モブキャラに転生した元最強の魔法使い、神剣を手に入れ無双する〜気づけば最悪だった前世と真逆の最高ハーレムライフが始まった〜

玖遠紅音

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5話 神剣エルヴェリア

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 気づけば俺は、あの時見た真っ白に塗りつぶされた異質な空間へと呼び出されていた。
 今の俺の体は恐らく実体ではなく精神体。
 遠隔で意識だけを強引に引きはがして自らの領域に呼びつけたと言ったところか。
 流石は神格。前世の俺でもそう簡単には出来ねえことをあっさりやってのけやがる。

「ふふふ、少しは敬う気になったかしら? 12年も経てば人間は成長するものね」
「無理とは言ってないし、敬いもしねえ。あと毎度のことながら心を勝手に読むな気持ちわりぃ」
「そこは素直に敬っておきなさいよ! ったく、魔法使いってのはどうしてこうひねくれものが多いのかしら」

 わざとらしく大きなため息を吐く女神。
 なんつーか、エリシア姉さまと話しているような気分だな。
 女神のくせにやけに人間臭いのには違和感を覚えるが、まあこの方が話しやすいから俺としては都合がいい。

「で、どうなの? 私がプレゼントした第二の人生、楽しめているのかしら」
「あぁ、それについては感謝してる。最高の転生をありがとう」
「そ。ならいいわ。これから何が起こるか分からないのにたったの12年で最高って言いきるなんてよほど気に入ったのね。ま、その調子なら多少苦労しても大丈夫そうかしら」
「あぁ。苦労には慣れてるから問題ない」

 俺が欲しかったのは何の苦労もない退屈な人生ではない。
 ごくごく普通の、変な体に生まれなければ享受できるはずだった当たり前の人生を送りたかったんだ。
 たとえこれからどんな壁が待ち受けていようが、それを楽しめる土台は既にできている。

「ふん……随分と良い眼をするようになったじゃない。腐った魚のようなあの頃の眼とは大違いよ」
「そりゃどーも。実際に腐った人生だったから当然だろ」
「今生はそうならないようにせいぜい頑張ることね」
「ああ、肝に銘じておくよ」

 言い方には棘があるが、なんだかんだ俺のことを気にかけてくれていたようだ。
 神話に出てくるカミサマはどいつもこいつも頭が固くて融通が利かなそうなイメージだったが、こういう良い奴も存在するんだな。
 まあいい神様を引き当てた俺の神霊召喚の腕が良かったともいえるがな! ははは!

「……言いたいことは色々あるけど、時間があんまりないから今は無視するわ」
「そうだ。なんで急に俺を呼び出したんだ? 今までは一切干渉してこなかったのに」
「忘れたの? アンタとの契約を果たしに来たのよ」
「契約……? あ、もしかして」
「そう。これよ」
 
 気づけば女神の手には一振りの剣が握られていた。
 それは先ほど俺が武具顕現の儀で引き当てたランク測定不能の謎の剣だ。
 
「約束通り、アンタの前世の力を引き継がせてあげる。この神剣エルヴェリアという形でね」
「神剣エルヴェリア。これがソイツの正式名称なのか」
「そうよ。無駄に膨大なアンタの力をその体でも扱えるように、特別に私直々に加工して創り上げた逸品。それがこの剣なの」
「そいつを持ってれば、俺は前世の力をまた発揮できるって訳か?」
「そのまま扱える訳じゃないわ。言っとくけど前世のアンタがアレだけの力を振るえたのは、アンタが特殊な体質だったからよ。今の体で同じことをすればあっという間に体が崩壊するわ」
「それじゃあその剣はどういう役割を果たすんだよ」
「そう焦らないで。順に説明してあげるから」

 そうして女神は自信満々に神剣の性能について語り始めた。

「いい? この素晴らしい神剣エルヴェリアには大きく分けて二つの機能があるの。一つは色の変化による能力の変化よ」
「色?」
「赤ならば火属性、青ならば水属性と言った対応する属性の魔術が扱えるようになる。それに加えて色に応じて持ち主の基礎能力が上がるわ。ただし、特定の色を起動している時は、それ以外の能力が落ちる」
「なんだその微妙に使いにくそうな性能は」
「ふふん、そんなこと言ってもいいのかしら。使ってみたら驚くわよ。代償がある代わりに、色によって特化される能力の変化幅は凄まじいんだから」
「つまり戦局に応じて色を使い分けて戦えってことか」
「そう言うことになるわね。その神剣の性能を最大限に引き出せるように存分に研究なさい。アンタ、そういうの好きなんでしょ?」

 ドヤ顔で言い放つ女神。実際その通りなので否定できないのがムカつく。
 確かに何でもできる万能無双というのは、戦闘において面白みに欠ける。
 昔は生きるために仕方なく戦っていたから戦闘を楽しむという感覚がよく分からなかったが、剣士となった今はなんとなく気持ちが分かる気もする。
 前世の戦闘は大体は一方的に叩きのめして殺していたせいで面白みもなんもなかったからな。

「そして二つ目の機能は――いや、ここで全部言うのも面白くないわね」
「え?」
「二つ目の機能は自分で研究して見つけ出しなさい。あと一個目の能力もアンタの体に負担をかけすぎないよう制限がかかってるから、強くなりたいならそっちもしっかり鍛えることね」
「なんだよそれ……まあ別にいいけどさ」
「まあ、きっといざというときに役に立つわ。アンタが本当にヤバい状況になった時に覚醒するかもね、とだけ言っておくわ」
「そう言われたら余計に気になるじゃねえか!」
「せいぜい期待しておきなさい。それじゃ、アンタの意識をあの体に返すわよ。生きてる人間から長時間意識を引っこ抜くのはあんまり良くないから」
「そうだな。まあもうちょっとなら大丈夫そうだが」
「良いからさっさと帰りなさい! 次に会うときは80年後くらいだといいわね! それじゃ!」
「あちょ――」

 有無を言わさず女神は俺に手をかざすと、あっという間に自分の領域から俺を追い出した。
 あんな言い方だが、せいぜい長生きしなさいと言う意味だろうから、やっぱりいい奴なのかもしれない。
 ただ、そう遠くない未来にまた再開することになるだろうなと、何故か俺の直感が強く訴えかけてきているのだが、一旦はそれを無視するとしよう……
 
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