生きてるわよ」

 お互い何事もなさそうで安心した。
 空中で長い髪がバタつくのを嫌い、飛ぶ前に束ねた紐を安心ついでに外す。軽く頭を振ると淡い金色の髪がうねり、汗ばんだ地肌に空気が触れて心地好い。
 ひとまず、上空から奇襲して大門晶術を可能な限りぶっ放す作戦の第一段階は成功って感じだな。

 さて、借りた杖を回収しないと。
 杖は俺が突き刺したままの姿で荒れ地の主のごとく堂々と立っていた。
 こいつは爆心地になってたから、ほとんど衝撃を受けずに済んだみたいだ。おかげでどこにも壊れた形跡はない。うむ、計算通り。

「はぁ……もぅこんな無茶は御免ですょ」

 すぐに俺の後をついてきたルルが恨めしそうに呟く。
 トレードマークの帽子は飛び降りる前に顎紐でしっかり固定していたはずなのに、爆風の余波で背中にずり落ちていた。
 なので紫の硬質な髪の下でマジ泣き寸前といった紫の双眸もしっかり見て取れる。相当怖かったんだろうが、動けるならまったくもって問題なさそうだな。
 俺も最初はそうだったが、だんだんこれが快感になってきて止められなくなった経緯もあったなぁ……俺は杖をルルに返しつつ、昔の自分を思い返して不敵に口の端を吊り上げる。

「無茶でも無理でもやり通せば道理の方から道を譲ってくれんのよ。それにちゃんと計算の上での爆風よ」

「計算って、どんな計算ですか」

 ルルは胡散臭そうな声で口を尖らせる。

「それはその瞬間の状況に対する緻密な経験則から導き出される閃きだから、一概にこうとは言えないわね」

「それってぁてずっぽぅじゃなぃですか……ょく生きて地に足をつけられたものです……」

「あてずっぽうでもちゃんと生きてるんだから、馬鹿にしたもんでもないでしょ? 昔、こんな風に爆風で空が飛べないかなっていろいろ試してた時期の賜物ね」

 そう返した時のルルの顔は驚きと畏れと軽侮を呆れかえった表情の上にこれでもかと盛りつけたようなちょっと失礼なものだった。

「それで、空は飛べたんですか」

 しかも溜息を一つ挟んでからそんな事を聞いてくる。
 わかりきった事を聞くルルに肩を竦めた。

「落着ばかりうまくなった事実から察して」

「そぅですね、今だけはその馬鹿馬鹿しぃ実験が失敗続きだった事を喜びましょぅ。じゃなきゃこんなの、ここぞとぃぅ時に失敗してたでしょぅから」

「なんか引っかかる言い草ね……まあいいわ」

 ルルの不貞腐れたような態度も怖さの裏返しなのだろうからわからなくもない。言いたいだけ言わせておけば、すぐに機嫌も戻るだろう。
 それ以前に、いつまでものんびりとくっちゃべってる訳にもいかないしな。

「さ、向こうの役者も揃ってきたみたいだし、もう一騒ぎでっかい花火でもあげますか」

「良ぃ憂さ晴らしになりそぅですょ……」

 ルルの暗い呟きに、これから奴らの身に降りかかる災難を想像せずにはいられなかった。
 そう、既に、辛うじて森と呼べる程度に緑が残った辺りから遠巻きに俺達を窺う視線を感じている。敵意と好奇が入り混じった視線は間違いなくオーク達のものだろう。
 キャリン達であればこんな遠巻きにせず、すぐに顔を見せてくれるはずだ。さっきみたいな大火力に巻き込まれないように。

「とりあえず奥の方を目指しましょう」

「ぁぃぁぃさー」

 『根絡みの大空洞』の構造は至ってシンプルだ。もはや部屋とは呼びきれない巨大な空間がいくつか並んでいるだけ。いくつか、というのはその実数がわかっていないからこう言うしかない。
 複雑な迷宮というわけではないのだが、空間内に蔓延る不可思議な樹木の森と通常であれば厄介な魔物がウヨウヨしている遺跡迷宮は、なかなか細かいところまでその様子を俺達に教えてくれないのだ。
 まだまだ未開部分が多いからこそ人気の遺跡でもあるわけだが、それが今やオークの巣窟だもんな。どうしてこうなる前に誰も気づかなかったんだ?

 森と荒れ地の境界から、次々と奇怪な人型の生き物が歩き出てきた。
 実を言うと俺もハッキリとこの目で捉えるのは初めてだったりする。
 最初に遭遇した時はまだまだ戦闘に不慣れで、ガーラの後ろからただただ剣を振り回して門晶術をばら撒くのに必死だった。しかも夜中の遭遇だったからつぶさに観察する余裕なんてこれっぽっちもなかったわな。
 いま改めて見てみて思うことは、醜怪だ、ってとこか。

 その容姿を一言で説明すれば、二足歩行する豚だ。
 顔面は普通の豚の顔を人間っぽくなるまで圧し潰したようなしわくちゃの扁平顔で、小さな緑の眼球は白濁した膜に覆われて白っぽく濁っている。
 削げたような大きな鼻の下には食い意地が張ってそうな大きな口が横に裂けて、下あごからは黄ばんだ牙が生えていた。

 体格は大柄で、筋肉の上に更に皮下脂肪を蓄えただらしない肉体をしている。腕が異様に長くて足が短いのは鋼鎧熊イルザーグにそっくりだ。
 熊の魔物と違うのは剛毛のない地肌が塗ったように鮮やかなピンク色をしている点と、銘々に防具のようなものを装着しているところか。
 しかしその防具も統一性はなく、拾った使い物にならない盾や奪った鎧に無理矢理身体を押し込めているといった有様で、有能な戦士の姿にはほど遠い。

 それらの見た目の中で特に目を引くのが、炎を模したような赤い化粧だ。
 ピンクの肌の上で刺青のようにあちらこちらと踊っているそれは、オークの特性を物語るようで印象的だった。

 俺の事前知識として、オークは自ら火の部族と称し、火と冷気とエーテルに強い耐性を持っているという情報がある。
 素手で火中の肉を掴むなんてことはお手の物で、煮えた油に手を突っ込んでも平然としていたなんて話もあるくらいだ。
 冷気に強いというのも、極寒の雪山で普段からあんな形をしているというのだから相当なものだろう。

 秀でているのは防御能力だけじゃない。敏捷ではないが怪力で、しかも火の門晶術まで操る。
 とはいえ万能でもない。ちゃんと弱点もある。それは雷だ。火と冷気をシャットアウトする皮膚と脂肪が、逆に電気の通りを良くしているらしい。
 つまり俺の熱の門晶術は効かず、ルルの雷の門晶術は有効という事か。ここはいつも通り、ルルを主砲にして俺はその露払いで駆けまわるのが得策だな。

「『ラエウ』は使ぃますか?」

 身体強化は必要か? と聞かれて、俺は小さく首を振る。

「いらないかな。ルルには火力を期待したいし」

「そぅぃぅ事なら」

 それだけの簡単な打ち合わせを終えると、足を運びながら愛用のショートソードを抜く。
 ガーラと旅をするようになった時からずっと使い込んでいる鋼の小剣を軽く振ると、自分の身体が延長したような安定感に戦闘前の荒ぶった高揚が少し慰められた。

 そうして前を見渡せば、既に緑よりもピンク色の割合の方が多くなっている。
 そして蠢くピンク色達は、俺達が近付くのに気付いて甲高い声で何かを叫んでいる。

 オークの言語は門晶術で使われている古語に近いものだという。言い換えれば、大昔から文明の進歩がないという事らしい。
 ところが、門晶術で単語を聞きかじった程度じゃオークが何を言っているのかさっぱりわからん。
 詠唱の為と会話の為という目的の違いで、全く違う言語になっているんだろうな。
 そもそも意味のある言葉を喋っているのかどうかも怪しいけど。ただ叫んでいるだけなのかもしれない。
 
 あと二十歩ほどで生死の間仕切りを切る。ギャアギャアと騒がしいピンク色の壁に向けて、歩きながら小剣を水平に持ち上げる。
 その動作にオーク達は何を感じ取ったのか、火蓋が切って落とされた。オーク達が雪崩を打って攻め寄せる。

「トネロイヴ・グニンスギル・フタエルヴ」

 初手は俺の右手を並んで歩くルルからだ。それは俺に注視していたオーク達からすれば不意打ちに等しい意外な攻撃だったろう。
 突き出した杖の三メートルほど離れた先から青白い雷光が迸った。激しい白光に細めた視界の中で雷の龍がのたうち回り、前方のオーク達をたちまち黒焦げにしていく。

「二十三式・甲、トフス・エリフ・エドルプクスェ」

 その雷光が収まるか収まらないかといった頃合いに、今度は俺の切っ先からバスケットボール大の火球が飛翔する。
 ルルの門晶術よりも地味だと侮るなかれ。派手になるのはここからだ。あれはいわば花火の尺玉だからな。

 火球は煙を噴き上げるオーク達の死骸の中に落下すると、そこで破裂して火炎の暴威を顕(あら)わにした。基点から扇状に広がる火炎は、仲間を盾にして雷をやり過ごしていた他のオークを容赦なく吹き飛ばして俺達が進む道を切り開く。

 これで前方の敵はひとまず片付いた。
 そう思って振り返ると、もうすぐそこまで他のオークが迫り来ている。その数ざっと五十ほどか。

 いきなり、ルルが俺の手を握った。
 俺は素直にその手を握り返し、古びた杖が虚空に突きつけられるのを見た。

「トネロイヴ・エガル・トロブレドヌフト」

 今度も杖の先端から雷鳴が轟く。しかし今度は前ではなく周囲だ。ドーム状に広がってく雷の壁が、駆け寄ってきたオークを絡めとっては感電させていく。
 密集して詰め寄ってきたもんだから、後続に邪魔されて逃げられなかった奴らがどんどん火膨れになっていく様はグロいというか壮観というか、あんまりじっくり見たくはない光景だわな。ああはなりたくないもんだ。

 と言うわけで、ルルが俺の手を握ったのは心細いとかドサマギとかじゃなく、俺までああなる――つまり感電させるのを防ぐためだった。
 門晶術は詠唱者が自滅しない為の保護が組み込まれており、手を繋ぐことでその範囲を拡張できる。
 さっき空中で手を握っていたのも、着地で別々に吹っ飛ばないようにするだけじゃなく雷門晶術に巻き込まない配慮があったのだ。

 とりあえず、第一陣はわざわざ近寄ってきてくれたおかげで苦労せず一網打尽に出来たな。
 燻(くすぶ)るオークの死体の山を速足に進む。周囲に敵影かあるいはキャリン達の姿がないか確認しながらだ。

 今のところキャリン達がこちらに居場所を知らせるような反応はない。これだけ馬鹿みたいに騒いでるってのに、一体何してんだよキャリンは……それとも動けない理由でもあんのか?

 少し考え込んでいた間に、まだ吹き飛ばしていない森の切れ目が迫っていた。
 ルルがどうするかと目顔で尋ねてくる。俺は一瞬悩んでしまった。

 ここまでやっといてなんだが、あんまり遺跡迷宮を破壊するような行為は境界に身を置く冒険者としては御法度なのだ。だけど視界の悪い森林を進むのはオークに不意打ちの機会を与えてしまうことになる。
 キャリンもいないみたいだし、ここもやっぱり吹き飛ばして安全を確保してから先に進むか……そう結論付けようとした矢先だった。
 森の奥に赤い光が灯る。見慣れた光だった。咄嗟にルルを抱き寄せる。

「十式・甲、ラムレート・エキュデル・リーヴ!」

 詠唱すると同時に無詠唱で別に火球門晶術を構築し、具象化する。
 切っ先から放たれた野球玉程度の『エリフ』は目と鼻の先にまで迫っていた巨大な火球に衝突して弾けた。熱波に焼かれた空気が荒れ狂い、炎の舌で俺達を舐めまわす。

 はたから見ればどう考えても丸焼きになるべき状況で、しかし俺達は赤っぽい光が弾ける中、ほとんど無傷のまま立っていた。
 この光の粒子が舞っているのは、局所的にエーテル濃度が高まったときに見られる燐光現象と呼ばれるものだ。

 生きていられるわけのない状況を無傷で切り抜けた。だもんだから、俺達の死を確認しに来たオーク達から驚きとも不快ともとれる声が上がる。
 それを後目に、俺とルルは熱の暴威が収まってもまだ抱き合った姿のまま、少し険しくなった顔を見合わせた。

「び、びっくりしました……」

「結構きっつい威力の『エリフ』を使ってくるのね……」

 二人とも大きな怪我はないみたいだな。俺はちょっと髪の先が焦げちゃったのがショックだが……これだけで済んだのだから良しとしておこう。

 オークが森の中から放った火球に小さな火球をぶつけて誘爆させ直撃を免れたわけだが、それだけではもう熱波から逃げきれないのはわかり切っていた。

 俺がまず最初に詠唱したのは熱をエーテルに変換する門晶術だ。
ルルが雷の門晶術を使うときに自然地発生する自己防御効果を門晶術にしたものと思ってもらえば大体あってる。これの効果で一時的にエーテル濃度が高まったから、燐光現象が発生してたわけだ。

 本来は強力な門晶術を使う時に自分の門晶術の熱から我が身を守る為のお守りだが、熱同士であればこうして防御にも役立つ。まあ、あんまりすごいものは防げないんだけど。
 すごく便利に見えるが、実は逆に本来の目的には使い物にならないことで有名な門晶術だったりする。
 強力な門晶術の熱は防ぎきれない上に、三論数もあるからそこまで強力な術の時は同時展開できないからだ。一体何のために存在しているのかよくわからない門晶術の代表で、まさかこんな風に役に立つ日が来るなんて俺も思わなかった。
 とりあえずオークの火炎術には有効みたいだから常時展開しておくか。他の術の威力が落ちるけど、どうせオークには火が効かないしな。

「ルル、あたしが時間を稼ぐから――」

「一発ドカンと吹き飛ばしますっ!」

 語を引き継いだルルの威勢を頼もしく思う。
 作戦を殲滅戦闘から応戦に切り替えたのは、さっきの攻防で出端を挫かれ、超大門晶術の影響内に敵を寄せ付けてしまったからだ。これでは、火力の高い門晶術を使うと敵もろとも自分たちまで吹っ飛んでしまう。

 もう少し全体の数を減らせるかとも思ったが、こうなっちゃ仕方ない。なんとかルルの大門晶術を完成させて周囲の敵を一掃し、もう一度こっちのペースを掴み取るのが次善だろう。
 それにはルルに集中する余裕を与えなきゃいけない。この状況をひっくり返すような門晶術となると、さすがのルルも俺の援護をしながら構築するのは難しいだろう。俺一人で自分とルルの身を守らなきゃ。

「魔法のレッスンは一旦おしまいよ! ここからは剣の稽古をつけてあげるっ!」

 小剣を高々と掲げ、出来る限りの不敵な面構えで、そして声高に宣言する。
 意味が通じたとは思えないが、挑発されているというのは伝わったみたいで、あちこちから色めき立った怒声のような罵声のような絶叫が甲走る。その感情の迸りに後押しされたか、俺の正面にいた一体が短い脚をばたつかせて迫ってきた。

 垢と汚れで染め上げられたぼろきれみたいなズボン以外には防具らしい防具もなく、錆びだらけの薪割り斧がかろうじて武器らしい武器と呼べるか、といった貧相な個体だ。
 そいつをきっかけに後続もワラワラと攻め寄せてくる。
 しかも敵は前方だけじゃない。左右と背後にもだ。あまり手間をかける余裕はない。

 最初の薪割り斧の速度と距離を考える。こんなもんかと感得すると同時に瞬歩で踏み込んだ。過たずオークの正面に到達した時には既に、突き出された小剣がオークの胸板を裂き割り分厚い脂肪を貫いていた。
 斧を振り上げたままだったオークは、何が起こったのかも理解できぬままに心臓を串刺しにされて事切れたことだろう。
 剣を抜く間も惜しみ、刺し貫いた姿勢のまま瞬歩でルルの元まで戻る。手斧のオークの身体が操り糸から解放されたようにその場に崩れ落ちた。
 それを後目に刀身へ血振りをくれると、視線だけで周囲を見回す。

 敵は四方八方から迫ってきているが……右の方が少し近いな。思うが早いか、瞬歩で右方の最前列を走っていた一体に跳ぶ。
 ほとんどすれ違うように踏み込むと、振り返りもせず背面に刃を走らせて素足の腱を断ち切る。
 背後に巨体が転がる音を聞きつつ、視線はすでに次の獲物を捕らえていた。この近距離じゃ瞬歩は機能しない。
 なので普通に一歩踏み込んで相手の攻撃の内側に潜り込みつつ首筋を一閃。パッと咲くように迸る赤い血を避けて更に踏み出す。
 血の色だけは人間と同じなんだな……と妙な関心を抱きながら、倒れゆくオークの背後から迫る別のオークの拳を潜る。脇から小剣を突き入れ、抜く。水風船のように血が噴き出した。
 そこへ更に三体ほど思い思いに切りつけてきたのを、急所だけを狙って立て続けに無力化する。

 その皮膚は確かに火と冷気に強いのかもしれないが、どうやらそれだけのようだ。この刃で斬れるならいくらでも対応策はある。
 問題は数の差だが――。

「ヒュギ・レドヌフ!」

 そんな時だった。ルルの詠唱が耳に届いたのは。
 内心でしまったと舌打ちする。
 思った以上に時間を掛けすぎて、左から来ていた敵がルルに差し迫っていたのだ。大門晶術の構築を断念して迎撃に出たのがさっきの詠唱だった。
 慌ててルルの元に飛ぶと、ほとんど同時にエリフが五つも飛んできた。

「五十八式・甲、オド・エリフ、三連!」

 振り薙いだ小剣からタイミングをずらしたエリフをぶつけて誘爆させ、広がる火炎は予め展開していた『エキュデル』の還元力場で無力化する。
 寄り添ったルルが、喜色に溢れた顔で俺を見上げた。黒い帽子の下でも目が輝いてるのがわかるほどだ。

「ぉねぃさま!」

「ルルごめんっ手間かけちゃって……!」

「ぃぇ、すぐに再構築に入ります!」

 短いやり取りの間に駆け寄ってきたオークが三人。剣やら棍棒やら武器がまちまちでそれが逆にやりづらさを感じさせる。
 全部が全部、剣であれば剣の間合いと拍子を揃えて攻撃を合わせられるのだが、間合いも拍子も違う武器が混じってくるといちいちそれに合わせて間をすかしたり半歩余計に踏み込んだりと工夫が大変なのだ。

 しかしそれを見誤ったり手を抜いたりすると、死ぬ。あっさり死ぬ。
 どんなにしょぼい武器を使っていようが、オークは素手で人を縊(くび)り殺せる怪力の持ち主だ。一撃でもまともに貰おうものならこれだけの数を相手にする身軽さが失われてしまう。
 ただでさえリリカの祈祷術による無限の肺活量がないんだ。慎重に慎重を重ねて立ち回らないと、変に負傷したらキャリン達と合流しても逃げきれなくなる。

 なんとか三連星よろしく一列縦隊で襲い掛かってきたオークを、しかしそれっぽいのは見た目だけで全く連携の取れていない甘い攻撃の合間に、首や腱を狙って最小限の攻撃で無力化していく。
 だがその後ろにはまだまだヤル気満々のオーク達が濁った眼をぎらつかせて控えている。

「五十八式・甲、タンガトス・ラウ・エリフ!」

 地面を横に薙ぐように小剣を振ると、切っ先の軌跡をなぞって二メートル近い高さの炎の壁が、俺とオークを隔てて横十数メートルの長さにわたり発生する。
 いくら火に強いからって、好き好んで突っ込んでくるほど阿呆でもないだろう。
 ひとまずそれで後続の足止めをすると、踵(きびす)を返してルルの後方から迫っていた一団に跳ぶ。

 瞬歩の余勢を駆って右に、左に、踊るようにオークの合間を斬り抜け、蹴り飛ばし寄せ付けない。
 機敏に動き回る俺を、焦れたようなオークの唸り声が追いかけてくるが追いつかせる俺じゃない。じゃないけど、あえて止まった。

 俺の動きが止まったその瞬間を狙ったエリフや手槍の投擲を、しかし息が切れたと見せかけて停止しただけだった俺は余裕でやり過ごす。
 騙されたオーク達をせせら笑いつつ、俺は安全にルルの元へ跳んで戻れた。真っ直ぐ戻ったら背中がガラ空きになってしまう、さっきの停止はそれを避けての誘いだ。

 ルルが戻った俺を視線だけで気遣ってくる。その眼差しを大丈夫だと見返す。
 本当は言うほど余裕はない。額から汗が滴る。
 火の門晶術が飛び交っている戦場は熱い。周囲の気温が上昇すると身体の熱が逃げ辛くなり、息が上がりやすくなる。大丈夫だ、と言葉で返さなかったのはそうしなかったのではなくそんな余裕がなかったからだ。
 リリカの祈祷術があればもっと余裕で戦えるんだけど……言っても仕方ない、か。

 チラッと弱音がよぎるのも、息が上がっているせいだ。
 ほとんど息吐く暇もなく瞬歩で飛び回り、全方位の敵に対応しているのだ。無理もない。
 瞬歩は一瞬で全身の筋肉を使う激しい運動で、同じ距離を全力疾走する以上の負担が心肺にも筋肉にも襲い掛かるからな。
 今はまだある程度片付ければ呼吸を整える時間が稼げるけど……このままオークが集まり続けて包囲が厚くなったらどうなるかわからない。
 息を切らしたまま戦うと、体力そのものの消耗も激しくなるし、集中力と筋力も衰える。
 あんまり好ましくない事態なのは言うまでもない。

 そもそもなぁ、機動力がウリのウェポンユーザーである俺がスペルキャスターであるルルを守り切らなきゃいけないって時点でかなりの無理があるんだもんなぁ。
 本来、パーティの後衛であるスペルキャスターとメーンステイを守るのはシールドホルダーの役目だ。俺達のパーティであればガーラがそれにあたる。キャリンのとこは確かドズさんだったか。

 シールドホルダーが注意を引き、ウェポンユーザーが敵の撹乱及び厄介な相手の牽制、スペルキャスターが大門晶術で一掃する。メーンステイはパーティの回復や強化といった保全が仕事だ。それが昨今のパーティ戦術のスタンダードであり、俺もその戦術に則って敵を撹乱して数を減らす方向に特化した戦闘能力を磨いてきた。

 ところが、今の状況はウェポンユーザーとスペルキャスターのコンビじゃ最も不得手とする状況だ。こうなることが目に見えてたから、オークを近づけないように派手に暴れてキャリン達に発見してもらう作戦だったのに。

 誰でもいいから早く合流してくれればかなり戦況は楽になるんだけど……それがドズさんであれば言う事なしかな。
 キャリンでも二手に分かれられるだけでかなり楽になるし、正教神徒であるヒャラボッカちゃんならリリカと同じく増強の祈りが使えるだろうから俺の動きに制限がなくなる。

 つーかガーラが同行してくれてれば――違う、あんな奴……そうさ、どれもこれもないものねだりだ。
 ないものねだりをするより、今はこれからどうするかを考えるべきだ。

「結局、最後に頼るべきは自分なのよね……!」

 己を鼓舞するように呟いて、瞬歩の為に身をたわませる。
 速いのは……前方か。そう思った瞬間だった。左から圧し掛かるような殺気の塊が押し寄せる。
 炎の壁が突破されたのだ。思った以上に早かった。あと一拍は持つ、その時間で前方に対処してから……と思っていた俺の思惑が大きく外れた。

「二十三式・甲、トフス・エリフ・エドルプクスェ!」

 火球が切っ先から飛び出して、左から殺到するオークの群れに躍り込む。
 もちろん、火が効かないオークにただの火球を投げ込むなんて無駄行動はしない。『エドルプクスェ』の論理は火球に爆発の効果を付与する。その威力は俺の門晶なら大岩を砕くほどだ。この衝撃で息の根を止められなくとも行動不能に陥れさせられれば、と思ったのだが……。

 それほどの破壊の猛威を受けても、オークは止まらなかった。それどころか衝撃も炎も数体をこかしただけで、半分以上が平然と熱波の中を突き進んでくる。
 左方と前方から半包囲を受ける形となってしまった。しかも俺達が立つ開けた場所のオークだけでも十数体、加えて吹き飛ばしきれなかった森の中から一体、また一体と増え続けている。手をこまねいていたらアッという間に完全包囲だ。
 流石にこれはルルを庇いながら戦える状況じゃない。

「ルルッ、前方のやつらをお願い!」

 ルルは返事をしなかったが、エーテルの流れが微妙に変化したことで構築する論理を変えたことが察せられた。
 つまり、構築に時間のかかる大門晶術からすぐさま発動できる中級クラス以下の門晶術に切り替えたのだろう。それでルルが無言裡に俺の指示を承諾してくれたのを悟る。

 悟りはしたが、同時に息苦しさも感じた。その無言から、ルルも焦りを抱えていると思えたからだ。
 きっとあの研究と理論が詰まった頭の片隅で、この危難を突破する方策を考えあぐねているに違いないと思うと、自分の不甲斐なさに我知らず歯噛みしていた。

「こんだけ騒がしくしてんのに、キャリン達は何やってんのよっ」

 歯ぎしりのようにすり潰した声が漏れる。それは自分の声なのに他人の言葉のように聞こえて、俺はハッとした。
 半ばは悪化していく状況に苛立っての八つ当たりだったが、根底にある別の不安を垣間見たのだ。キャリン達の安否に対する不安が。
 本当に、これだけ騒いでいるにもかかわらず何の音沙汰もない。まさか……と一瞬だけ頭をよぎった悪い予感に、小剣を構えた腕が下がりかけた。

 俺がハッとしたのはそんな折だ。
 消沈しかけた気分を自覚してその不安を無理矢理振り払い、迫りくるオークの軍勢を睨みつける。ここでもたつけば後方と右方の敵も殺到して袋叩きだ。それは何としても避けたい。
 そうして目前の危難を意識すると、危機感からいやが上にも戦意が高まった。

「大丈夫、キャリン達はきっと無事、だからあたしもこんなとこで苦戦なんてしてらんないんだから」

 呪文のように口の中でそう呟いて、念押しのように自分を励ます。心なしか気分が少し上向く。
 左半身を引いた半身(はんみ)になって右手に持った小剣を片手正眼に構え、足から腰に、腰から腕に、そして再び腰へと循環する力の流れを意識した。緩やかだが滔々(とうとう)とした流れを感じる。
 この力の流れが淀みない限り、俺の身体は万全の状態で動ける。この感じならまだまだ戦えそうだ。

 踏み込んだ。雪崩を打って押し寄せるオークの中に飛び込み、縦横無尽に刃を振るう。振るう度に血煙が上がり、鈍重なオークの巨体が朽木のようにズシリと倒れていく。

 もちろん反撃がなかったわけではない。俺が近付けばオークも丸太のような腕を振るって武器ともつかないボロボロの剣や棍棒を叩きつけてきた。だが本当に狙っているのかと怪しく思うくらい曖昧な攻撃が、オークの林の合間を足を止めず立ち回る俺に当たるはずもない。

 むしろ、見上げるような巨体ばかりのオークが、動き回るために身を低くした俺を捉えようと武器を打ち下ろして前屈みになれば、攻撃の隙に加えて急所の一つである首筋を差し出すような格好になる。
 そう来たら俺は、脂肪のマフラーを巻いたような短く太い首に刃を当てるだけで事が済むのだから簡単だった。柔らかい肉は大量生産品の鉄製小剣でも欠陥ごとあっさりと切り裂けた。
 相手の息の根を止める事よりも、飛び交う血の噴水を避ける方がよっぽど難儀なほどだ。

 四体、五体と焦げた地面に沈めて、一旦ルルの元まで下がる。息が上がってきたのと小剣についた血糊のせいで切れ味が落ちてきた為だ。
 息を整えつつ小剣の血を振り払い、ポーチの一つから取り出した布で一拭きしたあとに砥石で軽くこする。間に合わせだが、しないよりはマシだ。
 その間も、背後でルルが雷光と空気の破裂音を響かせてオークを撃退している。
 その危なげない戦闘にひとまず安心しつつ、自分の戦場へと戻るべく瞬歩の力を矯(た)める。

 ほんのわずかな時間の休息だったのに、オークの方はせっかく減らした数をどこからともなくまかなって、俺の再来を待ち構えていた。 
 落ちてくるときのルルの極大門晶術で数十体、降りてからの掃討戦で十数体、そして今の防戦で十体近く、計百体以上は倒しているはずなのに、オークの数は減るどころか増える一方だった。
 しかもこの軍勢がもしルー=フェルに攻め入ろうと画策しているのであれば、きっと総数はこの十倍を軽く超えているはずだ。
 もちろん、最初からこいつらの殲滅が目的ではないし、キャリン達を回収したらとっととずらかるつもりではあるのだが……そのキャリン達がいつまで経っても現れない。

 正面の敵を斬り伏せて、脇から隙をついたつもりの槍を余裕で回避してそいつも一刀で黙らせる。
 背後から迫りくる殺気――というか隠す気もない足音の踏み込みに合わせて振り返りながら後ろに飛び退ると、俺の眼前を短剣が掠めていった。
 あっぶねぇ、もう少しリーチのある武器だったらちょっとヤバかった……やっぱ、こういう多勢に無勢の戦闘じゃ疲労はごまかせないか。

 その短剣が大きく振り抜かれるのには目もくれずに大振りな攻撃の隙を頂こうとして、何故か視線が短剣から剥がれないことを怪訝に感じて……それがどこかで見覚えがある気がして……視線に意識を集中したら、それは見紛うことなき『あの短剣』で――。

 気が付いたら俺はオークの手元に斬撃を送り込んでいた。俺の太ももくらいある手首を切り落とすことは不可能だと瞬時に判断して、その指先を狙う。
 ここで意表を突く出来事が起こった。
 死角からすくいあげる小手狙いを、そのオークは芋虫みたいな指先を巧みに操ってダガーを回し、弾き返して見せたのだ。
 初めて、オークに俺の攻撃が防がれた……その衝撃は少なくない。
 だけどそれ以上に衝動が強かった。いつまでも波打つ水面のような衝動が、ポッと浮かんだ衝撃を飲み込んで意識の水底に飲み下す。

 それがあとわずかにでも遅れていたら、俺の人生はここで終わっていたかもしれない。
 俺の攻撃を弾いて翻(ひるがえ)った短剣が、剛腕に支えられて打ち下ろされてきたのだ。迂闊に受ければ刃で裂かれる以前にその圧力に叩き潰されてしまうような重い一撃だ。
 唸りを上げて落ちくる短剣と腕の一撃を、全身のバネを動員して後ろに飛び退る。瞬歩を使う間もない一瞬の攻防だった。

 三メートルほど間合いを開けて、睨み合う。もしこれが相手の思惑だとしたら結構マズい。
 だって、こうしてお互いに隙を見せず膠着しているだけで、俺の周囲を仲間のオークが固めてくれれば状況はどんどんアイツに有利になっていく。
 そういう状況を利用しようとするなら、相応の脳みそが必要になってくる。今までのオークには見られなかったお利口さだ。
 
 そういえばオークの階級はキングと一兵卒だけじゃなく、その中間にいくつか種類があるように聞いた覚えがある。
 いわゆる隊長格のオークは『ハイオーク』と呼ばれていたはずだ。
 もしかして、角付きの鉄兜に革鎧を付けたこいつがそのハイオークなのか。そう考えればいろいろと納得がいく。

 まあいずれにしろ、俺の攻撃を防いだことと言い、状況を利用して戦いを有利にしようとする判断と言い……少なくともこのオークが今までのオークとは一線を画す相手なのは間違いない。
 そんなのといつまでものんびりにらめっこしていたら、完全に包囲されて袋叩きのやりたい放題にされてしまう。
 俺はすぐさま手を打った。

「ルルっ! 援護してっ!」

「ぇぇっ!? ぃきなりなんですかもぅっ」

 有無を言わさぬ俺の指示に、不平を漏らしつつもルルがその矛先を転じた。背後に迫っていた一体の頭上に落雷が生じ、焦げた匂いが辺りに広がる。
 ひとまずこれで一対一の状況を長引かせることには成功した。
 こいつには、ゆっくりと聞きたいことがあるからな。

 余裕の態度で短剣を弄ぶハイオークを睨み据える。いや、正しくは短剣を睨んでいる。
 その短剣はひどく汚れていた。脂と埃と、古い血で。
 このオークが持っているとやたら小さく見えるが、俺のショートソードより短いながらそれはダガーとしては大振りだ。
 その印象も全く同じなら、刀身と柄が一体成型で鍛えられた造りも、柄元が円形に膨らんで大雑把な太陽の文様が彫り込まれているのも、記憶の中の『あの短剣』と合致する。
 しかしそれだけならどこにでもある短剣だから、『あの短剣』と見間違えている可能性は十分にある。

 そう願いつつ、まずはあの短剣を手中に収めることを第一に俺は踏み込んだ。
 普通の踏み込みだ。左から疾(はし)らせた横薙ぎの一閃は、あっさりとダガーに弾き返された。
 完全に合わせられたパリィで、手首に痺れが走る。でも剣撃は囮だ。

「二十三式・甲、トフス・エリフ・エドルプクスェ!」

 弾かれた力を利用して上半身を捻り、突き出した左腕からこっそり構築していた門晶術を解き放つ。
 さっきも使った爆発する火球だ。もちろん炎が効かないことは身に染みてわかっているからそこには期待していない。
 でも火に強くったって、直接ぶつけた爆発の衝撃なら話は別だろう。打撃が有効なのはさっきの集団戦で蹴りに怯んだオークで確認済み。
 案の定、不意を突かれてまともに顔面を爆発させたハイオークは、脳震盪(のうしんとう)を起こしたのかよろめいてたたらを踏んだ。

 その大きな隙に手首の痺れを回復させた俺は、立ち竦むオークが持つ短剣めがけて刃を振るった。
 緩やかに振るわれた刃が太くて短い四指を斬り落とし、持っていたダガーを地面に落とさせる。
 血と、地鳴りのようなハイオークの絶叫が噴き出した。
 膝を折って泣き咽(むせ)ぶハイオークは無視して落ちたダガーを拾い上げ、柄尻の意匠に指を伸ばす。
 そして躊躇(ためら)う。

「もしここに……」

 すぐそばにルルの門晶術が炸裂して、腹の底に響く爆発音が俺の髪を揺らした。だけどその轟音よりも自分の心音の方が大きく聞こえる俺には気にもならない。
 それどころか、命のやり取りの場だというのに周りの状況そのものがどうでもよくなっていた。血流が胸のあたりにわだかまったようで、頭の芯が寒い。

「それでも……」

 それでも確認しなくちゃいけない。確認しなくちゃ、俺がこの後どうすればいいのか、決めらんない。
 凍(こご)えたせいか考えの纏まらない頭を叱咤して、意匠にあてた手へ指示を出した。

 震える指先をこすりつけて、柄尻の汚れを落としにかかる。
 もしそうであれば、ここにジノの名前が彫ってあるはずだ。いつかは忘れたが、キャリンと呑んだ時にのろけついでに自慢された事だからイヤに記憶にこびりついている。
 それが無ければ、これは見ず知らずの誰かさんの落とし物だ。

 そうである事を願ってこびりついた黒い血汚れを引っ掻くように落とす。
 焦りが指先を急かした。震えの治まらない指先は、痛いくらい強く短剣をこする。汚れはボロボロとかさぶたのように剥がれ落ちて、俺の白い指先を赤く染める。

 やがて、やかましいくらいだった鼓動の響きが止んだ。耳に痛いくらいの静寂が俺の内から染みだしてきた。

 見覚えのある場所に、見覚えのある文字が、見えてしまった。

 そう認識した瞬間、俺の身体は思考を置いてきぼりにする速さでハイオークの懐まで跳んでいる。
 相手の巨体を巻き込むように背後へ回り込むと、手にした小剣を一閃させて両の踵(かかと)の腱を断ち切った。
 ハイオークの身体が背後に向かってドウッと丸太のように倒れる。辛うじてその巨体を躱し、あおむけになったその喉元に切っ先をぎらつかせて叫ぶ。

「これをどこで手に入れたのっ」

「……トブ・イブ・グニィク……」

 短剣を持っていたハイオークは、こちらの言っていることを理解したのかどうかそう返してきた。
 力量の差を見せつけられた上、痛みのせいか俺の気迫か、ずいぶん大人しくなった。痛みの合間から絞り出した声音も素直だ。

 でも意味が分からない。
 焦りに火が付いた。

 俺の視界を剣光が奔(はし)る。もちろん俺の振るった刃だが、そうしようと考える前に身体が勝手に動いていた。
 細身の鉄刃は正確にハイオークの不格好な右耳を削ぎ落して、顔の右半分を血に染め上げた。
 再び、悲鳴が迸(ほとばし)る。

「ゴオォォウゥッ、ギョオォウゥッ」

「……まさか、この悲鳴をまた聞く日が来るなんてな」

 聞き慣れない人間であれば神経を掻き削られるような悲痛な叫びは、むしろ俺の心をどんどん冷たく平坦な氷のように冷やしていく。
 身体が自然とそういう風になるのは、一種の防衛本能が成せる業だ。俺だって、好き好んでこんな絶叫を聞きたいわけじゃない。
 でも、アマルのシューとして生きていた時期は、脱走しようとたり分をわきまえない商品に対して、身の程を知らしめる意味で拷問と呼んでもいいレベルの虐待を行うのが仕事の一つだった。

 アマルのシューの責めは王宮仕込みの本物の拷問吏だった同僚に仕込まれたものだ。
 そいつはこの悲鳴を嬉々として奏で、楽しそうに人の形を壊していた。そして、あの襲撃の夜、教えた拷問の技で俺に殺された。
 それももう文字通り別世界の話なわけで、この知識がまさかこの人生で役立つ日が来るとは思わなかった。

「あたしにわかる言葉で答えなさい。長生きしたいのならね」

 言うことを聞かせる為の拷問のコツは『今やめてもらえれば、人間としてまっとうな人生に戻れる』という希望を失わないように、最大限の苦痛を与えることだ。
 それは肉体的な苦痛も精神的な苦痛も変わらない。苦痛を与えすぎると死んだほうがマシだと開き直られる事がある。そうなっては元も子もない。 

 そして今の俺は明らかにやり過ぎていた。
 冷え切った氷の蓋が、煮え滾った感情に耐えかねて心を爆発させかけている。
 冷静さは意識の表層だけで、やりすぎだし短絡的だし乱暴だしでかつての手練手管の一欠片も見いだせない。
 こうした加虐的な心境は凄惨な光景に萎えることなく対象を責め続けられるが、どうしたってやりすぎるきらいがある。
 行き過ぎても相手を開き直らせるだけ。わかっているのに、どうしようもなかった。

「今度はちゃんと公用語で答えて。この短剣をどこで手に入れたの?」

「モ……ラタ」

 しわがれた声が喘ぎ喘ぎ紡いだ声は、かろうじて『貰った』ほどの意味に捉えられた。

「誰に」

 声音だけは淡々としている自分の言葉を、他人のもののように聞く。

「グニィク……」

 喉元に突きつけていた剣をわずかに横へずらし、切っ先を無造作に肩の肉へ突き込んだ。
 桃色の皮膚が破け、血が溢れてくる。
 わずかに遅れてくぐもった苦悶が、驚愕の表情を浮かべた血濡れの顔から漏れた。

 こんなにあっさりと傷付けられるとは思ってもみなかったって顔だ。
 俺も同感だよ。抑えが効かなくてな。まだるっこしいとすぐ手が滑っちまう。

「グ……グニィク……ハ……グニィク……ダ……」

「……そう」

 どうやらグニィクというのは固有名詞みたいだな。

「ならそのグニィクはどこにいるの?」

「オ……ク……」

「奥、ね」

 根絡みの大空洞の奥、原生林に隠れた向こう側を見遣る。
 もちろん、濃緑色と影のスクリーンに阻まれて、何かを見取ることはなかった。
 その時だ。抵抗の意思は消え失せていると思ったのに、ハイオークがそのままの姿勢から腕を振るって俺の足を払いにきた。

 もしこの悪あがきが図にあたってれば、俺はそのままハイオークに組み敷かれていただろう。
 そうならなかったのは、その可能性を一瞬たりとも俺が忘れていなかったからだ。

 煤けた床を撫でる剛腕をヒョイっと飛び越え、そのまま空中で小剣を軽く払う。
 狙い通り、切っ先がハイオークの落ち窪んだ両目を深く抉った。完全に失明したろうな、こりゃ。

 でもこれから死ぬ奴には必要ないだろ。目も、耳も、身体もさ。
 止めを刺そうとしたところで、ふと心付き尋ねる。

「あんたは、この短剣の持ち主を知ってる?」

「オヌゥドゥ!」

 意味は分からないが語気からろくでもない意味だってのは十分理解できた。
 答える気はないらしい。そして答えを知ってるとも思えない。
 もう聞きたいことは聞けたし、こいつは用済みだ。せめて最後くらいは楽に死なせてやるかな。

 まだ何事かを喚き散らしているハイオークの口に切っ先をねじ込むと、衝動に任せて構築した乱暴な門晶術を開放する。

「二十三式・甲、グニンスギル・ドラフ・エドルプクスェ!」

 あくまで火に強いのは皮膚だけだと、その時確認できた。
 頭部を爆発で吹き飛ばされたハイオークの身体は、衝撃でビクンとのたうってそれきり動かなくなった。

 周囲では相変わらずルルの雷門晶術が猛り狂っている。どこかやけっぱちにも思える激しさだ。だけどおかげで一匹たりとも俺に寄り付くことはなかった。
 そもそもがルルの攻撃の激しさに辟易して、ほとんどが彼女の方へと向かったようだった。
 それでもわざわざ突っかかってきた一体を軽く斬り伏せて、オーク集りが出来ているそちらへ瞬歩で跳ぶ。
 
 包囲しているという安心感からか、団子の外でボケっとしていたオークを背後から刺し貫いたのを皮切りに、刃の届く限り独壇場に振舞ってルルまでの活路を切り開く。

 五体ほど切り倒した時だったろうか。ルルの姿はまだ見えなかったが、俺の手足が快進撃を止めた。
 俺の意思で止めたわけじゃない。制止したのは俺の無意識だった。
 その理由もすぐに理解する。オーク団子の中心近くからピリピリとしたエーテルの波が沸き起こったのだ。
 理由を解するのとほぼ同時に身体が動いていた。血の匂いが濃く漂う血路を、オークの死骸に躓(つまづ)かないよう急いで後退する。

 エビのように飛び退ったその鼻先に、雷光が閃いた。遅れて数十個の風船を一度に割ったような破裂音が前身を打つ。ルルが全周囲に門晶術を解き放ったのだ。
 威力はほとんどないようで、ルルを寄って集って包囲していたオーク達に電撃痕や火傷といった類のひどい損傷は見て取れない。

 だけどルルの周囲にいたその全員が、遺跡の床に突っ伏して痙攣に身悶えていた。
 何が起こったのかわからずに立ち尽くしていると、小山のようなオークの身体を乗り越えて、ひょっこりとルルの顔が昇ってくる。
 ややげんなりした様子だが、これといった怪我もなさそうで一安心だ。

「ルル、よかった、無事だったわね」

 小刻みに蠢(うごめ)く肉の丘の上で、黒い衣装の裾をはたいていたルルが嘆息した。

「暑苦しぃ事この上なかったですょ……目的は果たせたのですか」

 なんだかんだ言いつつ、ルルはちゃんと俺の思惑を理解してくれていた。
 やっぱ、頭の回転が速い奴は話が早くて助かる。

「ええ、ありがとう、終わったわ。おかげで次の目標も定まった」

「このままオーク相手に馬鹿騒ぎを続けるんじゃなぃのですか」

「ええ、ちょっと話を聞かなきゃいけない相手ができたから」

 少し声が固くなるのを、自分自身でも感じていた。ルルはなおさらだろう、訝しげに眉根を寄せる。

「聞かなきゃぃけなぃ事、ですか……一旦戻るのですか?」

 ま、そりゃそう考えるわな。
 こんなところに話の通じる相手がいるとは誰も思いやしないだろう。俺だって思わない。
 だけど、話を聞くというのが最初から言葉のやり取りで、なんて決まりはない。
 意思疎通の叶わぬ半魔獣が相手である以上、俺は最初から力尽くで知りたい事を聞き出すつもりだ。
 
「帰らないわ。だって、その相手はこの奥にいるんですもの」

「奥に?」

 ルルの細い眉がいっそう奇妙に縮こまった。

「ええ、目指すはオークキングのねぐらよ」

「オークキングって……」

 ルルが浮かべようとした戸惑いは、しかしすぐに臨戦態勢にすり替わった。俺も小剣を構え直す。
 相も変わらず一体どこから這い出して来るのやら、奥へ続く原生林の方からも、俺達が切り拓いてきた焦土の原野からもオーク達が三々五々群れ集ってきたのだ。
 だがもうまだるっこしい総力戦は無しだ。
 大騒ぎしてキャリン達に気付いてもらうという目的は、オークキングにキャリン達の行方を問うというものに替わった。もう敵が変われば戦い方も変わる。
 今度は目的地に向けて一点突破だ。これなら防御を考えなくていい分やり易い。

 目的が刷新されて俺の意気は少なからず上がったが、必ずしも快い変化ではなかった。
 キャリンの無事が敵の手に委ねられたという事は、それだけ彼女達の身の危険が増えたという事だからだ。

「急ぐわよ。オークの守りが分厚いところを狙って一点突破で突き進む!」

 これだけの軍勢のリーダーともなれば、一番安全な所にいるはずだ。
 そしてその場所を一番安全たらしめるには兵士の壁が必要不可欠だ。
 だから雑魚オークの多い方角こそ、オークキングの根城へ続く道だと踏んだのだ。

「ゃる事は変わりぁりませんね……ぃぇ、前だけ見てぃればぃぃのなら寧(むし)ろ楽勝です」

 ルルの頼もしい宣言に背中を押され、俺は武器を掲げて走り寄ってきたオークを斬り抜けつつ原生林の低木に飛び込んだ。
 キャリン達に発見されにくいという不利であった森が、今度は突き進む俺達を隠して有利になる。

 唐突に、身体が軽くなった。
 この感覚は『ラエウ』だ。
 加速する身体の感覚と普段通りのままだった意識を慌てて擦り合わせていると、ルルが悪戯っぽい顔で俺の横に並んだ。

「吃驚(びっくり)しました?」

「別に」

 不敵に微笑み返して、『ラエウ』の本領を発揮する。
 向かうは根絡みの大空洞の奥地、そのどこかにあるはずのオークキングの根城。
 そこに、俺がこんなところまで追い求めてきた彼女の手掛かりが待っている。

 それがわかれば、きっとキャリン達を助けられる。
 でも、それを知れば、ずっと考えないようにしていた懸念を否定しきれなくなるかもしれない。
 だからこそ、早く確認したい。

 期待と不安の双方に急き立てられ、名も知らぬ樹木が密生した原生林を疾駆する。
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