世界は妖しく嗤う【リメイク前】

1章 不幸の始まり

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　僕は友達追加前に「五明章介は無罪だ」さんからのLINEが送られていたことに気付くと、友達追加後にその文面を確認をしてみる。
　すると……。
「な、な、ななんだよ、これ！
　こんなの、信用しろって言うほうがバカな話！
　僕を騙そうだって、百万年は早い」
　
　そんな明るい歓声にも似た声をつい漏らしてしまった。それもそのはず、その送られていたLINEの文面ってモノがあまりにも愉快で仕方ない内容だったのだから。
　
　内容はみんなも以下を読んで見てほしい。
　「五明章介は無罪だ」さんからのLINE
❮私も五明章介の無実を信じている。
　その証拠に彼が逮捕される前から私に託された情報を松場中学に隠してある。
　詳しくは、君からの返事が来てから伝えよう❯
　
　でしょう？
　くすりとつい笑ってしまう内容だ。
　父さんの無実を信じる者がこの文面から実在するであろうことは充分に見て取れる。
　父さんが無実の罪を着せられた、というような内容も示されており、第三者の立場に置いても、父さんの事件は無実になり得るという可能性があらわになっているのも感じ取れる。
　これが正しく事実のみを伝えているかはわからないけれど、貴重な無実を証明する情報の実在と、その在りかにまで言及していることは、中学3年の可もなく不可もなくそこそこの成績の自分でもさすがに分かる。
　乗るか乗らないか。
　そりゃ、乗らない手はない。
　とは言うものの、乗ろうとはさすがにちょっと…ねぇ。
　だから、迷った。
　返信はこれを読んでから、意図を読み取るのに時間がかかったから少し遅れたけれど、返事はイエ……ス。
　二時間もしないうちに無罪さんからの返信が。
　
❮待っていたぞ。君がきっとどうしようもなくて、寺に駆け込むように、私に返信をくれるのを──❯
　と始まる文面だった。
　
　どうしようもなくて？
　寺に駆け込むように？
　待たれていた？
　しかし、返信内容にはまだ続きがある。
　
　❮さて、本題だ。
　松場中学のどこに隠してあるか、を伝えよう。
　答えは松場中学の職員室にあるのだが、笹野先生のPCにUSBが備え付けられている。
　それは私が君の父親から依頼を受けて、五明章介のUSBを紛れ込ませている。
　それを抜き取りなさい。
　情報はそこに記されている。
　最後に、この話に乗るか乗らないかは君の自由だ。
　だが、これだけは忘れないでほしい。
　君の父親、五明章介の真実を暴けるのは君しかいない❯
　
　これを一度読んだだけでは理解が追い付かなくて、二度三度と何度も読み込みと確認作業に及んだ。
　
　これ、本当なのかな？
　疑う反面、この文面が事実であることを望む期待の気持ちも現れていた。
　疑ってばかりいても始まらないし──少しは信じてみようかな。例え騙されたとしても、信じなきゃ、僕が動き出さなきゃ、現実は変わらないから。
　
　こうして始まったんだ。
　長い長い闘いが。