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捨てられ令嬢、騎士団に入る
アティ、セドリックの姫様になる
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そのとき、バートがアティたちの元へやってきた。
「エドワードさん、どうしたんですか? 何か不具合でもありましたか?」
「ああ、あなたさまは冬の大精霊さまですね! 皆さまに、ご説明ください。彼女がフェオールの姫様だと!」
仲間に会えて喜んでいるセドリックは、バートに向かって手を振る。
バートは、ふむ、と考えるように声に出した。
「え、バートさんって精霊さんなんですか? 確かに、精霊さんたちみたいに綺麗ですよね」
アティは薄緑の瞳でバートを見つめる。すると、バートは違う、と首を横に振った。
「僕は冬の大精霊と人間のクォーターだよ。見た目は精霊に近いらしいけど、僕は人間の血の方が濃いみたいだ。よく精霊と勘違いされるけどね」
「そうなのですか……」
一気にシュンとなったセドリックに、バートは困ったと眉を下げた。
「期待させたようで、すまないね。精霊と会いたいなら、四季の神殿に行くといい。彼らなら快く受け入れてくれるよ」
「いえ、違うのです。わたくしは精霊に会いたいのではなく、姫様に会いたかったのです! そして、姫様は今、わたくしの目の前にいらっしゃるのです!」
セドリックは大きな瞳をウルウルと涙でにじませて、アティを見つめる。
「……ふむ、バートを精霊と間違えたということは、アティくんも姫様と間違えているのではないか? もしかすれば、君の姫様の娘だったり孫だったりするのでは?」
エドワードは別の案を提案した。
「……いいえ、姫様は姫様なのです。わたくしは壺の中で、ずっと姫様を思い続けてきました。だから、姫様はわたくしの目の前にいらっしゃるこのお方なのです。
その顔立ちも色彩も声も、全てが姫様のものだとわたくしの心が訴えているのです!」
セドリックの必死な心が込められた声に、全員の胸が揺さぶられる。
「そうか……アティくんに危害を加えないと誓うのなら、君を離そう」
「ええ、わたくしは決して姫様を傷つけません! どうかお離しください!」
「ああ、君の必死さを信じよう」
エドワードは腹を掴んでいた指を離した。
そして解き放たれたセドリックは、アティの胸に飛び込む。
「姫様、アルティレイシア姫様、ずっとお会いしたいと思っていました……!」
胸元で声をあげて泣くセドリックに、アティは困ったように眉を下げた。こんなに喜ばれているけど、人違いだなんて可哀想だわ。彼女はどうすればいいか悩んだ。
「アティくん」
エドワードに呼ばれたアティは、彼の方を見た。
彼は優しい父のような顔で、2人を見ている。それだけで、アティは勇気づけられ答えが出た。
「ねえ、セドリックさん。これから、よろしくね」
アティは胸元で泣いているセドリックに、柔らかく微笑んだ。その姿は、まるでお姫様のようだった。
「ひ、姫様ぁ! あなたに再び仕えることができて、わたくしは幸せ者です!」
そんな2人の横で、バートはエドワードに話しかけた。
「エドワードさん、セドリックとやらを本当に信じたんですか? アティは確かに人間離れした容姿ですけど、人間ですよ」
「それはこれから調べればいいだけだ。神や精霊のイタズラや呪い、この世界はなんでもあるからな」
バートは、そうですね、と頷いた。エドワードの言葉には何1つ反論するところはなかったからだ。
「今は囚われていた精霊を助けることができて、その精霊が喜んでいる、それだけでいいだろう」
エドワードの星が煌めく瞳は、楽しそうに細められていた。そんな彼のように、バートもこれからを思う。自然と笑顔が生まれた。
そして、喜びながらもこちらの様子をうかがっているハロルドたちに、エドワードは声をかける。
「おい、今日は俺の奢りだ! どこにでも連れてってやるぞ!」
「やったー! エドワードさん、あそこ連れてってください!」
ディーンは嬉しそうにエドワードの元に駆けてくるのだった。
「エドワードさん、どうしたんですか? 何か不具合でもありましたか?」
「ああ、あなたさまは冬の大精霊さまですね! 皆さまに、ご説明ください。彼女がフェオールの姫様だと!」
仲間に会えて喜んでいるセドリックは、バートに向かって手を振る。
バートは、ふむ、と考えるように声に出した。
「え、バートさんって精霊さんなんですか? 確かに、精霊さんたちみたいに綺麗ですよね」
アティは薄緑の瞳でバートを見つめる。すると、バートは違う、と首を横に振った。
「僕は冬の大精霊と人間のクォーターだよ。見た目は精霊に近いらしいけど、僕は人間の血の方が濃いみたいだ。よく精霊と勘違いされるけどね」
「そうなのですか……」
一気にシュンとなったセドリックに、バートは困ったと眉を下げた。
「期待させたようで、すまないね。精霊と会いたいなら、四季の神殿に行くといい。彼らなら快く受け入れてくれるよ」
「いえ、違うのです。わたくしは精霊に会いたいのではなく、姫様に会いたかったのです! そして、姫様は今、わたくしの目の前にいらっしゃるのです!」
セドリックは大きな瞳をウルウルと涙でにじませて、アティを見つめる。
「……ふむ、バートを精霊と間違えたということは、アティくんも姫様と間違えているのではないか? もしかすれば、君の姫様の娘だったり孫だったりするのでは?」
エドワードは別の案を提案した。
「……いいえ、姫様は姫様なのです。わたくしは壺の中で、ずっと姫様を思い続けてきました。だから、姫様はわたくしの目の前にいらっしゃるこのお方なのです。
その顔立ちも色彩も声も、全てが姫様のものだとわたくしの心が訴えているのです!」
セドリックの必死な心が込められた声に、全員の胸が揺さぶられる。
「そうか……アティくんに危害を加えないと誓うのなら、君を離そう」
「ええ、わたくしは決して姫様を傷つけません! どうかお離しください!」
「ああ、君の必死さを信じよう」
エドワードは腹を掴んでいた指を離した。
そして解き放たれたセドリックは、アティの胸に飛び込む。
「姫様、アルティレイシア姫様、ずっとお会いしたいと思っていました……!」
胸元で声をあげて泣くセドリックに、アティは困ったように眉を下げた。こんなに喜ばれているけど、人違いだなんて可哀想だわ。彼女はどうすればいいか悩んだ。
「アティくん」
エドワードに呼ばれたアティは、彼の方を見た。
彼は優しい父のような顔で、2人を見ている。それだけで、アティは勇気づけられ答えが出た。
「ねえ、セドリックさん。これから、よろしくね」
アティは胸元で泣いているセドリックに、柔らかく微笑んだ。その姿は、まるでお姫様のようだった。
「ひ、姫様ぁ! あなたに再び仕えることができて、わたくしは幸せ者です!」
そんな2人の横で、バートはエドワードに話しかけた。
「エドワードさん、セドリックとやらを本当に信じたんですか? アティは確かに人間離れした容姿ですけど、人間ですよ」
「それはこれから調べればいいだけだ。神や精霊のイタズラや呪い、この世界はなんでもあるからな」
バートは、そうですね、と頷いた。エドワードの言葉には何1つ反論するところはなかったからだ。
「今は囚われていた精霊を助けることができて、その精霊が喜んでいる、それだけでいいだろう」
エドワードの星が煌めく瞳は、楽しそうに細められていた。そんな彼のように、バートもこれからを思う。自然と笑顔が生まれた。
そして、喜びながらもこちらの様子をうかがっているハロルドたちに、エドワードは声をかける。
「おい、今日は俺の奢りだ! どこにでも連れてってやるぞ!」
「やったー! エドワードさん、あそこ連れてってください!」
ディーンは嬉しそうにエドワードの元に駆けてくるのだった。
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