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草花の祈り
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♬
どうしてあなたは泣いているの?
夢に破れたの?
誰かに笑われたの?
それとも孤独なの?
私はただの一輪の花
誰の目にも止まらない
だけど私は見ている
あなたが花開くのを
そしていつの日か咲き誇るのを
私は見ている
孤独に打ち勝ち
夢など持ったって無駄だと
お前に価値はないと笑った人たちに
その言葉は
努力は
夢見る気持ちは
嘘ではなかったと証明するのを
♬
歌の直後、客席から大きな拍手と歓声が上がる。
オルファの母は、娘の歌を聴いてエプロンで涙を拭う。
「オルファ……。私は、母親に夢を見るのは無駄だと言われて育った。私は自分の言うことが...。親や親戚や、周りの大人たちの言うことが正しいとばかり思っていた。だけど、間違っていたのは私だったのかもしれない」
「お母さん……」
母の元へ駆け寄り、抱きつくオルファ。娘を抱きしめ、涙ながらに語る母。
涙をハンカチで拭う女性客、目を潤ませる男性客の姿も見える。
「私も子どもの頃は、お前と同じように歌手を夢見ていた。教会で歌って、上手だと言われるのが嬉しくてね。だけど、貧乏な私には無理だと諦めた。本当は今でも思うよ、あのとき夢を諦めていなければ、どうなっていたんだろうと。私はお前に、私と同じ道を辿らせようとしていたのかもしれない」
「お母さん……。お母さんは寝る間も惜しんで働いて、私を育ててくれた。私が歌手になったら、今よりずっと大きな家を建ててお母さんを楽にしてあげる。だからお母さん、見ていて。私が夢を叶えるのを」
「ああ……ああ……見ているとも。夢を持つななどと言って悪かったよ。私は応援する。お前の歌を聴いて分かった。お前にはすごい才能がある、私以上にね」
その後、評判が評判を呼び、生徒は15人ほどに増えた。そんなある日、ルイーズが子どもたちに向かって言う。
「みんな、オーディションに出てみない?」
戸惑いと、喜びをあらわにする生徒たち。ルイーズが言うオーディションとは、パリで行われる『フレンチ・ビッグタレント』という世界規模のオーディションだ。これで優勝すれば、CDデビューと世界ツアーが待っている。
「私たちにできるかしら?」
とハナが不安げに言う。
「きっとできるさ、俺たちなら」
とフリッツ。
「力試しだと思って出てみるのもいいかも」
と姉。
「そうね、楽しそうだし」
とパール。
「きっと、今のあなたたちなら優勝を目指せるわ! 自信を持ってやってみましょう!」
先生の言葉に、皆同時に頷く。
そして迎えたオーディション当日。会場からハナがいなくなる。それを探しに行くフリッツ。
「ハナ、どこにいるんだ、ハナ!!」
あちこちを駆け回って探していると、ハナが隠れている。
「こんなところにいたのか、ハナ。もう本番が始まる。さあ、みんなのところへ行こう!!」
大きく首を振るハナ。
「私には無理……。あんな大勢の人の前に出るなんて怖くてできない!! 今日は欠席するわ!」
「ハナ、そんなの無理だ。この日のために、みんなで一生懸命練習してきたじゃないか!!」
「私はみんなよりも歌が下手くそだし、あなたみたいに綺麗な声が出せない。きっと私は失敗して、みんなの足を引っ張るに決まってる。私なんかいない方がいいわ」
「そんなことあるもんか! ハナ、俺はお前の声が1番好きだ。俺はこれまで散々馬鹿なことをしてきた。万引きもして、喧嘩もして‥‥‥周りの大人たちからは、『こいつはろくでもない大人になる』って言われ続けてた。すごく辛かったよ‥‥‥。誰も俺のことなんか分かってないと思ってた。だけどある日、お前が歌っているのを聴いた。まるで心が洗われるみたいに、嫌なことも忘れてしまった。ハナ、お前は特別だよ」
「フリッツ……」
「失敗するだなんて考えなくていい。先生が言うように、お前らしく、心を自由にして歌えばいいんだ」
立ち上がるハナ。
「私、やってみるわ。私、学校でアジア人だって差別されて、引っ込み思案な性格なのもあって、ずっといじめられてたの。私なんか脳なしだ、何もできないって言われたこともある。だから、自信がなかったの。だけど、あなたのおかげで怖さがなくなったわ。ありがとう、フリッツ」
「そうだ、そのイキだ!! 行こう!!」
ハナの手を取り、駆け出すフリッツ。
ーー舞台は暗転。
オーディションが始まる。皆で励まし合いながらステージへと向かう。観客の拍手に迎えられて、ステージに立つ子どもたち。ルイーズのピアノの伴奏で歌が始まる。ちなみにこの歌詞は、ソニアだけでなくキャストの皆で考えたものだった。
どうしてあなたは泣いているの?
夢に破れたの?
誰かに笑われたの?
それとも孤独なの?
私はただの一輪の花
誰の目にも止まらない
だけど私は見ている
あなたが花開くのを
そしていつの日か咲き誇るのを
私は見ている
孤独に打ち勝ち
夢など持ったって無駄だと
お前に価値はないと笑った人たちに
その言葉は
努力は
夢見る気持ちは
嘘ではなかったと証明するのを
♬
歌の直後、客席から大きな拍手と歓声が上がる。
オルファの母は、娘の歌を聴いてエプロンで涙を拭う。
「オルファ……。私は、母親に夢を見るのは無駄だと言われて育った。私は自分の言うことが...。親や親戚や、周りの大人たちの言うことが正しいとばかり思っていた。だけど、間違っていたのは私だったのかもしれない」
「お母さん……」
母の元へ駆け寄り、抱きつくオルファ。娘を抱きしめ、涙ながらに語る母。
涙をハンカチで拭う女性客、目を潤ませる男性客の姿も見える。
「私も子どもの頃は、お前と同じように歌手を夢見ていた。教会で歌って、上手だと言われるのが嬉しくてね。だけど、貧乏な私には無理だと諦めた。本当は今でも思うよ、あのとき夢を諦めていなければ、どうなっていたんだろうと。私はお前に、私と同じ道を辿らせようとしていたのかもしれない」
「お母さん……。お母さんは寝る間も惜しんで働いて、私を育ててくれた。私が歌手になったら、今よりずっと大きな家を建ててお母さんを楽にしてあげる。だからお母さん、見ていて。私が夢を叶えるのを」
「ああ……ああ……見ているとも。夢を持つななどと言って悪かったよ。私は応援する。お前の歌を聴いて分かった。お前にはすごい才能がある、私以上にね」
その後、評判が評判を呼び、生徒は15人ほどに増えた。そんなある日、ルイーズが子どもたちに向かって言う。
「みんな、オーディションに出てみない?」
戸惑いと、喜びをあらわにする生徒たち。ルイーズが言うオーディションとは、パリで行われる『フレンチ・ビッグタレント』という世界規模のオーディションだ。これで優勝すれば、CDデビューと世界ツアーが待っている。
「私たちにできるかしら?」
とハナが不安げに言う。
「きっとできるさ、俺たちなら」
とフリッツ。
「力試しだと思って出てみるのもいいかも」
と姉。
「そうね、楽しそうだし」
とパール。
「きっと、今のあなたたちなら優勝を目指せるわ! 自信を持ってやってみましょう!」
先生の言葉に、皆同時に頷く。
そして迎えたオーディション当日。会場からハナがいなくなる。それを探しに行くフリッツ。
「ハナ、どこにいるんだ、ハナ!!」
あちこちを駆け回って探していると、ハナが隠れている。
「こんなところにいたのか、ハナ。もう本番が始まる。さあ、みんなのところへ行こう!!」
大きく首を振るハナ。
「私には無理……。あんな大勢の人の前に出るなんて怖くてできない!! 今日は欠席するわ!」
「ハナ、そんなの無理だ。この日のために、みんなで一生懸命練習してきたじゃないか!!」
「私はみんなよりも歌が下手くそだし、あなたみたいに綺麗な声が出せない。きっと私は失敗して、みんなの足を引っ張るに決まってる。私なんかいない方がいいわ」
「そんなことあるもんか! ハナ、俺はお前の声が1番好きだ。俺はこれまで散々馬鹿なことをしてきた。万引きもして、喧嘩もして‥‥‥周りの大人たちからは、『こいつはろくでもない大人になる』って言われ続けてた。すごく辛かったよ‥‥‥。誰も俺のことなんか分かってないと思ってた。だけどある日、お前が歌っているのを聴いた。まるで心が洗われるみたいに、嫌なことも忘れてしまった。ハナ、お前は特別だよ」
「フリッツ……」
「失敗するだなんて考えなくていい。先生が言うように、お前らしく、心を自由にして歌えばいいんだ」
立ち上がるハナ。
「私、やってみるわ。私、学校でアジア人だって差別されて、引っ込み思案な性格なのもあって、ずっといじめられてたの。私なんか脳なしだ、何もできないって言われたこともある。だから、自信がなかったの。だけど、あなたのおかげで怖さがなくなったわ。ありがとう、フリッツ」
「そうだ、そのイキだ!! 行こう!!」
ハナの手を取り、駆け出すフリッツ。
ーー舞台は暗転。
オーディションが始まる。皆で励まし合いながらステージへと向かう。観客の拍手に迎えられて、ステージに立つ子どもたち。ルイーズのピアノの伴奏で歌が始まる。ちなみにこの歌詞は、ソニアだけでなくキャストの皆で考えたものだった。
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