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第6章 事件解決編その2~すべての解答編~
34話 手紙の真実
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「あはは、私も紫垣も! これであんたも終わりだわ!」
豊科夫人はそう台詞を吐き捨てると、紫垣順也の身体に覆い被さるように、女性とは思えない程力強く突き立てたナイフの矛先を自らの喉に変えた。豊科夫人は、一連の事件にまつわる真相を紫垣順也の殺害と豊科夫人自身の自殺企図によって幕引きを図ろうとしたのである。
豊科夫人は気付けば警察病院に居た。永瀬警部補がジーッと固唾を飲んで、豊科夫人の回復を待ち望んでいた。
「……て下さい。……きて下さい。起きて下さい」
「此処……は?」
「ようやくお目覚めのようですね。豊科夫人、此処は警察病院です」
「警察病院……私が? 何でまた警察病院に私が居るんですか?」
「まさか、すっかり忘れたんで? はは、そうなるのも無理ではないですな」
「どういう事ですか? 私の身に一体何が?」
「良いでしょう! 病み上がりの貴女には、まだ刺激が強いのですが、貴女自身があの時したお話……いいや、貴女と豊科工業のお話について少ししましょうかね」
「……お願いします」
「良いでしょう」
永瀬警部補は、病み上がりの身である豊科夫人に刺激をあまり与えないようにと気遣い、ゆっくりと声を潜めてまるで童話を読み聞かせするように語り出した。
「あれは紫垣順也の取調べをしている時でした。豊科忠嗣社長が被害者となった第二の殺人事件。……自殺ほう助……いや、第0の事件とでも言いますかな? あの時の第一発見者である豊科工業の元社員の青戸祐也から事情聴取をした時です。青戸祐也に、友人の守永が見ていた運動公園の公衆トイレの方から出てきた女性の姿の証言を聞いた時、明らかな動揺が青戸祐也の目にはありました。私は一度は引いたモノのやはり、気になりましてね! もう一度聴くために訪れたのですよ。青戸祐也の自宅を。そしたら、話してくれましたよ。すれ違った女性の姿形が見知った人に近い姿をしていた、とね」
「一体その女性は誰だったのです?」
「えぇ、お忘れになりましたか。貴女ですよ! 豊科夫人」
「……っ! 私ですか」
「えぇ、『豊科夫人のシルエットにそっくりだったから、まさか! と思って動揺してました』と話してくれましたよ。青戸祐也さんが」
「そんな……私が主人の死に関わっていた、とでも仰有るんですか?」
「まぁまぁ、そんなに驚かないでください」
「は、はぁ……はい……」
「話にはまだ続きがありまして。青戸祐也から豊科忠嗣社長宛に、一通の手紙を出したという話を小耳に挟む事になったのです」
「一通の手紙……とは?」
「紫垣順也らが豊科工業の機密情報を利用して、収賄・贈賄によって多額の金銭や報酬を得ているというような内容の告発文を書いて送ったそうです」
「……っ! 青戸さん……彼は豊科工業を辞めたはずでは?」
「確かにそうですが、青戸祐也は辞める事を元同僚である祐川勇司と当時、まだ親交が途絶えてはなく、話を漏らす機会がたまたまあったらしい為に、祐川勇司から例の収賄・贈賄の話を、『再就職先の斡旋をしてもらえるからやらないか?』と持ち掛けられたそうで……。それで、青戸祐也は実名だと手紙の内容に信頼は得られても確証となる証拠として豊科忠嗣社長は裏を取ることはしないかもしれない。だから、あえて匿名で手紙を送付した、との事」
「成る程、手紙の差出人は青戸さんだったのね!」
豊科夫人はそう台詞を吐き捨てると、紫垣順也の身体に覆い被さるように、女性とは思えない程力強く突き立てたナイフの矛先を自らの喉に変えた。豊科夫人は、一連の事件にまつわる真相を紫垣順也の殺害と豊科夫人自身の自殺企図によって幕引きを図ろうとしたのである。
豊科夫人は気付けば警察病院に居た。永瀬警部補がジーッと固唾を飲んで、豊科夫人の回復を待ち望んでいた。
「……て下さい。……きて下さい。起きて下さい」
「此処……は?」
「ようやくお目覚めのようですね。豊科夫人、此処は警察病院です」
「警察病院……私が? 何でまた警察病院に私が居るんですか?」
「まさか、すっかり忘れたんで? はは、そうなるのも無理ではないですな」
「どういう事ですか? 私の身に一体何が?」
「良いでしょう! 病み上がりの貴女には、まだ刺激が強いのですが、貴女自身があの時したお話……いいや、貴女と豊科工業のお話について少ししましょうかね」
「……お願いします」
「良いでしょう」
永瀬警部補は、病み上がりの身である豊科夫人に刺激をあまり与えないようにと気遣い、ゆっくりと声を潜めてまるで童話を読み聞かせするように語り出した。
「あれは紫垣順也の取調べをしている時でした。豊科忠嗣社長が被害者となった第二の殺人事件。……自殺ほう助……いや、第0の事件とでも言いますかな? あの時の第一発見者である豊科工業の元社員の青戸祐也から事情聴取をした時です。青戸祐也に、友人の守永が見ていた運動公園の公衆トイレの方から出てきた女性の姿の証言を聞いた時、明らかな動揺が青戸祐也の目にはありました。私は一度は引いたモノのやはり、気になりましてね! もう一度聴くために訪れたのですよ。青戸祐也の自宅を。そしたら、話してくれましたよ。すれ違った女性の姿形が見知った人に近い姿をしていた、とね」
「一体その女性は誰だったのです?」
「えぇ、お忘れになりましたか。貴女ですよ! 豊科夫人」
「……っ! 私ですか」
「えぇ、『豊科夫人のシルエットにそっくりだったから、まさか! と思って動揺してました』と話してくれましたよ。青戸祐也さんが」
「そんな……私が主人の死に関わっていた、とでも仰有るんですか?」
「まぁまぁ、そんなに驚かないでください」
「は、はぁ……はい……」
「話にはまだ続きがありまして。青戸祐也から豊科忠嗣社長宛に、一通の手紙を出したという話を小耳に挟む事になったのです」
「一通の手紙……とは?」
「紫垣順也らが豊科工業の機密情報を利用して、収賄・贈賄によって多額の金銭や報酬を得ているというような内容の告発文を書いて送ったそうです」
「……っ! 青戸さん……彼は豊科工業を辞めたはずでは?」
「確かにそうですが、青戸祐也は辞める事を元同僚である祐川勇司と当時、まだ親交が途絶えてはなく、話を漏らす機会がたまたまあったらしい為に、祐川勇司から例の収賄・贈賄の話を、『再就職先の斡旋をしてもらえるからやらないか?』と持ち掛けられたそうで……。それで、青戸祐也は実名だと手紙の内容に信頼は得られても確証となる証拠として豊科忠嗣社長は裏を取ることはしないかもしれない。だから、あえて匿名で手紙を送付した、との事」
「成る程、手紙の差出人は青戸さんだったのね!」
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