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第3章 過去編
16話 青戸らの過去編7
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銀行員の紫垣順也と伏見工業のエースの舩木梓乃の会談の席に、紫垣の命により、元豊科工業社員の祐川勇司は料亭の薄い壁一枚を隔てて傍耳立てて二人の会話を聞いていた。
「此方に出ておいで。祐川さん」
「は、はい……ど、どうも、祐川です」
「初めまして~、伏見工業に勤めている舩木梓乃です。貴方は~、どちらに勤めて見えますか?」
「あ、言い忘れていました。豊科……元豊科工業の祐川勇司です。それにしても変な話……と言ってはなんですが、聞かせて頂きましたよ! 御二人の会話」
「な、何ですって? 盗み聞きしたんですか? 私らの会話」
「えぇ、聞かせて頂きましたよ! 勿論、許可は頂いています。此方に見える紫垣さんから」
「な、何ですって? 失礼だわ!」
突如乱入した祐川勇司と言う名の人物の存在と、彼の口から発せられた「豊科工業」と言う言葉に驚いた舩木梓乃。「今回は二人の会談に招待客が来る」と言う空間と場であると銀行員の紫垣順也から聞かされていたが、この祐川なる人物がその招待客である。舩木梓乃は銀行員の紫垣より、事前に聞いていたのに、招待客の存在を忘れ、べらべらと舩木梓乃の勤める伏見工業の行く末を話していた羞恥で顔を赤らめ、銀行員の紫垣順也が舩木梓乃に仕掛けたとある驚きの出来事に心が大きく揺らいでいた。
銀行員の紫垣順也の口から舩木梓乃に対して、祐川勇司に話した言葉の一部を入れ替えただけのほぼ同一の内容が伝えられた。
「双方の会社は同業であるが故に大手玩具メーカーのTOMIYAがラジコン部門からの撤退による打撃により、赤字回避の為に新事業の展開等の必要性を迫られている。 その為、事業提携を行う必要があるのではないか? 」
と言うビジネス上の建前が話された。
「──と言う考えでいます」
「え?……えぇ? そんな……まさか? それをやるんですか?」
「そのまさかです」
銀行員の紫垣順也は二人に驚くべき考えを話した。
「通常なら今お話をした通り、ビジネス上の事業提携を双方が結べば良いのですが、既に明かした通り、祐川さんが勤めていた豊科工業は経営上の危機を迎えています。又、豊科工業は経営危機を回避する為に、新事業展開をするべく、現在岩越銀行名古屋支店の企業融資担当の私が受け持っている状態です。これは伏見工業にも同じ事が言えますが、双方の会社が経営の危機にあると言う同一の立場にあり、双方共に中小企業でありながらも、豊科工業は既に空中分解しており、辛うじて新製品開発に人員を割ける程度。お分かりでしょうか?」
「つまり、双方を見ると、豊科工業の未来は危うく、伏見工業の未来は比較的明るい、と」
「そうです。以上の事を理由に、豊科工業は伏見工業にその新製品開発に係る事業を預ける……」
「つまり、豊科工業は伏見工業に買収される必要があると」
「待って! それだと~、更なる赤字のリスクを抱える事になりませんか?」
「よくお気づきになりましたね! 舩木さん」
「何で、そんなに笑うんですか? 何かおかしい事でもあるんですか?」
「えぇ、ありますとも。実は、豊科工業出身の祐川さんにはこれから豊科社長夫妻に給料の未払いの事を話に切り出して貰い、豊科工業の開発情報を持ち出して貰います」
「待って。それじゃあ、俺が此処に呼ばれた意味って……やはり……情報の横流しって事か」
「そうです。祐川さんには豊科工業から情報を調べて情報を伏見工業まで横流しして貰い、それを条件に祐川さんは伏見工業に再就職するって事です。どうですかね? 御二人共」
「私は少し考えたい所ですねぇ……と言いたい所ですが、正直話しますと、《うーん》の考えに尽きます」
「俺としては、再就職できるなら……実際何でも良いって感じです」
「そうですか……。御二人の考えが分かりました。残念ですねぇ、舩木さん。私としては、上昇思考の強い舩木さんにはぴったりの考えだと思いますがねぇ? 再就職先を探している祐川さんに豊科工業の開発情報を舩木さんに横流しする事を前提に、比較的発言権がまだある舩木さんから上に祐川さんを人材登用する事を掛け合う。そして、開発情報を元に舩木さんが主体となり開発する。そして、開発の功績を欲しいままにしてより上の役職に就く。一方で祐川さんが登用された暁には私と舩木さんに金銭を受領する。如何でしょうか?」
「なるほど、紫垣さんのアイデアを用いれば更に上の役職に就けますね……。でも私も紫垣さんに金銭を受領しないといけなくなりますね……。でも、良いでしょう! 話に乗りましょう!」
「此方に出ておいで。祐川さん」
「は、はい……ど、どうも、祐川です」
「初めまして~、伏見工業に勤めている舩木梓乃です。貴方は~、どちらに勤めて見えますか?」
「あ、言い忘れていました。豊科……元豊科工業の祐川勇司です。それにしても変な話……と言ってはなんですが、聞かせて頂きましたよ! 御二人の会話」
「な、何ですって? 盗み聞きしたんですか? 私らの会話」
「えぇ、聞かせて頂きましたよ! 勿論、許可は頂いています。此方に見える紫垣さんから」
「な、何ですって? 失礼だわ!」
突如乱入した祐川勇司と言う名の人物の存在と、彼の口から発せられた「豊科工業」と言う言葉に驚いた舩木梓乃。「今回は二人の会談に招待客が来る」と言う空間と場であると銀行員の紫垣順也から聞かされていたが、この祐川なる人物がその招待客である。舩木梓乃は銀行員の紫垣より、事前に聞いていたのに、招待客の存在を忘れ、べらべらと舩木梓乃の勤める伏見工業の行く末を話していた羞恥で顔を赤らめ、銀行員の紫垣順也が舩木梓乃に仕掛けたとある驚きの出来事に心が大きく揺らいでいた。
銀行員の紫垣順也の口から舩木梓乃に対して、祐川勇司に話した言葉の一部を入れ替えただけのほぼ同一の内容が伝えられた。
「双方の会社は同業であるが故に大手玩具メーカーのTOMIYAがラジコン部門からの撤退による打撃により、赤字回避の為に新事業の展開等の必要性を迫られている。 その為、事業提携を行う必要があるのではないか? 」
と言うビジネス上の建前が話された。
「──と言う考えでいます」
「え?……えぇ? そんな……まさか? それをやるんですか?」
「そのまさかです」
銀行員の紫垣順也は二人に驚くべき考えを話した。
「通常なら今お話をした通り、ビジネス上の事業提携を双方が結べば良いのですが、既に明かした通り、祐川さんが勤めていた豊科工業は経営上の危機を迎えています。又、豊科工業は経営危機を回避する為に、新事業展開をするべく、現在岩越銀行名古屋支店の企業融資担当の私が受け持っている状態です。これは伏見工業にも同じ事が言えますが、双方の会社が経営の危機にあると言う同一の立場にあり、双方共に中小企業でありながらも、豊科工業は既に空中分解しており、辛うじて新製品開発に人員を割ける程度。お分かりでしょうか?」
「つまり、双方を見ると、豊科工業の未来は危うく、伏見工業の未来は比較的明るい、と」
「そうです。以上の事を理由に、豊科工業は伏見工業にその新製品開発に係る事業を預ける……」
「つまり、豊科工業は伏見工業に買収される必要があると」
「待って! それだと~、更なる赤字のリスクを抱える事になりませんか?」
「よくお気づきになりましたね! 舩木さん」
「何で、そんなに笑うんですか? 何かおかしい事でもあるんですか?」
「えぇ、ありますとも。実は、豊科工業出身の祐川さんにはこれから豊科社長夫妻に給料の未払いの事を話に切り出して貰い、豊科工業の開発情報を持ち出して貰います」
「待って。それじゃあ、俺が此処に呼ばれた意味って……やはり……情報の横流しって事か」
「そうです。祐川さんには豊科工業から情報を調べて情報を伏見工業まで横流しして貰い、それを条件に祐川さんは伏見工業に再就職するって事です。どうですかね? 御二人共」
「私は少し考えたい所ですねぇ……と言いたい所ですが、正直話しますと、《うーん》の考えに尽きます」
「俺としては、再就職できるなら……実際何でも良いって感じです」
「そうですか……。御二人の考えが分かりました。残念ですねぇ、舩木さん。私としては、上昇思考の強い舩木さんにはぴったりの考えだと思いますがねぇ? 再就職先を探している祐川さんに豊科工業の開発情報を舩木さんに横流しする事を前提に、比較的発言権がまだある舩木さんから上に祐川さんを人材登用する事を掛け合う。そして、開発情報を元に舩木さんが主体となり開発する。そして、開発の功績を欲しいままにしてより上の役職に就く。一方で祐川さんが登用された暁には私と舩木さんに金銭を受領する。如何でしょうか?」
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