日本昔話村

たらこ飴

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2. 悲しい記憶

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 走り出した車の中で権田に近況を訊かれ、鬱陶しかったので曖昧に濁した。それについて今話す気にはなれなかった。カーステレオから流れるラジオでは神社にお参りに行った直後、現代から昭和初期にタイムスリップした視聴者の体験談を紹介していた。

『いやぁ~、こんなこと本当にあるんですね。でも、無事に帰って来れて良かったですよね』

 男性パーソナリティのコメントに心の中で同意する。オカルトマニアの僕からしたらこの上ない話題だが、権田はダッシュボードに両足を乗せ、「はっ、そんなことある訳ねーだろ!」と鼻で笑っている。

「おい、足を乗せるな」

「細けぇこと言うなよ、優等生」

「黙れ」

「あ、そうだコンビニ寄ってくんね? 煙草買いたいんだわ」

 コンビニに行くにはわざわざ遠回りしなくてはならない。しかもできる限り通りたくない場所を通らなければならない。この男にばったり会ってしまったのが運の尽き。僕はため息をついた。

 無言で車を走らせる途中、交差点の側、電信柱の前に花が供えられている場所を通り過ぎた。ハンドルを握る手に力がこもる。

  幼くして親を亡くし施設で育った僕は、小学生の頃月に一度土曜日に移動図書館シマウマ号が来るのを心待ちにしていた。添乗員の女性といつも一緒に来て本の貸し出しをしてくれていた運転手のおじさんは会うたび冗談を言って笑わせてくれたり、面白くてためになる本や漫画を紹介してくれた。僕がシマウマ号で働くために図書館の司書の資格を取りたいと言ったら、運転手さんは頑張れと応援してくれた。

 だがある日どれだけ待ってもシマウマ号が来なかった。その日のニュースで運転手さんが衝突事故に巻き込まれ亡くなったことを知った。添乗員の女性は一命を取り留めたが半身不随だという。僕はあまりの悲しさにしばらくの間心を閉ざし笑えなくなり、まともにご飯も食べられなかった。

 中学生になりずっと返せていなかった本を図書館に返しに行った時、運転手さんの優しい笑顔を思い出した。図書館で働く人達の様子や児童コーナーで目を輝かせながら本の読み聞かせを聴く子供達の様子を見て、やっぱりここで働きたいと強く感じた。

 僕は運転手さんとの約束通り短大で司書資格を取る勉強を開始したが、順調には進まなかった。人間関係で挫折し単位を一つ落とした僕は中退して地元に戻った。就職活動も失敗続き、悶々とした日々を送って今に至る。
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