7か月

彩龍

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出会い

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「よし、5分前に着いた!」
タクシーを降り約束の居酒屋の入り口に向かう。

「18:30予約の高橋です。」
「お連れ様が先にいらして、今たばこを吸ってますが、お待ちになりますか?」

「大丈夫です。先に席に通してください。」

緊張しつつも通された席へ向かい、腰を下ろす。
メニューをチェックし、何を頼もうかな~なんて考えていると、

ドカッ。と待ち人が私のテーブルの前に座る。

「お疲れさまです。」
最初に声をかけたのは私。

「お疲れさまです。」
彼もそれに続いて同じ言葉を返す。

「最初から日本酒にします?とりあえずビール?」
「あ、最初はビールにします。」

ネットゲームを通じて知り合った私達。
今日は初対面である。

チャットを通じて日本酒に興味があることがわかった彼。
近所に住んでいるということで、今度一緒に日本酒を飲みに行こうという話になった。

ビールが届き、まず乾杯。
メニュー表を見て気になっていた料理をいくつか注文する。

「仕事は…コールセンターで働いています。」
切り出したのは彼の方からだった。

「あ、隣町の大きいところ?」
「そうです。前職は横浜の居酒屋で総理長をしていました。」
聞けば、3店舗100人規模の高級店を一人でまとめていたとのこと。

「若いのにすごいね。」
つい、年よりくさいことを言ってしまう私。

「中卒で…高校は入学してすぐに先輩と揉めて退学しました。」
早くから社会に出ているせいか、聞いていた年齢よりも大人っぽく感じる。

「私は…建設業関係で事務員の仕事をしてます。」
職場を特定されると困るので、濁した表現をする私。

「名前は龍也です。難しい方の龍にナリで、リュウヤと読みます。」
「へぇ、かっこいい名前ですね。私は、うすぎぬの紗に恵と書いてサエです。」

ぎこちない会話を続けながら、少しずつお酒を飲み進める。
ビールから始まり日本酒をいくつか頼み、いい時間になった。

「そろそろ出ますか。」
「そうですね。」

お会計を済ませ、店の外に出る私達。

「まだ、時間大丈夫ですか?もう一軒行きませんか?」
いきなりの私の提案にすんなりと答える彼。
「大丈夫です。帰りは妹に迎えを頼むので。」

「では、あんまり遅くならない程度に飲みましょう。」

二軒目のワインバーへ向かう途中、歩きながら少し話をした。
彼も私も離婚経験があること。
年齢は26歳で、もうすぐ27歳になること。
もうすぐ41歳になる私とは14歳の年の差がある。

ワインが初めてだという彼と共に、白から始まりロゼ、赤と飲み進めていく。

「ワイン大丈夫そうですか?」
「えぇ、美味しいです。」
「良かった。ちょっとお手洗いに行ってきますね。」
そう告げて席を離れる私。

その間、彼はたばこを吸いに外へ出ていたようで、私が席に戻ると慌てて帰ってきた。

ふわっと香る懐かしい匂い。
「紙たばこですか?」
「そうです。これです。」
そう言って彼がポケットから出したのは、ソフトのセブンスター。
以前私が吸っていたものと同じものだ。

「え!それまだあるの!?私が吸ってたのと同じだ!」
つい、素が出てしまう私。

「吸いますか?」
たばこをやめて数年が経っていたが、懐かしさに負けて彼の提案に乗る。

店の外に出てたばこを咥えると、ジッポーで火を点けてくれる彼。
「え、火をつけてくれるの!?嬉しい」
久しぶりの感覚にはしゃぐ私。

「きつくないですか?」
「うん、大丈夫。懐かしい…」

「ねぇ、タメ口で話さない?」
「とんでもない。恐れ多いです。」
私の提案に恐縮する彼。
真面目で誠実そうな人だな。

久しぶりのたばこで一気に酔いが回った。

席に戻り、そろそろ帰ろうかという話になった。
私の分のタクシーを頼み、お会計をする際、彼の財布を見て再度驚いた。
「え…ヴィヴィアン!?」
私が昔から好きなブランドだ。

「そうです。いいなと思って自分で買ったんです。」
「私もヴィヴィアン好きなんだ、ネックレスとか持ってる…」
セブンスターとヴィヴィアンか…好みが一緒だな…

「タクシー来ました。」
お店の人から声がかかる。
到着まで時間がかかると思って早めに呼んでいたタクシーが、思っていたよりもすぐに来てしまった。

私はグラスに残っていた赤ワインをクイッと飲み干すと、席を立った。
「じゃあ、また。」

「はい、また連絡します。」
彼がにっこりとほほ笑む。

待たせているタクシーに慌てて乗り込む私と見送る彼。
タクシーが動き始め、突っ伏して声にならない声で叫ぶ。
「可愛い…なんだあの笑顔可愛すぎる…反則!」

あの時は気が付かなかったけど、きっとこれが私の恋の始まりだった。


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