37 / 52
第三章 Fifty-Fifty. Despair of Whale.
8.
しおりを挟む
次に目を開くと、わたしは――草むらの上に、仰向けで寝転がっていた。最初に目に入ったのは、パンの見た目をしたわたしのサポポン。
「うっ……ここは……?」
『こむぎっ、大丈夫!?』
目を覚ましたわたしに駆け寄るサポポン。その横で――わたしを覗き込むのは、会ったことのない一人の女性の顔があった。
水色の、パーマがかった髪を揺らし、おっとりとしたような顔で覗くその女性は――
「……ああっ、起きたみたいやね?」
「あ、あなたは……? わたし、あのとき――」
完全に意識を取り戻したわたしは、起き上がり――わたしが置かれた状況、つまりは今まで意識を失い、倒れてしまっていて――目の前の背の小さな、おっとりとした水色髪の女性へと面倒を掛けてしまっていたことに気がつくと、急いで立ち上がる。
「ウチは隣町、月野宮からきた蓮見遥言いますー。話は星羅ちゃんから聞いてるんよ。魔法少女――朝野こむぎさん」
魔法少女という単語が出たこと。そして、同じく魔法少女である八坂さんの名前が出たことから、彼女もまた――魔法少女なのだろう。それも、八坂さんと知り合いの。
それなら、この状況にも納得がいく。あんな攻撃を受けたにも関わらず、わたしの身体にまだ、魔法少女としての力が残っているように感じるのにも。魔法少女としての死を迎えていない……つまり、まだあのネガエネミーに負けていないということに。
さっき、白い光線に撃ち抜かれたとき――八坂さんも一緒に、あの攻撃を喰らっていたはず。いくら、わたしなんかよりも強い彼女でも、あの状態からわたしを助けるなんて不可能なはず。
そんな絶体絶命のピンチの中、何故生き残っているのだろう? そう思ったわたしだったが――きっと、その時に駆けつけて、助けてくれたのが、目の前の水色髪の女性――蓮見さんなのだろう。そう思い、わたしは――
「あのっ、助けていただきありがとうございます。おかげさまで助かりました……」
わたしは言うと――彼女は、首を横に振りながら、
「いやいや、助けたのはウチじゃなくて、ウチをここまで連れてきてくれた京香ちゃんなんよー。ウチは元魔法少女、もう魔法は使えんからねぇ……」
元、魔法少女。そう聞いて、もしかして――と、思い浮かんだ人がいる。実際に会ったことはなかったが――八坂さんが言っていた『先輩』とは、もしかして彼女のことなのだろうか?
都市伝説との戦いで魔法少女として死に、それでも裏方に回り、魔法少女を助け続けていると聞いたその人は、わたしの勝手な想像よもり――優しくて、親しみやすそうな……そんな印象があった。
「ところで、他の皆さんは一体どこへ……?」
周りを見ても、自分と蓮見さんの二人しかいない。八坂さんと、わたしたちを助けてくれたという京香さんと呼ばれていた魔法少女は何をしているのだろうか。
「あの二人なら、こむぎちゃんが目覚めるまで、『ラプスモード』でみんなを守っとるよー? 星羅ちゃんが言うてたけど、どうも、作戦があるんよね?」
初対面でいきなりちゃん付けで呼ばれたり、『ラプスモード』という初めて聞く単語に少し驚きつつも――さらに、驚いたのは――
「ちょっと待ってください。……みんなって……?」
「ネガエネミーの標的……言うなれば『一般人』やねえ。まーあの二人が時間稼ぎに回ってくれてるし、ウチも安心やけどね」
みんな――魔法少女であるわたしたちが守るべき、関係のない人々に、たった今、危険が迫っている。……わたしが倒れていたばかりに。
「……わたし、行ってきますっ! これ以上負担は掛けられませんし、急がないと――」
「……身体はもう大丈夫なん?」
心配そうな目で、わたしに問いかける。……さっき、諸刃の剣だと言っていた――『チャージ』のせいか、まだ身体が重い。
しかし、こんな所で休んでいられない。それに、蓮見さんにこれ以上、心配をかける訳にもいかない。身体の不調をかき消すように、わたしは――
「……はい! みんなが頑張っている中、わたし一人、休んでなんていられませんから。……蓮見さん、ありがとうございました!」
「頑張ってな~」……という声と共に、手を振り、見送られる。
わたしは――『BREAD』――魔法名を唱えると、時の流れは変わり……手を振る蓮見さんの動きが止まる。
「うっ……ここは……?」
『こむぎっ、大丈夫!?』
目を覚ましたわたしに駆け寄るサポポン。その横で――わたしを覗き込むのは、会ったことのない一人の女性の顔があった。
水色の、パーマがかった髪を揺らし、おっとりとしたような顔で覗くその女性は――
「……ああっ、起きたみたいやね?」
「あ、あなたは……? わたし、あのとき――」
完全に意識を取り戻したわたしは、起き上がり――わたしが置かれた状況、つまりは今まで意識を失い、倒れてしまっていて――目の前の背の小さな、おっとりとした水色髪の女性へと面倒を掛けてしまっていたことに気がつくと、急いで立ち上がる。
「ウチは隣町、月野宮からきた蓮見遥言いますー。話は星羅ちゃんから聞いてるんよ。魔法少女――朝野こむぎさん」
魔法少女という単語が出たこと。そして、同じく魔法少女である八坂さんの名前が出たことから、彼女もまた――魔法少女なのだろう。それも、八坂さんと知り合いの。
それなら、この状況にも納得がいく。あんな攻撃を受けたにも関わらず、わたしの身体にまだ、魔法少女としての力が残っているように感じるのにも。魔法少女としての死を迎えていない……つまり、まだあのネガエネミーに負けていないということに。
さっき、白い光線に撃ち抜かれたとき――八坂さんも一緒に、あの攻撃を喰らっていたはず。いくら、わたしなんかよりも強い彼女でも、あの状態からわたしを助けるなんて不可能なはず。
そんな絶体絶命のピンチの中、何故生き残っているのだろう? そう思ったわたしだったが――きっと、その時に駆けつけて、助けてくれたのが、目の前の水色髪の女性――蓮見さんなのだろう。そう思い、わたしは――
「あのっ、助けていただきありがとうございます。おかげさまで助かりました……」
わたしは言うと――彼女は、首を横に振りながら、
「いやいや、助けたのはウチじゃなくて、ウチをここまで連れてきてくれた京香ちゃんなんよー。ウチは元魔法少女、もう魔法は使えんからねぇ……」
元、魔法少女。そう聞いて、もしかして――と、思い浮かんだ人がいる。実際に会ったことはなかったが――八坂さんが言っていた『先輩』とは、もしかして彼女のことなのだろうか?
都市伝説との戦いで魔法少女として死に、それでも裏方に回り、魔法少女を助け続けていると聞いたその人は、わたしの勝手な想像よもり――優しくて、親しみやすそうな……そんな印象があった。
「ところで、他の皆さんは一体どこへ……?」
周りを見ても、自分と蓮見さんの二人しかいない。八坂さんと、わたしたちを助けてくれたという京香さんと呼ばれていた魔法少女は何をしているのだろうか。
「あの二人なら、こむぎちゃんが目覚めるまで、『ラプスモード』でみんなを守っとるよー? 星羅ちゃんが言うてたけど、どうも、作戦があるんよね?」
初対面でいきなりちゃん付けで呼ばれたり、『ラプスモード』という初めて聞く単語に少し驚きつつも――さらに、驚いたのは――
「ちょっと待ってください。……みんなって……?」
「ネガエネミーの標的……言うなれば『一般人』やねえ。まーあの二人が時間稼ぎに回ってくれてるし、ウチも安心やけどね」
みんな――魔法少女であるわたしたちが守るべき、関係のない人々に、たった今、危険が迫っている。……わたしが倒れていたばかりに。
「……わたし、行ってきますっ! これ以上負担は掛けられませんし、急がないと――」
「……身体はもう大丈夫なん?」
心配そうな目で、わたしに問いかける。……さっき、諸刃の剣だと言っていた――『チャージ』のせいか、まだ身体が重い。
しかし、こんな所で休んでいられない。それに、蓮見さんにこれ以上、心配をかける訳にもいかない。身体の不調をかき消すように、わたしは――
「……はい! みんなが頑張っている中、わたし一人、休んでなんていられませんから。……蓮見さん、ありがとうございました!」
「頑張ってな~」……という声と共に、手を振り、見送られる。
わたしは――『BREAD』――魔法名を唱えると、時の流れは変わり……手を振る蓮見さんの動きが止まる。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる