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第二章 Urban Myth “Miwakare Bridge”.
4.
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わたしの方の自己紹介も終えて、少しだけ打ち解けたわたしと八坂さん、二人の魔法少女は――都市伝説の元となった古びた橋のそばで、立ち話をする。
「ところで、朝野さんは何をしにこんな所まで……ってまあ、聞くまでもないわよね」
わざわざ、こんな森の中に架かる、誰も使わないような橋までやってくる理由。それも魔法少女同士――となれば、一つしかないだろう。
「八坂さんも、もしかして都市伝説を聞いて……?」
ネガエネミーが生まれてしまうかもしれない、都市伝説――命岐橋を調べに来たに違いない。
「ええ。私は隣町の『月野宮市』に住んでいるのだけれど……どうしても気になって……ね」
やはり、彼女も命岐橋の都市伝説が気になり――ここまでやってきたのだろう。インターネットを通じて、隣町にまで広がっていたらしい。……今の時代、面白そうな情報なんて、遠く離れた場所でもあっという間に広まっていく訳だ。
しかし、いくら魔法少女になれば空を飛び、速く移動できるとは言っても、隣町に住んでいる彼女がわざわざここまでやってきたということは、やはりこの都市伝説は怪しいのだろうか。
「……そうね、長く魔法少女をしてる『先輩』に聞いた話なんだけど……
ネガエネミーになる都市伝説って、大体人が死ぬのよ。命岐橋の話だってそう。橋の上から川に飛び降りたら普通に考えて助かる訳が無いでしょ? ……そういうこと」
「ってことは、命岐橋も……」
「あくまで私の先輩の考えだけどね。必ずネガエネミーになるって訳じゃないわ。
……でも、その先輩の言う通りに都市伝説を追っていたら――以前、本当にネガエネミーが現れたの。
もし事前に下調べをしていなかったら、危うく対応が遅れて、犠牲が出ていたかもしれなかった。だから私はこうして、怪しい都市伝説は片っ端から調べているの」
魔法少女としての風格と、大人びた雰囲気を併せ持つ彼女のさらに先輩。……さぞかし、凄い人なのだろうなと思う。
「その『先輩』がこの命岐橋が危ないって言っていたんですか?」
「そうね。でも、まあ……私の『先輩』はもう――」
その瞬間、彼女の声色が突然、暗く変わったような気がした。聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと、わたしは慌て――
「ごめんなさいっ、もしかしてその『先輩』って……」
恐るおそる、わたしは尋ねると、彼女は縦に首を振り――
「ええ……死んでしまったわ。それこそ、私がさっき言った『都市伝説』と戦ったときにね」
わたしの悪い予感はどうやら、的中してしまったらしい。その先輩はやはり、もうこの世にはいないのだろう。それも魔法少女として、ネガエネミーと戦い――その果てに。
そして、もう一つ重大な事実を突きつけられる。それは、わたし自身も他人事ではなく、ネガエネミーと戦うと同時に『死んでしまう』リスクを背負っているということ。
魔法少女として初めて戦った時から、分かっていたはずの事ではあるが……魔法少女が戦った、その果てに迎える最後の結末は――こうも、悲しいものなのだろうか。
「そんなっ、それじゃあ、その先輩って……」
「ええ。……でも、魔法少女はいずれこうなる運命なんだから、分かってたことだし……もう一緒に戦えないのは残念だけど、悲しんでなんていられないわ」
その言葉を聞いたわたしは、衝撃を受けた。
「そ、そんな……。それじゃあ、その『先輩』にはもう会えないって事ですよね? そんな酷いこと……魔法少女って――」
「……えっ?」
わたしがそう言った直後――この場に、わたしと彼女の間に、明らかな『空気の差』が生まれていたことに気がついた。
そして、しばしの沈黙の後――はっ、と思いついたかのように、八坂星羅は口を開く。
「……もしかして、『魔法少女としての死』について、まだ聞かされてなかったかしら……? 魔法少女になったばかりなら、知らなくても当然よね」
それを聞いた、わたしのサポポンは……横からわたしに向けて、
「ごめん……まだ説明すべきじゃないと思ってたんだ。魔法少女が死んだらどうなるのかを」
魔法少女が死んだらどうなるのか――わたしが魔法少女という仕事を全うする上で、重要な事を――彼、サポポンは中性的な声で、静かに話し始める。
「ところで、朝野さんは何をしにこんな所まで……ってまあ、聞くまでもないわよね」
わざわざ、こんな森の中に架かる、誰も使わないような橋までやってくる理由。それも魔法少女同士――となれば、一つしかないだろう。
「八坂さんも、もしかして都市伝説を聞いて……?」
ネガエネミーが生まれてしまうかもしれない、都市伝説――命岐橋を調べに来たに違いない。
「ええ。私は隣町の『月野宮市』に住んでいるのだけれど……どうしても気になって……ね」
やはり、彼女も命岐橋の都市伝説が気になり――ここまでやってきたのだろう。インターネットを通じて、隣町にまで広がっていたらしい。……今の時代、面白そうな情報なんて、遠く離れた場所でもあっという間に広まっていく訳だ。
しかし、いくら魔法少女になれば空を飛び、速く移動できるとは言っても、隣町に住んでいる彼女がわざわざここまでやってきたということは、やはりこの都市伝説は怪しいのだろうか。
「……そうね、長く魔法少女をしてる『先輩』に聞いた話なんだけど……
ネガエネミーになる都市伝説って、大体人が死ぬのよ。命岐橋の話だってそう。橋の上から川に飛び降りたら普通に考えて助かる訳が無いでしょ? ……そういうこと」
「ってことは、命岐橋も……」
「あくまで私の先輩の考えだけどね。必ずネガエネミーになるって訳じゃないわ。
……でも、その先輩の言う通りに都市伝説を追っていたら――以前、本当にネガエネミーが現れたの。
もし事前に下調べをしていなかったら、危うく対応が遅れて、犠牲が出ていたかもしれなかった。だから私はこうして、怪しい都市伝説は片っ端から調べているの」
魔法少女としての風格と、大人びた雰囲気を併せ持つ彼女のさらに先輩。……さぞかし、凄い人なのだろうなと思う。
「その『先輩』がこの命岐橋が危ないって言っていたんですか?」
「そうね。でも、まあ……私の『先輩』はもう――」
その瞬間、彼女の声色が突然、暗く変わったような気がした。聞いてはいけないことを聞いてしまったのかと、わたしは慌て――
「ごめんなさいっ、もしかしてその『先輩』って……」
恐るおそる、わたしは尋ねると、彼女は縦に首を振り――
「ええ……死んでしまったわ。それこそ、私がさっき言った『都市伝説』と戦ったときにね」
わたしの悪い予感はどうやら、的中してしまったらしい。その先輩はやはり、もうこの世にはいないのだろう。それも魔法少女として、ネガエネミーと戦い――その果てに。
そして、もう一つ重大な事実を突きつけられる。それは、わたし自身も他人事ではなく、ネガエネミーと戦うと同時に『死んでしまう』リスクを背負っているということ。
魔法少女として初めて戦った時から、分かっていたはずの事ではあるが……魔法少女が戦った、その果てに迎える最後の結末は――こうも、悲しいものなのだろうか。
「そんなっ、それじゃあ、その先輩って……」
「ええ。……でも、魔法少女はいずれこうなる運命なんだから、分かってたことだし……もう一緒に戦えないのは残念だけど、悲しんでなんていられないわ」
その言葉を聞いたわたしは、衝撃を受けた。
「そ、そんな……。それじゃあ、その『先輩』にはもう会えないって事ですよね? そんな酷いこと……魔法少女って――」
「……えっ?」
わたしがそう言った直後――この場に、わたしと彼女の間に、明らかな『空気の差』が生まれていたことに気がついた。
そして、しばしの沈黙の後――はっ、と思いついたかのように、八坂星羅は口を開く。
「……もしかして、『魔法少女としての死』について、まだ聞かされてなかったかしら……? 魔法少女になったばかりなら、知らなくても当然よね」
それを聞いた、わたしのサポポンは……横からわたしに向けて、
「ごめん……まだ説明すべきじゃないと思ってたんだ。魔法少女が死んだらどうなるのかを」
魔法少女が死んだらどうなるのか――わたしが魔法少女という仕事を全うする上で、重要な事を――彼、サポポンは中性的な声で、静かに話し始める。
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