ライオンガール

たらこ飴

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第1章〜サーカス列車の旅〜

サーカス列車⑤

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 間も無くルチアが戻ってきて2人分のパンと温かいブランケットをくれた。団長はまだ酒に酔って寝ているから、私たちが旅を続けられるかどうかの返事は明日になるらしい。

「ちゃんとした布団がないのが申し訳ないけど……今日のところはこれで勘弁して。もしパパの許可が出れば、男の人たちの寝室で寝られるわ」

 ルチアが去ったあと、ケニーは倒れ込むように眠り出した。極度の緊張と肉体的疲労から解放されたためか。間も無く大きな鼾が聞こえてきた。檻の中のライオンは突然の来客に混乱しているのか、凄まじい咆哮を上げ続けている。眠りにつこうなどという考えは早々に放棄した。

 固い地面に横たわりルチアがくれたブランケットを体にかけると、微かなカビの匂いがした。

 ライオンの咆哮×ケニーの鼾のセッションのおかげで眠れずにいたら、ドアの隙間から誰かの目が覗いているのに気づいた。

「誰?」と聞くとピシャリとドアが閉められた。

 数分後ドアが開いたかと思うと、暗闇からぬっと巨大な影が現れた。驚いて思わず「わっ」と叫んでしまった。あんまり大きくて、トロールか何かだと思った。2メートルはあるであろう巨体のその人物は、無言で何か粒のような小さなものを投げるとすぐにいなくなった。床に転がるそれが耳栓だと気づいて、「ありがとう!」と大声でお礼を伝えたが聞こえたか謎だ。無口だが良い人みたいだ。

 耳栓を両耳に突っ込み、微かに耳に流れ込んでくる籠った音ーー車輪が軋む音と「ブオオオンッ」と檻に反響するライオンの鳴き声、そして伯父の鼾を聴きながら、未来のことに思いを馳せる。不安がないわけではない。だけど、少なくとも今までよりは良くなるんじゃないか。思えばこんなに自分の意思を貫こうとしたのは、生まれて初めてだった。これまで好きでもない人と付き合い、好きでもないものを好きになろうと無理をしたり、誰かに合わせることでしか安心感を得られなかった。これは違うんだと心の中の自分が言っているのに、聴こえないふりをしていた。

 でも今の気持ちはーーこの列車に乗ってオーロラに会いに行きたいという気持ちは、紛れもなく本当だと思える。ペネムにぼったくられた2万ペソのお金よりも、ディアナとガブリエルの恋人とはとてもいえないようなくだらない主従関係よりも、ずっと真実で揺るぎないものだと。当たり前だ。世の中の形のある全てのものと比較なんてすることも馬鹿らしいくらいに、オーロラと私の友情は最強なんだから。
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