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第1章 事件の始まり
3話 現場と鑑識結果
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事件現場を取り仕切るベテラン鑑識係の猫田泰成は、早く現場入りして捜査をしたがる永瀬警部補を止めに入った。
「ちょ、永瀬警部補! 鑑識終わるまで、来ちゃダメですってば!」
「何を言うかね! 猫田さん。もう既に鑑識係が作業を終えて片付けを始めているでは無いか!」
「くっ……、我々鑑識係の仕事は警部補達の仕事とは違って繊細だ! 事件現場では、我々鑑識係が真っ先に現場入りする。我々の仕事が完全に終わるまでお待ち頂きたいモノですな」
鑑識係として、猫田の仕事は、現場の保存や証拠の徹底的な採取である。更に鑑識が引き上げるまでの間、現場入りした鑑識全員が鑑識作業を終えて撤収を終えるまで監督する責任を負っていた。下手に永瀬警部補に入られて、永瀬警部補の指紋や髪の毛が落ち現場を荒らされては困る。
鑑識係が全員現場から離れた後、鑑識係の猫田は永瀬警部補を呼び止めた。
「良いですよ。もう鑑識係としての現場での仕事は以上ですから」
「ふん! ようやくか、首を長くして待っていたわ」
「何を怒っているんですか! 頼みますよ! 迷警部補さん」
そんな茶番が繰り広げられた訳だが、鑑識結果が出ている。鑑識結果は以下に記載する。
【現場の鑑識結果】
『現場となる久屋大通駅の公衆トイレ前に落ちていた煙草の吸殻はDNA検査の結果、被害者の祐川勇司のモノだと判明した。
遺体の側に落ちていた革製鞄の中を改めた所、財布からお金が粗方抜き取られた後が見つかった。被害者の身元を特定できる携帯電話や運転免許証が残されたままである事が判明した。
また、革製鞄の中に無造作に開封された痕跡のある茶封筒を発見した。その中には破り捨てられた形跡のある書類が見つかった。
更に、被害者のズボンのポケットの中から紙片が見つかった。その紙片が見つかった茶封筒の中の書類の切れ端と一致する。紙片には、何者かに因って意図的に加えられたであろう「空口座」と言う言葉が書かれていた。
また、遺体の周囲は被害者の血で染まっているように見えたのだが、興味深い事にこの現場周囲に散らばる血痕は、DNA鑑定の結果、この被害者の祐川勇司のDNAとは異なる。腹には刺し傷が見られたが、刺し傷の形状(深さや大きさ)から死因ではない。また、犯人候補の毛髪が数本落ちていた』
と、まぁこのような鑑識結果が鑑識係の猫田から受け取った情報から永瀬警部補の脳内で推理された。
『お金が抜き取られた形跡はあるが、身元のわかるモノが盗られていない事を考えると、一時は金銭目的による犯行と断定されるが、謎の言葉の残された紙片の存在や遺体発見時の周囲を汚した血痕が被害者の祐川勇司のモノではなく他人のモノだと判明した事等から、金銭目的に見せかけた犯行である可能性がある』と推理した。
しかし、現場にようやく足を踏み入れた永瀬警部補。その脳裏には疑問が残る。遺体発見現場の駅の公衆トイレが殺害現場ではない可能性が出てきた。犯人の目的が何なのか? ──わざわざ遺体の身元がばれるような遺留品(携帯電話、運転免許証)を残す必要があったのか? 遺体発見現場にわざわざ他人の血を残しておく必要が果たしてあったのか? 此処、久屋大通駅は利用者の多くない、むしろ利用者が全く居ない駅である事は、捜査の過程で明らかになっている事から、遺体が発見されて騒がれたいと言う犯人の願望には矛盾するように感じられた。
──現場に残された他の証拠はどうやら無さそうだな。うしっ引き上げるか!
現場の捜索を五、六時間行ったが、どうやらこの事件の所轄の鑑識は優秀らしい。永瀬警部補には鑑識の見落としは見つけられなかった。
──聞き込みに移るか!
「ちょ、永瀬警部補! 鑑識終わるまで、来ちゃダメですってば!」
「何を言うかね! 猫田さん。もう既に鑑識係が作業を終えて片付けを始めているでは無いか!」
「くっ……、我々鑑識係の仕事は警部補達の仕事とは違って繊細だ! 事件現場では、我々鑑識係が真っ先に現場入りする。我々の仕事が完全に終わるまでお待ち頂きたいモノですな」
鑑識係として、猫田の仕事は、現場の保存や証拠の徹底的な採取である。更に鑑識が引き上げるまでの間、現場入りした鑑識全員が鑑識作業を終えて撤収を終えるまで監督する責任を負っていた。下手に永瀬警部補に入られて、永瀬警部補の指紋や髪の毛が落ち現場を荒らされては困る。
鑑識係が全員現場から離れた後、鑑識係の猫田は永瀬警部補を呼び止めた。
「良いですよ。もう鑑識係としての現場での仕事は以上ですから」
「ふん! ようやくか、首を長くして待っていたわ」
「何を怒っているんですか! 頼みますよ! 迷警部補さん」
そんな茶番が繰り広げられた訳だが、鑑識結果が出ている。鑑識結果は以下に記載する。
【現場の鑑識結果】
『現場となる久屋大通駅の公衆トイレ前に落ちていた煙草の吸殻はDNA検査の結果、被害者の祐川勇司のモノだと判明した。
遺体の側に落ちていた革製鞄の中を改めた所、財布からお金が粗方抜き取られた後が見つかった。被害者の身元を特定できる携帯電話や運転免許証が残されたままである事が判明した。
また、革製鞄の中に無造作に開封された痕跡のある茶封筒を発見した。その中には破り捨てられた形跡のある書類が見つかった。
更に、被害者のズボンのポケットの中から紙片が見つかった。その紙片が見つかった茶封筒の中の書類の切れ端と一致する。紙片には、何者かに因って意図的に加えられたであろう「空口座」と言う言葉が書かれていた。
また、遺体の周囲は被害者の血で染まっているように見えたのだが、興味深い事にこの現場周囲に散らばる血痕は、DNA鑑定の結果、この被害者の祐川勇司のDNAとは異なる。腹には刺し傷が見られたが、刺し傷の形状(深さや大きさ)から死因ではない。また、犯人候補の毛髪が数本落ちていた』
と、まぁこのような鑑識結果が鑑識係の猫田から受け取った情報から永瀬警部補の脳内で推理された。
『お金が抜き取られた形跡はあるが、身元のわかるモノが盗られていない事を考えると、一時は金銭目的による犯行と断定されるが、謎の言葉の残された紙片の存在や遺体発見時の周囲を汚した血痕が被害者の祐川勇司のモノではなく他人のモノだと判明した事等から、金銭目的に見せかけた犯行である可能性がある』と推理した。
しかし、現場にようやく足を踏み入れた永瀬警部補。その脳裏には疑問が残る。遺体発見現場の駅の公衆トイレが殺害現場ではない可能性が出てきた。犯人の目的が何なのか? ──わざわざ遺体の身元がばれるような遺留品(携帯電話、運転免許証)を残す必要があったのか? 遺体発見現場にわざわざ他人の血を残しておく必要が果たしてあったのか? 此処、久屋大通駅は利用者の多くない、むしろ利用者が全く居ない駅である事は、捜査の過程で明らかになっている事から、遺体が発見されて騒がれたいと言う犯人の願望には矛盾するように感じられた。
──現場に残された他の証拠はどうやら無さそうだな。うしっ引き上げるか!
現場の捜索を五、六時間行ったが、どうやらこの事件の所轄の鑑識は優秀らしい。永瀬警部補には鑑識の見落としは見つけられなかった。
──聞き込みに移るか!
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