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26. 2人の夢
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言うまでもなく、ジェームズは娘がパウロと結婚することに最初猛反対だった。だが一度こうと決めたらテコでも動かない性質のセシルは決して折れることなく、しまいには父親に向かって「結婚を許してくれなければ父子の縁を切ります」とまで言い放った。目に入れても痛くないほど娘を溺愛していたジェームズは彼女を手放したくない余り、泣く泣くその要求を飲まざるを得なくなった。
こうしてパウロとセシルはめでたく結婚した。
5年後パウロは勤めていたホテルを辞め、貯めていたお金で念願のパン屋を開店した。彼は行方知れずのペドロを3ヶ月かけて探し回り、ロンドンの山奥の炭鉱で働いているのをようやく見つけて自分の店で働かないかと誘った。親友との久しぶりの再会と嬉しい提案にペドロは嬉しそうに何度も頷いた。炭で真っ黒な頬に幾筋もの涙が伝った。
ペドロは優秀なパン職人に成長した。パウロは親友の目覚ましい技術の向上を喜び感心したものの、別段驚きはしなかった。何故なら彼は知っていたのだ。ペドロには他の人にない特別な才能があることを。
スペインに住んでいた頃、パウロはよく近所に住むペドロの家に遊びに行っていた。パウロが遊びに来るとペドロはいつも自分で作ったパンをご馳走してくれた。そのパンは店で買うものとは比べ物にならない格別な味がした。
ある日いつものようにペドロの作ったパンを食べ終えたパウロは言った。
「いつか2人でパン屋をやろう。お前がパンを作って俺が売るんだ」
その言葉にペドロは満面の笑みで頷いた。
2人の夢は叶ったのだ。
こうしてパウロとセシルはめでたく結婚した。
5年後パウロは勤めていたホテルを辞め、貯めていたお金で念願のパン屋を開店した。彼は行方知れずのペドロを3ヶ月かけて探し回り、ロンドンの山奥の炭鉱で働いているのをようやく見つけて自分の店で働かないかと誘った。親友との久しぶりの再会と嬉しい提案にペドロは嬉しそうに何度も頷いた。炭で真っ黒な頬に幾筋もの涙が伝った。
ペドロは優秀なパン職人に成長した。パウロは親友の目覚ましい技術の向上を喜び感心したものの、別段驚きはしなかった。何故なら彼は知っていたのだ。ペドロには他の人にない特別な才能があることを。
スペインに住んでいた頃、パウロはよく近所に住むペドロの家に遊びに行っていた。パウロが遊びに来るとペドロはいつも自分で作ったパンをご馳走してくれた。そのパンは店で買うものとは比べ物にならない格別な味がした。
ある日いつものようにペドロの作ったパンを食べ終えたパウロは言った。
「いつか2人でパン屋をやろう。お前がパンを作って俺が売るんだ」
その言葉にペドロは満面の笑みで頷いた。
2人の夢は叶ったのだ。
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