秘密の洋館

前編 ここから全ては始まった

5話

 謎の能面集団が守永をとある洋館まで連れてきた。守永は謎の能面男二人に、手足の拘束と目隠しを外された。

「ここがお前の最期を飾るにふさわしい場所だ。分かるな？」
「ここは……どういう事だ！ 最期とは一体……。」
「ふん、詳しくはこの館の管理人に、話を聞くがいい。」

 誘拐された守永は、この時既に、気圧けおされていた。能面の男達が部屋から出ていくのをじっと指をくわえて見ている事しかできなかったのだ。


 守永は能面の男達が部屋から完全に去るのを「はよはよはよ。」と固唾かたずを飲んで、彼らの背を見つめていた。彼らが退出した事を確認するとフゥー、と深いため息をついた。この西洋造りの館の中を観察すべく、守永自身のいる洋室の辺りを見渡した。

「こりゃー、豪勢な造りだな！」

  守永は能面の男達と過ごすという幾らかの恐怖を味わっていた為に、あまりの精神的な苦痛から先程まで居た能面の男達の事や誘拐されて、この洋室に来ている事を忘れようとしていた。シンプルな白を基調にした壁紙や天井。高級な樫かしの木材で出来たベッドや脚のある椅子、小テーブル。汚れや皺しわ一つない白いベッド。そこにはベッドメイキングされた証あかしであろうタオルが置かれていた。足元には、赤いふわふわの高級感溢れる絨毯が敷かれていたが、室内の家具などには似合わず埃ほこりっぽくなっていた。まるで誰かが、この誰も使わなかった部屋に、新調した家具を急遽きゅうきょ配置したかのようなそんな不自然さが漂っていた。

 まるで、この今の一瞬という時間。そして、ずいぶん昔の時間だけを切り取った奇妙な構図の一枚の写真であるかのように、守永の目が捉えていた。

「不思議だなぁ。」

守永はただ、ただ、不思議そうに室内を調べていく。すると、枕元の側そばにあるメモ帳に何やら書いた形跡が残されていたのを発見した。