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第3章 過去編
17話 青戸らの過去編8
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銀行員の紫垣順也に命じられるまま豊科工業にこっそりコンタクトを取りに来た祐川勇司。
一方で豊科工業も嘗ての社員達にコンタクトを取り社員として引き戻そうと口実を練っていた。
「あの~、豊科社長はお見えになりますでしょうか?」
「えぇ、此方に見えますよ……って。貴方、祐川さんじゃないの」
「えぇ、以前はお世話になりました……って、今そんな事を言いに来たのではないです」
「そんな事は分かってるわよ! で、用件は何なの?」
「確かに豊科工業を辞めましたけど、給料が未払いのままじゃないですか! それで欲しいんですよ! 失業保険だけじゃ生活費足りなくて……生活費の足しにしたいので」
「ごめんなさいね、うちもようやくまとまった融資が受けられるようになってようやく新しく事業を展開出来るとこまで来たの。だから残念だわ! せっかくの新事業発足に祐川さん、貴方が居ないなんて。うちはなんとかやっているわ……。って、話し過ぎたわ! 良いわ! 社長に伝えとくからその場に居て」
「……わかりました」
確かに新事業の為の融資を受けられるようになっていたが、決して順風満帆な見通しではなかった豊科工業。豊科社長夫人は祐川に限らず、豊科工業に一時は残り去っていた青戸を除いた他の十四人の元従業員に見栄を張って、事業展開に必要な人員が居ないのに「なんとかやっているわ!」と嘘をついていた。その中に祐川勇司と赤城加奈の姿があった。
「あれ? 赤城さん? 赤城さんだよね?」
「うん、祐川さん。久しぶり~」
「こんな所で何してるの?赤城さん。豊科工業、皆一斉に辞めたじゃないか!」
「えぇ、辞めたわよ。でも、引き留められたのよ! 豊科さんに」
実は赤城加奈は豊科夫妻に引き留められて戻っていた事が判明して驚く祐川勇司であったが、話しを詳しく聞き出す前に豊科社長夫人が戻ってきた。
「お待たせ」
「あ、豊科さん。待ってませんでした、って言いたかったですが、少・し待ってましたよ」
「ごめんなさいね、はい。約束通り、この書類にある額面通りの金額を振り込みますから」
「あ、ありがとうございます」
※※赤城加奈編※
「いらっしゃい。赤城さん」
「話しは伺いましたがあれは本当なんですか?」
「えぇ、本当ですよ」
豊科社長夫妻は従業員を呼び戻す策を練っていた。彼らの脳裏によぎった事が一つあった。
それは……新事業展開の為に融資が受けられるようになった事実を大々的に元従業員達に一斉にメールを送信し、新事業発足してから然程というよりは思い通りに行かなくとも「新事業が乗り出した」と名を打つ事である。
そして、勿論虚偽であるが、今新事業が乗りに乗っている豊科工業に戻りたい人を豊科工業が登用する代わりに、賄賂として豊科工業に失業給付の幾らかを差し出せと退職者達に掛け合い、既に自転車操業状態に近い豊科工業に呼び戻し退職者達の金でやり繰りしようと言う計画である。この豊科工業の思惑にはまったのが、赤城加奈であった。
そして、赤城加奈は豊科工業に再入社するのだが、豊科夫妻のうまい口に乗せられたと気付いて再び退職し、失業していたのである。
一方で豊科工業も嘗ての社員達にコンタクトを取り社員として引き戻そうと口実を練っていた。
「あの~、豊科社長はお見えになりますでしょうか?」
「えぇ、此方に見えますよ……って。貴方、祐川さんじゃないの」
「えぇ、以前はお世話になりました……って、今そんな事を言いに来たのではないです」
「そんな事は分かってるわよ! で、用件は何なの?」
「確かに豊科工業を辞めましたけど、給料が未払いのままじゃないですか! それで欲しいんですよ! 失業保険だけじゃ生活費足りなくて……生活費の足しにしたいので」
「ごめんなさいね、うちもようやくまとまった融資が受けられるようになってようやく新しく事業を展開出来るとこまで来たの。だから残念だわ! せっかくの新事業発足に祐川さん、貴方が居ないなんて。うちはなんとかやっているわ……。って、話し過ぎたわ! 良いわ! 社長に伝えとくからその場に居て」
「……わかりました」
確かに新事業の為の融資を受けられるようになっていたが、決して順風満帆な見通しではなかった豊科工業。豊科社長夫人は祐川に限らず、豊科工業に一時は残り去っていた青戸を除いた他の十四人の元従業員に見栄を張って、事業展開に必要な人員が居ないのに「なんとかやっているわ!」と嘘をついていた。その中に祐川勇司と赤城加奈の姿があった。
「あれ? 赤城さん? 赤城さんだよね?」
「うん、祐川さん。久しぶり~」
「こんな所で何してるの?赤城さん。豊科工業、皆一斉に辞めたじゃないか!」
「えぇ、辞めたわよ。でも、引き留められたのよ! 豊科さんに」
実は赤城加奈は豊科夫妻に引き留められて戻っていた事が判明して驚く祐川勇司であったが、話しを詳しく聞き出す前に豊科社長夫人が戻ってきた。
「お待たせ」
「あ、豊科さん。待ってませんでした、って言いたかったですが、少・し待ってましたよ」
「ごめんなさいね、はい。約束通り、この書類にある額面通りの金額を振り込みますから」
「あ、ありがとうございます」
※※赤城加奈編※
「いらっしゃい。赤城さん」
「話しは伺いましたがあれは本当なんですか?」
「えぇ、本当ですよ」
豊科社長夫妻は従業員を呼び戻す策を練っていた。彼らの脳裏によぎった事が一つあった。
それは……新事業展開の為に融資が受けられるようになった事実を大々的に元従業員達に一斉にメールを送信し、新事業発足してから然程というよりは思い通りに行かなくとも「新事業が乗り出した」と名を打つ事である。
そして、勿論虚偽であるが、今新事業が乗りに乗っている豊科工業に戻りたい人を豊科工業が登用する代わりに、賄賂として豊科工業に失業給付の幾らかを差し出せと退職者達に掛け合い、既に自転車操業状態に近い豊科工業に呼び戻し退職者達の金でやり繰りしようと言う計画である。この豊科工業の思惑にはまったのが、赤城加奈であった。
そして、赤城加奈は豊科工業に再入社するのだが、豊科夫妻のうまい口に乗せられたと気付いて再び退職し、失業していたのである。
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