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新章 再び、異世界へ
134.『策』
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「あっ、お兄ちゃん!」
「また起きるの最後だったな、梅屋」
「遅いわよ、梅屋君」
黒の高級車には、既に後部座席へ唯葉と工藤茂春、水橋明日香が乗り込んでいた。
「すまない。また……」
「気にするな。さあ、向かうとしよう」
俺は助手席へ、プレシャは運転席へと乗り込むと――車は間もなく走り出す。
「聞きたい事は山ほどあるだろうが……まず、この世界がどうなっているか。そして、その解決策と、お前たちに任せたい事を伝える」
「ああ、頼むよ。なんでこんな事になっちまったんだ?」
俺たちがいない間にこの世界では何が起こったのか。どうすればこの世界を救えるのか。
誰もが気になっていたであろう事を、プレシャは車を爆走させながら語り始める。
***
召喚勇者たちが元の世界へと帰ってからしばらくして。世界は大きく変わった。
「ドルニアやリディエでも、クリディアの疫病と同様の症例が報告されているようです」
「罹れば最後、治療例は存在しない致死率百パーセントの疫病か……。ニール。各地の対策状況はどうなっている?」
「不要な外出は控えるよう、勧告はしているようですが」
クリディアで突如現れた、致死率百パーセントの疫病は、過去に類を見ない勢いで感染が広がった。多くの被害者を出した上に、各地の物流は今でもストップ。復興どころの騒ぎではなくなってしまった。
大陸を超え、種族の壁も超え――その疫病はグランスレイフでも広がり、マーデンディアという一つの都市に集中する魔人たちには、更なる打撃を与えた。
その同時期から。各地で地震や異常気象だったりといった災害が頻発するようになった。まるで、世界が悲鳴を上げているかのように。
魔王・プレシャは、それらが偶然ではないと考えた。探し求めた故、辿り着いた結論は――
「『世界のバランスが崩壊する』――か。勇者召喚とやらには、そんな伝承があったと言うのか……」
魔族と人間の戦争の為。三度にも渡って行われた勇者召喚。そして、プレシャ自身で生み出した、まだ未完成だった世界と世界を繋げる魔法。
それらを何度となく繰り返したせいで、この世界のバランスは崩れ、滅びようとしていた……とでも言うのだろうか。
それからもプレシャは必死に考えた。バランスの崩れたこの世界を救う為の方法を。あるかも分からない、その糸口を。
そして、召喚勇者たちが元の世界へと帰ってから三年も経った今。プレシャは辿り着いたのだった。この世界を救う、たった一つの方法を。
***
「バランスの崩れたこの世界を、安定しているお前たちの世界と結合する。それがこの世界を、滅びの運命から解放する為の、唯一の方法だ」
「……俺たちの世界と、異世界を――一つの世界にするって事……なのか?」
「さすが魔王、考える事のスケールが違いすぎるよ」
「ありえねえ……。そりゃ、地球とこの世界が地続きで繋がるって事、なんだよな……?」
「という事よね。冷静に聞いたら、とんでもない事のような気がするけれど……」
魔王・プレシャの提示した『策』に、俺たちは呆気に取られる。しかし、無謀とも、無茶苦茶だとも思えるその策も、彼女にとっては本気のようで――
「もう、世界と世界を結合する術は完成している。問題はあるのだが、な」
「問題……?」
「ああ。お前たちを呼んだのは他でもない、この問題を解決してもらう為だ」
プレシャは続けて。
「世界と世界が交わるということは、ここでもお前たちの世界でもない、全く別の世界をも逸脱した『新世界』が生み出される、という事。
しかし、それを良しとしない存在がいる訳だ。ここでは仮にこう呼ぼう。『カミサマ』とな」
話が一気に飛躍して、理解さえ追いつかない状況で――工藤が口をひらく。
「……何が何だか分からねえけどよ。結局、俺たちは一体何をすればいいんだ?」
「単刀直入に言おう。我が世界と世界を結合している間――阻止しようとする『カミサマ』を倒してほしい。力を貸してくれるか?」
色々と難しい話ではあったが……要は。
「向かってくる敵を倒せばいいだけ、って事だよな」
それなら、俺たちの答えは一つ。
「任せてくれ」
「分かった」
「おうよっ!」
「了解よ」
再び、異世界で――滅びゆく世界を救う為、俺たちは戦う。
「また起きるの最後だったな、梅屋」
「遅いわよ、梅屋君」
黒の高級車には、既に後部座席へ唯葉と工藤茂春、水橋明日香が乗り込んでいた。
「すまない。また……」
「気にするな。さあ、向かうとしよう」
俺は助手席へ、プレシャは運転席へと乗り込むと――車は間もなく走り出す。
「聞きたい事は山ほどあるだろうが……まず、この世界がどうなっているか。そして、その解決策と、お前たちに任せたい事を伝える」
「ああ、頼むよ。なんでこんな事になっちまったんだ?」
俺たちがいない間にこの世界では何が起こったのか。どうすればこの世界を救えるのか。
誰もが気になっていたであろう事を、プレシャは車を爆走させながら語り始める。
***
召喚勇者たちが元の世界へと帰ってからしばらくして。世界は大きく変わった。
「ドルニアやリディエでも、クリディアの疫病と同様の症例が報告されているようです」
「罹れば最後、治療例は存在しない致死率百パーセントの疫病か……。ニール。各地の対策状況はどうなっている?」
「不要な外出は控えるよう、勧告はしているようですが」
クリディアで突如現れた、致死率百パーセントの疫病は、過去に類を見ない勢いで感染が広がった。多くの被害者を出した上に、各地の物流は今でもストップ。復興どころの騒ぎではなくなってしまった。
大陸を超え、種族の壁も超え――その疫病はグランスレイフでも広がり、マーデンディアという一つの都市に集中する魔人たちには、更なる打撃を与えた。
その同時期から。各地で地震や異常気象だったりといった災害が頻発するようになった。まるで、世界が悲鳴を上げているかのように。
魔王・プレシャは、それらが偶然ではないと考えた。探し求めた故、辿り着いた結論は――
「『世界のバランスが崩壊する』――か。勇者召喚とやらには、そんな伝承があったと言うのか……」
魔族と人間の戦争の為。三度にも渡って行われた勇者召喚。そして、プレシャ自身で生み出した、まだ未完成だった世界と世界を繋げる魔法。
それらを何度となく繰り返したせいで、この世界のバランスは崩れ、滅びようとしていた……とでも言うのだろうか。
それからもプレシャは必死に考えた。バランスの崩れたこの世界を救う為の方法を。あるかも分からない、その糸口を。
そして、召喚勇者たちが元の世界へと帰ってから三年も経った今。プレシャは辿り着いたのだった。この世界を救う、たった一つの方法を。
***
「バランスの崩れたこの世界を、安定しているお前たちの世界と結合する。それがこの世界を、滅びの運命から解放する為の、唯一の方法だ」
「……俺たちの世界と、異世界を――一つの世界にするって事……なのか?」
「さすが魔王、考える事のスケールが違いすぎるよ」
「ありえねえ……。そりゃ、地球とこの世界が地続きで繋がるって事、なんだよな……?」
「という事よね。冷静に聞いたら、とんでもない事のような気がするけれど……」
魔王・プレシャの提示した『策』に、俺たちは呆気に取られる。しかし、無謀とも、無茶苦茶だとも思えるその策も、彼女にとっては本気のようで――
「もう、世界と世界を結合する術は完成している。問題はあるのだが、な」
「問題……?」
「ああ。お前たちを呼んだのは他でもない、この問題を解決してもらう為だ」
プレシャは続けて。
「世界と世界が交わるということは、ここでもお前たちの世界でもない、全く別の世界をも逸脱した『新世界』が生み出される、という事。
しかし、それを良しとしない存在がいる訳だ。ここでは仮にこう呼ぼう。『カミサマ』とな」
話が一気に飛躍して、理解さえ追いつかない状況で――工藤が口をひらく。
「……何が何だか分からねえけどよ。結局、俺たちは一体何をすればいいんだ?」
「単刀直入に言おう。我が世界と世界を結合している間――阻止しようとする『カミサマ』を倒してほしい。力を貸してくれるか?」
色々と難しい話ではあったが……要は。
「向かってくる敵を倒せばいいだけ、って事だよな」
それなら、俺たちの答えは一つ。
「任せてくれ」
「分かった」
「おうよっ!」
「了解よ」
再び、異世界で――滅びゆく世界を救う為、俺たちは戦う。
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