10 / 12
本編 洋館での出会い
8話
しおりを挟む
守永は、ひたすら通路の端から端まで行き、踵を返しては、一定のリズムを保ちながら下を向いて歩いていた。
そこに後ろ背から、思い出したように、内田渚は声を掛けた。
「ねぇ! 貴方は? 貴方がもり……なが……さんよね?」
「……っ!」
「やっぱり……その反応。やはり貴方が守永さんなのね! 男たちの会話を盗み聞きして聞いてたの。すぐに新入りの貴方が守永さんだとわかったわ。」
「そうですか。」
ハキハキと話しかけて来た女性の顔を下から上に見上げた守永。その守永の顔は、浮かない表情をしており、彼の返事は何かぎこちなさを感じさせる言葉であった。
「ところで、その──」
「ん? 何か私に聞きたい事でもあるのかしら?」
「えぇ。聞きたい事が一つ。」
「言ってみて。」
「分かりました。質問というのは、その……言いづらいんですが、ここって一体どこなんですかね?」
「ここ?」
「えぇ。ここです。」
「んー、私にもわかんない!」
「え……。」
守永は、彼女に対して聞きたい事が山ほどあった。その内の一つの質問が、「ここがどこか?」である。
彼女の愛想のよい態度は、誘拐された? であろう事実を彼女も持つと踏んだために、この場で取る態度にしては、不似合いなものであるように感じられていた。
守永は、今に至るまでの経緯を記憶を辿って、目の前に居る異質な雰囲気や空気を醸し出している女性を質問攻めにした。
「え、わからないって。もしかして、貴女もここに連れて来られたんですか?」
「そうね。数日前に、ね」
「えっ。その、もしかして……誘……拐……されたんですか。」
「えぇ。そうよ。まっ、流石に慣れたわ。数日もここに閉じ込められれば。」
守永は声が出なかった。こんな訳のわからない場所に数日前から閉じ込められていた女性が居たのだ。
「その、逃げようとか。脱出しようとか考えなかったんですか?」
「それも考えたわ。でも、ダメだったの」
「どうして、ダメだったんですか?」
「良いわ。見せたげる。見せた方が早いわ。付いておいで。」
「……分かりました。」
そこに後ろ背から、思い出したように、内田渚は声を掛けた。
「ねぇ! 貴方は? 貴方がもり……なが……さんよね?」
「……っ!」
「やっぱり……その反応。やはり貴方が守永さんなのね! 男たちの会話を盗み聞きして聞いてたの。すぐに新入りの貴方が守永さんだとわかったわ。」
「そうですか。」
ハキハキと話しかけて来た女性の顔を下から上に見上げた守永。その守永の顔は、浮かない表情をしており、彼の返事は何かぎこちなさを感じさせる言葉であった。
「ところで、その──」
「ん? 何か私に聞きたい事でもあるのかしら?」
「えぇ。聞きたい事が一つ。」
「言ってみて。」
「分かりました。質問というのは、その……言いづらいんですが、ここって一体どこなんですかね?」
「ここ?」
「えぇ。ここです。」
「んー、私にもわかんない!」
「え……。」
守永は、彼女に対して聞きたい事が山ほどあった。その内の一つの質問が、「ここがどこか?」である。
彼女の愛想のよい態度は、誘拐された? であろう事実を彼女も持つと踏んだために、この場で取る態度にしては、不似合いなものであるように感じられていた。
守永は、今に至るまでの経緯を記憶を辿って、目の前に居る異質な雰囲気や空気を醸し出している女性を質問攻めにした。
「え、わからないって。もしかして、貴女もここに連れて来られたんですか?」
「そうね。数日前に、ね」
「えっ。その、もしかして……誘……拐……されたんですか。」
「えぇ。そうよ。まっ、流石に慣れたわ。数日もここに閉じ込められれば。」
守永は声が出なかった。こんな訳のわからない場所に数日前から閉じ込められていた女性が居たのだ。
「その、逃げようとか。脱出しようとか考えなかったんですか?」
「それも考えたわ。でも、ダメだったの」
「どうして、ダメだったんですか?」
「良いわ。見せたげる。見せた方が早いわ。付いておいで。」
「……分かりました。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる