世界は妖しく嗤う【リメイク前】

明智風龍

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1章 不幸の始まり

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 電気を消して、カーテンを固く閉ざした室内で、友人からのLINE通知をすべて切ったスマホ画面をボーッと眺め続ける僕。
 暖房すらつけることを忘れ、手足が着実に寒さに蝕まれる。思考さえも冷たく止まって時間感覚が消失していく。
 小一、二時間は経っただろうか?
 LINE通知はすべて切ったはずなのに、LINEから一件の通知が。
「誰からだろうか? 通知はすべて切ったはずなのに……」
 どうせ──冷やかしかなにかだろう、と思って最初はスマホを小さな机の上に投げ出して、見向きもしなかった。ふわぁ、という大きなあくびと伸びをしてそのまま後ろに敷きっぱなしの布団に倒れこんで、一寝入りを決めていた。
 
 しかし──寝息をたてて贅沢に昼寝をしていると、ブーッブーッという振動音が机のあるほうから聞こえてきた。
 
「うるさいな……もう少し寝かせてよ……」
 
 眠気眼をこすりながら、むすりとした罰が悪いような表情を惜しげもなく顔に浮かべながら、のそりとした動きで体を起こし、振動音の在りかを手探りする。
 
「んー? 誰から、だ?」
 
 探り当てたスマホを持ち、個人認証ロックの解除をしながら画面をみやると、LINEの通知が来ていた。
 時刻にして、15時47分。
 そう、通知表示と共にデジタル時計に表示されていた。 
 寝起きのまだ働いていない頭を必死に掻き回し、その通知を見るか否か、数分の時間、考え込んだ。
 
 イタズラとかかな?
 だとしたら、嫌だな、と。
 でも、クラスメートたちからのLINE通知は全てオフにしてあるしな、とも考える。
 そうだ、一度見てみるか。
 どうせ、企業宣伝の広告かなにかだろうし。
 みるだけなら、安いもんだ。
 
 ひとまず、そのLINEの通知とやらを開いてみることにしたのだが。
 これが僕の淀(よど)んだ目にまばゆい光として、入ることになった。
 それもそのはず、その「LINE通知」というものがある人からの友達追加だったのだから。
 その人物が誰か? この備忘録を読んでいて、気になる人もちらほらいるのではないか、と思うから早々に明かすことにしよう。
 その人物からは電話番号による追加だった。
 相手の名前は──「五明章介は無罪だ」さんだったんだ。
 当然気にな……る。
 相手は何者で何の意図があって近付いて来たのか?
 他のクラスメートたちとは反応が明らかに違うように感じる。同様に考えも違うようにだ。
 僕のなかのわだかまる──世間に声を大にしたくても心の奥底へ封じられた父さんの“無罪”を信じる──気持ちがカァ―ッと沸き立つのが感じられた。
 
「父さんの味方が? 僕ら、家族の味方になるような人がいるの?!」
 
 僕の味方になることを期待するのに賭けて、友達追加してみたんだ。
 よくみると、メッセージも来ていた。
 何だろう。
 LINE名にばかり気を取られて、気付くのに遅れていた。
 とりあえず、見てみるか? 
 この中身を。
 この期待すべき謎に包まれた人物からのメッセージに目を通してみることを決めた。
 不思議とこのとき、恐怖心というモノが消えていたんだ。
 何せ、父さんが無罪だ、と僕ら家族以外に信じてそれを主張しているであろう味方が、スマホの向こう側の世界に確かにいるみたいだから。
 だから、僕は──信じることにした。
 失いつつあった父さんを信じる気持ちをもう一度再燃させて。
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