日本昔話村

たらこ飴

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6. 謎の巨人

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 翌朝僕達は朝早く車を置いた場所に向かった。すると車の前をうろつく大男の姿が目に入った。背は2mを悠に超え、120キロ以上はあるであろう巨漢だ。男は不思議そうに車の中を覗いたり、車体を隅から隅まで眺めていたが、「おい、何してんだ!」と権田に怒られビクッと肩を震わせ走り去った。

「何だ、あのでけー奴」

「村人だろう」

 権田に怪しまれるなんてよっぽどだが、彼や他の村人達からしたら僕達の方が怪しいに違いない。

 助手席に乗り込み何度もキーを捻ってみるも、やはり車は動かない。仕方なく幸宅に戻り家の仕事を手伝うからしばらく家に置いて欲しいと頼んだ。案の定松は怪しげな若者二人を泊めることに反対していたが、幸の説得に折れ、あれこれと仕事の指示を出し始めた。

 仕事は主に畑仕事と薪割り井戸の水汲みなどだった。

 権田は僕が働いていても横で鼻をほじっているくせに、幸が薪割りをしていると「手伝いますよ」と我先に代わる。ことあるごとに幸に話しかけてはつまらない冗談で笑わせ得意になっているのが憎たらしい。

「幻之介さんって面白い人ね」

 ある日畑仕事をしていた時幸が声をかけて来た。

「あいつはただの馬鹿ですよ、脳筋です」

「のうきんってなんですか? お金のこと?」

「脳みそが筋肉でできてるって言う意味です」

「ふふっ、傑さんも面白いことを言うのね」

 幸の笑顔に癒されながらふと横を見ると、険しい顔の松が桶を二つ突き出した。

「水汲みに行っておいで、道草食ってないでさっさと帰ってくるんだよ」

 川までは15分ほど凸凹道を歩いて行かなくてはならない。

 川に辿り着くまでに、あちこちの家から村人達が顔を出し不思議そうな顔で僕を見た。井戸端会議中らしき女性数人もコソコソと耳打ちをしあいながらこちらに目を向けていて、居心地の悪い気持ちになった。

 芸能人になったレベルで高濃度の視線を浴びながら川で水を組んだが、何と桶の一つに穴が空いているではないか。また家に戻らなくてはならないのかと愕然としていたら、横からすっと桶を差し出された。今朝のあの大男だった。助かった、これでまた村人達の視線を浴びながら来た道を2往復しなくて済む。

「ありがとう、助かるよ」

 大男は何も言わずに水を汲み、のっしのっしと歩いて行った。

「後から桶を返しに行くよ!」

 大きな背中に向かって伸びかけたが返事はなかった。

 無口だがいい奴なのかもしれない。
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