日本昔話村

たらこ飴

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5. 幸と松

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 道を歩く間、女性は「あなたたち、変わった格好してるわね」と言った。彼女たちは車や洋服というものを知らないらしい。

 途中地蔵が並ぶ場所を通った時二匹の狐の親子が前を横切った。見慣れぬ光景に不可解な気持ちばかりが募る。僕達は一体どこにきてしまったんだ?

 隣の男も同じことを思っていたらしく、前を歩く女性の背後で権田は俺に耳打ちをした。

「おい、俺たちまさか大昔にタイムスリップしちまったのか?」

 試しに幸に今が何年か聞いてみると、天保8年と言う。僕達は顔を見合わせた。未だ状況が飲み込めないがどうやら僕達は異世界に迷い込んでしまったようだ。

 女性の家は歩いて30分ほどの場所にあった。現代では到底見かけないような、小さな乾拭き屋根の家だった。風が吹いたら飛んでしまいそうな家を見て権田は「ひょ~、古めかしい家だぜ」と感想を述べた。

 中に入るなり権田は珍しそうに家の中を見渡した。土間の真ん中には灰の敷かれた囲炉裏があり、天井から伸びた鉄の杭にかけた土鍋が湯気を噴き上げている。

「母さん、お客さんよ」

 女性に呼ばれ、よく似た中年の女性が奥から現れた。女性は僕たちを見て「誰? この人たち」と不審そうに眉を顰めた。突然変な格好の見慣れぬ男が二人やってきたら当然の反応だろう。

「道に迷って帰れなくなったらしいの」

 女性は幸、母は松というらしい。松はかなり怪しんでいる様子であったが、土鍋の粥を木の椀によそって出してくれた。舌を火傷しそうだったが素朴な味でとても美味しかった。

 食事をしている間も松から鋭い視線を感じるので、気まずくてとりあえず自己紹介をした。

「僕は唐沢すぐるといいます。こいつは権田幻之介」

「よろしく~」

 権田がピースをすると松はまた眉を顰めた。余計なことをするなと視線を送るも権田は気づいていない。「うまっ、このお粥うまいっすねぇ~、お母さん料理の天才ですか?」と松を褒め称えている。

「お前のお母さんじゃないだろ」と言うと幸が吹き出した。松は苦笑いしている。

 権田の何にも怯まない、気づかない鈍感さが心底羨ましかった。

 食べ終わると幸がおかわりをよそってくれ、貪るようにそれを食べた。

 その日は一晩泊めて貰うことになった。座敷の布団の上でうとうとしていると、廊下から権田と幸の笑い声が聞こえた。部屋に来た権田は僕の肩をゆすった。

「幸ちゃんてすげー可愛いなぁ~。恋人いんのかな」

「知るかよ」

 内心僕も幸に好感をもっていたが、どうせ明日にはここを出る身。どうなる問題でもない。今は寝たい。一日の疲れで眠気がピークだった僕は、権田の惚気を無視し眠りについた。
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