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4話 武具顕現の儀
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あれからさらに2年経った。
12歳になった俺は、いよいよ人生の大事な分岐点の一つに立つことになる。
それがまもなく行われる【武具顕現の儀】だ。
【武具顕現の儀】とは、その名の通り自身に最適な武具をこの世に顕現させる儀式のことであり、一生に一度だけ行うことが出来る。
基本的には教会に所定の金額を収めることで受けることが出来、この国では王族・貴族の子供は12歳になったらこれを受けるのが一般的となっている。
神から授かる特別な武器ということもあり、その性能は往々にして高く、基本的には手に入れた武具の使い手となることが推奨される訳だが、せっかくここまで剣術を磨いてきたのだから、俺は是非とも剣を授かりたいと思っている。
ただし、誰もがこの武具顕現の儀を成功させることが出来るわけではなく、全く素質がない者が行っても武具は手に入らないらしい。
貴族としては、ここで大当たりを引ければ自らの家の地位を高められるかもしれない重要なイベントであるので、それを理解している子供は皆真剣な表情をして今か今かと待っている。
「どうか、どうかどうか! 神様! いい武器をお与えください!!」
お、始まったか。
早速どこかの貴族の子供が、魔法陣に自らの血を垂らして祈りを捧げた。
すると魔法陣が淡く光りだし、グルグルと勢いよく回転し始める。
しばらくして天井から真っ白な光が差し込むと、ゆっくりと焦げた茶色がベースの大斧が降りてきた。
少年は驚きつつもその斧を重そうに抱え、倒れないように踏ん張りながら、隣に立つ司祭の言葉を待った。
「――武具の名はガイア・イーター。ランクはAのようですね」
「や、やった! やったぞぉぉ!!」
明らかにその少年の体躯に合っていない武器ではあるが、Aランクの当たりだったようだ。
武具顕現の儀で顕現する武器には、その武器が持つポテンシャルを測定し、低い方からE,D,C,B,A,Sのランクが定められる。
顕現武具は基本的には最初に示されたランクのままなので、この儀式で最も重要視される要素となる。
最もあくまでランクで示されるのはポテンシャルなので、それを最大限引き出せるかは当人の鍛錬次第なのだが。
そして次々と貴族の子供たちが武具顕現に挑んでいく。
中には武具を得ることが出来ずに泣きながら去っていく者もいたが、こればかりは運なので仕方がないだろう。
さて、俺にはいったいどんな武具が与えられるんだろうか。
ちなみに武器ではなく武具なのは、稀に防具やアクセサリーなど、武器以外のものを得る者がいるためだ。
邪魔にならないならそれでもいいのかもしれないが、一般的には武器であることの方が好ましいとされるので、手に入れられるなら武器が欲しい所だ。
まあ、今生の俺は、何ら特別な資質を持たない貴族の三男坊だ。
順当にいけば何も手に入らないか、良くてBランクの無難な武器が出そうな気がしてならない。
最悪剣じゃなかったら顕現武器なんて放り出して、普通に剣士として生きたほうが良いかもしれないな。
俺には剣の才能があるってリュシア先生も言っていたし、そちらを磨いた方が可能性がある気がする。
「――!! 聖剣エクリシオン! ランクは――Sです!」
会場が一気にざわつきだした。
どうやら大当たりのSランクの武器を引いた奴が現れたらしい。
やや遠くてはっきりとは見えないが、黄金のような髪色を持つ端正な顔立ちの少年だ。
その表情は自信に満ち溢れており、Sランク武器を引いたのは当然と言わんばかりの立ち振る舞いだ。
「ふふ、このアレクシス・フォン・ルクスに相応しい、美しい剣だ。さあ共に行こう。今日の日を輝ける我が人生の第一歩とするのだ」
お前は演者なのかと言わんばかりに決めポーズをばっちり決めた彼は、最初から自分のモノであったかのように聖剣エクリシオンを腰へ納め、後ろへと下がってきた。
ルクス家は確か公爵家だったな。やはり格式高い家に生まれる子供は相応の資質を秘めているということなのだろうか。
正直ちょっと羨ましい。あの剣、かなりカッコいいからな。Sランクということは秘めたる力も相当なものなのだろう。
アレがあれば俺も剣士として高みを目指すことが出来たかもしれないな。
物語に登場する伝説の勇者のような存在に憧れる気持ちが今なら少し分かる気がする。
そんなことを思いながら、とうとう俺の番がやってきた。
魔法陣の前に立ち、差し出された針で指を刺す。
ちくりとした痛みと共に指から血が流れだし、それを魔法陣へと垂らしていく。
懐かしいな。こういった儀式魔術もいくつか習得し試してみたことはあるが、こうして他人任せの術式に血を流すのは初めての経験だ。
まあ、伝統ある儀式だし、変なことにはならないだろう。
そう思っていたのだが――
「――!!? な、なんだこれは!?」
司祭が突然慌てだす。一体何があったのかと足元を見てみると、尋常ではない速度で魔法陣が回転しているではないか。
しかも謎の地震まで発生し、周囲は大混乱に包まれる。
やがて目の前の空間が歪に歪みだし、雷鳴の轟と共に天から雷の如き光が落ちた。
そして現れたのは――
「これは……?」
柄の先端と刃の境目の二つに透明な球体が埋め込まれた一振りの剣。
錆びているようなくすんだ色だが、それはまるで長い年月をかけてこの場所へとたどり着いたかのような歴史を感じる。
刻み込まれている模様は複雑で教会の壁に掘られているような神聖な模様にすら見えた。
刃の中心は球体と同じく透明なガラスのようなものがはめ込まれていて、いったいどの属性を持つ武器なのかさっぱり見当がつかない。
「司祭さま。この武器はいったい……?」
「こ、これは――エルヴェリア。ランクは――測定不能!?」
「測定不能!?」
なんじゃそりゃ。
ランク測定不能の武器、エルヴェリア。
一体なんでこんなものが俺の手に?
まあ剣なのはとても喜ばしい事なのだが、こんなド派手な演出で登場しなくてもいいんだが。
おかげで目立って仕方がないじゃないか。
どうやってこの場を乗り切ろうか。そんな事を考えていると、耳を撫でるような女の声が俺の脳内に届いた。
「――聞こえる?」
「?」
「ねえ、聞こえる? 聞こえてるんでしょ?」
「???」
「聞こえてるならさっさと返事しなさいよっ!! こっちは暇じゃないの!!」
「あぁ、この声は――」
どこかで聞き覚えがある声だと思えば、俺が呼び出して転生をお願いした女神の声じゃないか。
それを認識すると、俺の視界は一瞬にして真っ白に染まった。
12歳になった俺は、いよいよ人生の大事な分岐点の一つに立つことになる。
それがまもなく行われる【武具顕現の儀】だ。
【武具顕現の儀】とは、その名の通り自身に最適な武具をこの世に顕現させる儀式のことであり、一生に一度だけ行うことが出来る。
基本的には教会に所定の金額を収めることで受けることが出来、この国では王族・貴族の子供は12歳になったらこれを受けるのが一般的となっている。
神から授かる特別な武器ということもあり、その性能は往々にして高く、基本的には手に入れた武具の使い手となることが推奨される訳だが、せっかくここまで剣術を磨いてきたのだから、俺は是非とも剣を授かりたいと思っている。
ただし、誰もがこの武具顕現の儀を成功させることが出来るわけではなく、全く素質がない者が行っても武具は手に入らないらしい。
貴族としては、ここで大当たりを引ければ自らの家の地位を高められるかもしれない重要なイベントであるので、それを理解している子供は皆真剣な表情をして今か今かと待っている。
「どうか、どうかどうか! 神様! いい武器をお与えください!!」
お、始まったか。
早速どこかの貴族の子供が、魔法陣に自らの血を垂らして祈りを捧げた。
すると魔法陣が淡く光りだし、グルグルと勢いよく回転し始める。
しばらくして天井から真っ白な光が差し込むと、ゆっくりと焦げた茶色がベースの大斧が降りてきた。
少年は驚きつつもその斧を重そうに抱え、倒れないように踏ん張りながら、隣に立つ司祭の言葉を待った。
「――武具の名はガイア・イーター。ランクはAのようですね」
「や、やった! やったぞぉぉ!!」
明らかにその少年の体躯に合っていない武器ではあるが、Aランクの当たりだったようだ。
武具顕現の儀で顕現する武器には、その武器が持つポテンシャルを測定し、低い方からE,D,C,B,A,Sのランクが定められる。
顕現武具は基本的には最初に示されたランクのままなので、この儀式で最も重要視される要素となる。
最もあくまでランクで示されるのはポテンシャルなので、それを最大限引き出せるかは当人の鍛錬次第なのだが。
そして次々と貴族の子供たちが武具顕現に挑んでいく。
中には武具を得ることが出来ずに泣きながら去っていく者もいたが、こればかりは運なので仕方がないだろう。
さて、俺にはいったいどんな武具が与えられるんだろうか。
ちなみに武器ではなく武具なのは、稀に防具やアクセサリーなど、武器以外のものを得る者がいるためだ。
邪魔にならないならそれでもいいのかもしれないが、一般的には武器であることの方が好ましいとされるので、手に入れられるなら武器が欲しい所だ。
まあ、今生の俺は、何ら特別な資質を持たない貴族の三男坊だ。
順当にいけば何も手に入らないか、良くてBランクの無難な武器が出そうな気がしてならない。
最悪剣じゃなかったら顕現武器なんて放り出して、普通に剣士として生きたほうが良いかもしれないな。
俺には剣の才能があるってリュシア先生も言っていたし、そちらを磨いた方が可能性がある気がする。
「――!! 聖剣エクリシオン! ランクは――Sです!」
会場が一気にざわつきだした。
どうやら大当たりのSランクの武器を引いた奴が現れたらしい。
やや遠くてはっきりとは見えないが、黄金のような髪色を持つ端正な顔立ちの少年だ。
その表情は自信に満ち溢れており、Sランク武器を引いたのは当然と言わんばかりの立ち振る舞いだ。
「ふふ、このアレクシス・フォン・ルクスに相応しい、美しい剣だ。さあ共に行こう。今日の日を輝ける我が人生の第一歩とするのだ」
お前は演者なのかと言わんばかりに決めポーズをばっちり決めた彼は、最初から自分のモノであったかのように聖剣エクリシオンを腰へ納め、後ろへと下がってきた。
ルクス家は確か公爵家だったな。やはり格式高い家に生まれる子供は相応の資質を秘めているということなのだろうか。
正直ちょっと羨ましい。あの剣、かなりカッコいいからな。Sランクということは秘めたる力も相当なものなのだろう。
アレがあれば俺も剣士として高みを目指すことが出来たかもしれないな。
物語に登場する伝説の勇者のような存在に憧れる気持ちが今なら少し分かる気がする。
そんなことを思いながら、とうとう俺の番がやってきた。
魔法陣の前に立ち、差し出された針で指を刺す。
ちくりとした痛みと共に指から血が流れだし、それを魔法陣へと垂らしていく。
懐かしいな。こういった儀式魔術もいくつか習得し試してみたことはあるが、こうして他人任せの術式に血を流すのは初めての経験だ。
まあ、伝統ある儀式だし、変なことにはならないだろう。
そう思っていたのだが――
「――!!? な、なんだこれは!?」
司祭が突然慌てだす。一体何があったのかと足元を見てみると、尋常ではない速度で魔法陣が回転しているではないか。
しかも謎の地震まで発生し、周囲は大混乱に包まれる。
やがて目の前の空間が歪に歪みだし、雷鳴の轟と共に天から雷の如き光が落ちた。
そして現れたのは――
「これは……?」
柄の先端と刃の境目の二つに透明な球体が埋め込まれた一振りの剣。
錆びているようなくすんだ色だが、それはまるで長い年月をかけてこの場所へとたどり着いたかのような歴史を感じる。
刻み込まれている模様は複雑で教会の壁に掘られているような神聖な模様にすら見えた。
刃の中心は球体と同じく透明なガラスのようなものがはめ込まれていて、いったいどの属性を持つ武器なのかさっぱり見当がつかない。
「司祭さま。この武器はいったい……?」
「こ、これは――エルヴェリア。ランクは――測定不能!?」
「測定不能!?」
なんじゃそりゃ。
ランク測定不能の武器、エルヴェリア。
一体なんでこんなものが俺の手に?
まあ剣なのはとても喜ばしい事なのだが、こんなド派手な演出で登場しなくてもいいんだが。
おかげで目立って仕方がないじゃないか。
どうやってこの場を乗り切ろうか。そんな事を考えていると、耳を撫でるような女の声が俺の脳内に届いた。
「――聞こえる?」
「?」
「ねえ、聞こえる? 聞こえてるんでしょ?」
「???」
「聞こえてるならさっさと返事しなさいよっ!! こっちは暇じゃないの!!」
「あぁ、この声は――」
どこかで聞き覚えがある声だと思えば、俺が呼び出して転生をお願いした女神の声じゃないか。
それを認識すると、俺の視界は一瞬にして真っ白に染まった。
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